第19話 あっけない終幕

「...さてと...十二月の実力はいかほどかな」


 居合斬りの構えをする男。


 ここまでかなり距離はあるが、詰められると思っているのか?


 その瞬間のことだった。


「【秘技:斬首抜刀】」と、100mくらいの距離を一気に詰めて剣を振るう。


 キーンという金属同士がぶつかったような甲高い音が鳴り響く。


 その剣をあっさりと受け止めたのは【ソロモン72柱/序列38位:ハルパス】であった。


【挿絵】

https://kakuyomu.jp/users/tanakamatao01/news/16818093079905304909


「チョロいね」と、相変わらず人を煽るのが好きな悪魔。


「...派手に暴れるのはいいが、貴族以外は殺すな。十二月も出来るなら仲間に加えたいからな」


「うぃーす!!」


 ...うーわ、ぜってぇわかってねぇー...。


 鳩の見た目をした漆黒の剣士。

煽るのが好きで人間同士を争わせるのも得意だが、自分がその戦いに参戦するのも好きで、人間を殺しては食うとかいう、まさに悪魔に相応しいやつである。


「...あの一月様の攻撃を止めただと?」と、誰かが呟く。


「...貴様何者だ?私の剣技を受け止められるものなど、そう多くはいないと思うが」


「あはっ!?あの程度、赤子でも受け止められるっしょwてか、喋ってる暇とかないと思うよ?」


 今ので大体の実力は把握できた。

ほぼ想定通りだ。問題ない。あとは三将官くらいか。


 今回連れてきた悪魔は6体。

俺が変身していたように他の悪魔たちもそれぞれ、ギルドメンバーに扮して変身させていた。


 一応、マッドさんから話を聞いて相性も含めて連れてきたわけだが、こいつらの主人はあくまでセバちゃんであり、俺は間接的な主人となる。


 あまりいうことを聞いてくれないのではと思っていたが、現時点ではちゃんと指示通り動いてくれているようだった。


「アモン(7位)、ベレト(13位)、エリゴル(15位)、シャクス(44位)、フラウロス(64位)そいつらを頼んだ」


 十二月をソロモン72柱に任せ、俺は貴族たちに刃を向ける。


「...さて、お前らは全員生かす気はない。が、遺言くらいなら聞いてやってもいいぞ?」


「さ、三将官は一体何をしている!さっさとこいつを殺せぇ!」と、喚き散らす。


 確かに...なぜ十二月の姿しかないんだ?


 しかもこの状況出てこないなんて...。

まぁ、考えられるパターンはいくつかあるがここで何を言っても仕方ないか。


「...どうやら、残念ながらお前らの秘策はお前らを助ける気はないらしい。さて、懺悔共に地獄に送ってやろう」


「...懺悔?我々が何をしたというんだ...?」


 どうやら本当に何が悪いか分かっていないようだ。

そうか。それならもう本当に救いようがないな。

壊れてしまったロボットなら修理が可能だが、最初から壊れてるならもうそれは治しようがない。


「...それじゃあ...死ね」


 そうして、約30分ほどで全てが片付いた。


 貴族は一人残らず殺し、十二月は6人ほどを確保することができた。

ちなみに残りの6人はハルパスの野郎が食い殺してしまったのだ...。


 さて、この後はどうしたものか。

いや、ある程度は考えてるよ?

しかし、三将官が居ないとかは想定外すぎたし...。


「...俺たちをどうするつもりだ?」と、一月が話しかけてくる。


「その質問より先にこっちの質問いいか?三将官はどこに行った?」


「...知らない。俺たちはここの護衛を任されていただけだからな。ここに居ないということは逃げたということじゃないか?」


 三将官の中に未来予知の能力が使えるやつがいたとしたら説明がつく。

しかし、逃げ出したのであれば現時点ではこちらの戦力には敵わないと察したということだ。


 そうなると当面、こちらに攻撃をしてくることはないだろう。


「んじゃ、さっきの質問に答えるとしよう。この国の管轄は【X】の名の下に支配させてもらう。そして十二月は解体し、新たに【六界】を設立し、残った6人の君たちを任命する。それと悪いが、俺の正体については秘密にしてもらう。もし喋ればその瞬間殺す。こちらには千里眼持ちもいるから。嘘だと思うなら試してくれても構わない。また、貴族制を廃止し、今貴族が保有している財産は国内の人間に平等に分配する。細かいことはアモンを通して指示を行うから。他に質問は?」


「...ないです」と、一月が返答する。


「よろしい。まぁ、聞きたいことがあればアモンに聞いてくれ。それじゃあ、この国が良い国になることを願っているよ」


 そう告げて俺はボヘミア国を後にするのだった。



 ◇某国


「あへぇ〜、敵さんほぼ無傷か。それも全力にも見えなかったし...。逃げたのは正解だったみたいだね」


「...まさかあの【X】が地方貴族だったとはね」


「いやー、助かりましたよ、ヴォルス総督。我々を庇っていただきまして。これからよろしくお願いしますね」

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