とあるおっさんのやり直しコンビニ再建記

真城しろ

プロローグ コンビニは淘汰されゆく

第1話コンビニは淘汰されゆく

――2023年5月3日


「今日もつっかれたー!」


深夜、最終間近の列車内に、おっさんが1人。

俺は佐藤亮五さとう りょうご32歳。


大学卒業後に入社した会社は、ブラックとまでは行かないが、余裕でこんな深夜まで仕事させてくるような会社。


朝も早くて、深夜はこうして帰るだけで精一杯。家に帰ったら風呂入って歯磨いてベッドにバタッと倒れ込む日常を送っている。

それでも、こうして毎日頑張っているのには、ささやかな楽しみがあるからだ。


「ありがとうございましたー」


家の最寄り駅に着くと、俺は駅前のコンビニで買い物をする。


「今日もあった!売切れじゃなくて良かった、、、」


ささやかな楽しみ。それはこのコンビニにある。


「ただいまー、っても、一人だが」


俺は家に帰ると、おもむろにコンビニの袋から酒と焼き鳥を取り出す。


「やっぱ、アリガKストアーの焼き鳥が一番うまいなぁ、、、」


俺のささやかな楽しみ。それは、俺の家の最寄りの駅の駅前にあるコンビニ、アリガKストアーの焼き鳥だ。この焼き鳥を食う為に頑張ってるまである。


焼き鳥を一口。そして酒で流し込む。


「くぅぅ!!」


身体に気力が蘇ってくるようだ。


「明日も頑張るか!」


そう思いつつ、今日も眠りについた。


★★★★


翌朝。出勤前に飲み物と昼ご飯を調達する為に、駅前のアリガKストアーに立ち寄った。


「なんか張り紙がある、、、なんだ?」


張り紙を読んでゆく。

するとそこには、衝撃の内容が書かれていた!!!


―――お客様各位、いつも、アリガKストアー高坂駅前店をご利用いただきまして、ありがとうございます。この度、アリガKストアー本部が、株式会社ファミッとショップに買収される運びとなりました。つきましては、閉店を予定している店舗を除く、現在運営中のアリガKストアー全店において、店舗屋号を順次、ファミッとショップに転換し、アリガKストアーでの営業を終了致します。今までのご愛顧誠にありがとうございました。株式会社アリガKストアー本部―――


HA?

チョットナニイッテルカワカンナイ

マッタク、ウンエイモシャレタジョークカマスジャネエカ、、、


「はああああああああああああ?!?!?!?!」


なんだこれ?無くなるって冗談だよな?これじゃあまるで、アリガKの焼き鳥がもう食えなくなるみたいじゃないか!!


「すんません、外の張り紙って、、、」


俺は店員に尋ねる。


「え?ああ、はい。そうなんですよ。あ、そういえばお客さん、いつもうちの焼き鳥かって帰ってくださってましたよね。なんだか申し訳ありません、、、」


「じゃあ、アリガKの焼き鳥は、、、」


「申し訳ありません。転換が完了した店舗から順次販売を終了、ファミッとショップのものに変わります」


店員は申し訳なさそうに答える。


「そんな、、、」


俺は猛烈なショックを受ける。

これから何のために生きていけば、、、


「そんなバカなああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!」


俺は、目の前が真っ暗になった。


★★★★


「は!ここは、、、」

辺りを見渡す。ここは自分の部屋のようだ。


「良かった、、、さっきのは夢か?」

そう思い、時計を確認する。


すると、、、


「え?」


そこには、2013年5月3日と表示されている。


「どういうことだ、、、?」

ショックのあまり、おかしくなってしまったのか。原因がわからない。夢か?と思い、頬を強めにはたく。


「いてっ!!」


夢ではなさそう、、、


すると、脳内に、何者かが語り掛けてくるような感覚に襲われる。


「佐藤亮五。お主はアリガKを心の底から愛していた。アリガKの焼き鳥が食べれなくなることを知っただけでショック死してしまうほどに。」


「いやチョット待てぇ!俺は死んでない!!大体、そんなことで死ぬわけ、、、」


「いや、お主は間違いなく死んだ。死因も間違っていない。しかし、我も、この様な死に様は見るに堪えんかった。だからお主に、今一度チャンスをやろう。ここは、お主が大学生で、ちょうど就活をして居った頃の世界だ。自分のコンビニは自分で守れ!!お主が自分の手で、アリガKを再建するのだ!!」


「おい、ちょっと!!!」


声を掛けようとしたが、語り掛けてくる感覚は、無くなってしまった。


「過去の世界ってことか、、、あ!てことは!!!」


俺は駅前に向かって駆け出す。


駅前にたどり着くとそこには、アリガKがある。


「やっぱり、張り紙もない!!!」


念のため、スマホでも調べるが、買収の話はない。


「俺は、過去に来たのか、、、?」


突然のことで、いまだ信じられない。でも、もし本当に、再建のチャンスがやってきたというのなら、、、


「俺が絶対、アリガKを守る!!!!」

そう決意し、ひとまず、アリガKストアー本部に入社することに決めた。

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