第18話 誤報とご褒美

 そうして、数日かけて俺たちは帰還した。


 数日ぶりの母国はやはり心地よかった。

しかし、あの貴族のふかふかのベッドは一生忘れられないであろう。


「...とりあえず、城に報告しに行きますか?今回の件」


「...そうだな。目的は果たせなかったが、渡せる情報はいくつかある。それにその情報次第で目的が果たせなかった理由の説明にもなるからな。とりあえず急ぐぞ」


 そうして、城に出向くとすぐにある場所に案内をされる。


 扉を開けるとそこは、豪華なシャンデリアと美味しそうな食べ物がずらりと並べられている。


 それはまるでパーティー会場のような場所だった。


「...なんだなんだこれ」


「おっ、来たな。こっちだこっち」と、貴族の1人が俺たちに気づくと貴族達が座る椅子になぜか案内をされる。


「こ、これは一体?」


「...いや、分からん」と、何もわからぬままとりあえず椅子に座る。


 よほど、良いことでもあったのか?


 言われるがまま席に座る。


 心地の良いミュージックが流れる会場で、当然何かが割れる音がする。


 全員がそちらを向くと、そこには1人の奴隷と思われる男の子が立っていた。


 年はまだ8つほどだろう。


 なぜ奴隷と分かったかといえば、奴隷の証である首輪をしているからだ。


 すると、1人の貴族がゆっくりと立ち上がり、そのまま少年に近づく。


「す、すみません、ご主人様!もうこんなことはしません!お許しを!」と、そんな小さい子供がプルプルと震えながら土下座をしながら謝っていた。


 すると、その貴族は思いっきりその顔面を蹴り上げる。


 気を失ってしまったのか、脳震盪か...少年はそのまま動かなくなってしまうと、席に座っていた貴族がまるで笑いを堪えられなかった時のように...「プッ!」と吹き出す。


 それに伴い周りの貴族たちも笑い始める。


 ...あの城で見た奴隷の扱いとはまるで別物だった。

あの城では全員が自由であり、楽しそうであり、そして主人たちと同じ飯を食べる。


 奴隷たちとも仲良く話す貴族なんて...御伽話の中だけだと思っていた。


 嫌なものを見たと思った。


 それは今の光景ではない。

奴隷がいじめに遭うなどもはや日常茶飯事驚くことと嫌悪感を抱く事もあまりなかったのに。


 あの城で見せられたもののせいで、今は見てられないほどに嫌な感じがしてしまうのだった。


「...それでこれはなんのパーティで...なぜ我々も参加しているのですか?」


「何を言っているんだ。これは君たちのためのパーティーであろう!無事、あの城を占拠し奴隷を持ち帰った上に金銀財宝も相当な寮をまた帰って来たのであろう?」


「...はい?」


 一体、この人たちは何を言っている?


 もしかして...何か誤情報を流されていた?


「...まずい」


「え?」


「これは罠だ」


「罠ってどういう...」と、思っているとマッドチームの1人が先ほどの奴隷の近くに行っていた。


 まさか...嘘だろ?そういうことなのか?


「...一時的な脳震盪...か」というと、優しく男の子の頬に触れると、おそらく詠唱を破棄して魔法を使う。


「...おい、貴様。そこでこそこそと何をしている。それは私の物だぞ」


 まずい!まずすぎる!


「...我が国でも奴隷の扱いは問題になっている。いや、いつどの時代でも同じ人なのにそうやって差別を行うものだ。しかし、お前らはいよいよ人としても扱っていないようだな」


「...おまえらぁ?貴様!誰に口を聞いている!」と、貴族が叫んだ瞬間のことだった。


 その貴族の首が見事に宙を舞うのであった。


「...いや、俺にとっては好都合だ。人間を切るのは趣味じゃないが、俺も今からお前らのことを【物】としてみることにしよう」


 そうして、マントを脱ぐとそこに居たのはラン・ルーズベルト...つまりはあの【X】だったのだ。


「...まさか...仲間に化けていたとは...」


「いやいや、普通一番に警戒するだろ。無警戒すぎるっての」


「く、くせものー!!」と、叫んだ貴族の首がまた飛ぶ。


「...残り28人か」


 すると、その声を聞いて奴らが入ってくる。


 そう、城の中で待機していた十二月である。


「...貴様、何者だ」と、十二月の一月を担う国内最強の剣士が尋ねる。


「...ラン・ルーズベルト。ただの地方貴族だよ」


【挿絵】

https://kakuyomu.jp/users/tanakamatao01/news/16818093079843003349

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