第4話:実体化は気合と根性。

「幽霊?・・・まじで?・・・待て待て待て・・・俺の脳みそが把握するまで待て」

「だってさ俺、霊感ないのに瑠奈るなが見えるぞ、はっきり」


「それはきっと叶多かたなが瑠奈のこと愛してくれてるからだよ」

「私も叶多に会いたかったし・・・未練いっぱいで、のんびり死んでなんかいられ

ないでしょ」

「だから帰ってきちゃったの?・・・」


「だからどうやって?・・・そんなに簡単に帰れるもんなのか?」


「あのね、あの世の三途の川の手前に川を管理してる施設があって、そこで

亡くなった人の名前と帳簿合わせしてる「馬草把 礼奈衣うまくさわ れないさん」って名前のサラリーマンみたいな管理人のおニイさんがいてね」


「そのおニイさん、以外とイケメンさんで優しくて親切な人で・・・」


「そんなこと、どうでもいいから・・・」


「あ、ごめん・・・でね、そのおニイさんに私の悲しい部分だけピックアップして

プライバシーな話をしたの」

「したら同情買ってくれて、ほんとはルール違反なんだけど、しばらくの時間なら

現世に返してあげてもいいよって、そう言ってくれたから黄泉の国から現世に走ってる電車に乗ってここまで帰って来たの」


「え〜・・・まじで?」


「まじでまじで・・・幽霊だから・・・私」

「三途の河を渡るのやめて帰ってきちゃったの、渡っちゃったら二度と帰って

来れないらしいからね・・・」


馬草把うまくさわさんは、しばらくの間って言ったけど、私、黄泉の国には

もう帰らないつもりないから」

「でもその時点で向こうの規則破っちゃってるから見つかちゃったら地獄行きかも」

「それに私、生きてる時、アリンコいっぱい踏み潰してると思うし、」

「台所のゴッキーもかなりぶっ潰しちゃってるし・・・」

「・・・だから、それもプラスされて、もしかしたら地獄行き決定かもね」


「そんなノ〜天気な・・・慌てない子だな・・・瑠奈は」


「まあ、向こうには帰るつもりないから安心してね」

「また仲良くラブラブでいようね、改めてよろしくね、叶多」


つうわけで俺の彼女、まさかの幽霊になって帰ってきちゃったんだ。


「なんでもいいや、このさい幽霊でも・・・・ずっと俺のそばにいてくれ〜」


そう言って俺は瑠奈をハグしようとした・・・そしたら俺は彼女をスルッと

すり抜けた。


「え?ハグできないの?」


「幽霊だからね、私の体はもう火葬場で焼かれてどこにもないから」


「なに?ってことはハグもチューもできないってことか?」


「今見えてるのは、私の幻影」

「でもね、馬草把うまくさわさんが教えてくれたんだけど、幽霊でも気合と

根性で実体化できるようになるんだって・・・」

「頑張れば完全実体化も夢じゃないって・・・」

「今のところ私、気合と根性で5分くらいは実体化できるから、私が気合入れたら

ハグやチューくらいはできると思うんだ」


「完全実体化って?・・・生き返るってことか?」


「そこはちょっと違うかも・・・」


「どっちにしたって瑠奈が実体化できないと今後エッチもできねえのか・・・」


「大丈夫だよ、私、気合と根性で完全実体化してみせるから・・・」

「絶対、私とエッチできるようになってみせるから」


「なんか漠然とした話だな」

「実体化する方法に呪文とかないのか?・・・唱えたら実体化するとか?」


「アダブラ、カダブ〜とか・・・デクマクマヤコンとか・・・エロイムエッサカ

ホイサッサ〜とかさ・・・」


「そんなことで実体化できるならとっくにやってるよ」

「実体化は気合と根性って相場が決まってるの」


「相場って・・・株じゃあるまいし・・」


「だってすぐに実体化できちゃって、すぐにエッチしちゃったら話の展開が

早すぎるでしょ・・・そこはもったいぶらなきゃ」

「だいたい恋人同士って最後にめでたくエッチしてハッピーエンドで終わるじゃん」

「やっぱりエッチは最後に持っていったほうがよくない?」


「屁理屈・・・まどろっこしい」


「まあ、実体化できないうちは焦ってもしょうがないかも〜」

「男の子は我慢、我慢・・・叶太、それでもどうしても我慢できなくなったら

言ってね・・・5分くらいなら、実体化頑張れるから」


「たった5分か・・・」

「だけどいい、たった5分でも・・・瑠奈5分でいいから実体化してくれ」


「エッチはできないよ?」


「エッチできなくていい・・・5分だけ瑠奈を思い切り抱きしめたい」

「分かった・・・5分だけね・・・おいで、叶太」


だから俺は瑠奈を思い切り抱きしめた、この時を忘れないくらい・・・。


「瑠奈・・・あのさ、完全に実体化できるのって、いつ?」


「ん〜っとね・・・分かんない」


とぅ〜び〜こんて乳。

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