選挙ですわ
「この世の中を、この世の中をっ……うっ、ううっ、うわあああああん!」
「何事ですか、サタナエラ?」
「アザゼラお姉さま、選挙ですわ」
「変わり身はやっ!」
「シェミーが思うに、情緒不安定ですわ」
「なんの選挙ですか?」
「知事選です」
「微妙に小さいですね、福岡の方には失礼ですが」
「ちなみにフィクションであることを断っておきますわ」
「どなたが立候補なさるのですか?」
「シェミーは福山氏がいいですわ」
「わたしは森田氏ですかねえ」
「わたしです」
「は?」
「このたび、わたくしことサタナエラ・ボーリンは、福岡知事選に立候補することを表明いたします」
「……」
「57話にしてフルネーム登場ですね」
「正気ですか、サタナエラ?」
「鍾馗さまより正気ですわ」
「ダメですわね、これは……」
「公約は考えてあるのですか?」
「一日4食を義務化します」
「微妙! せめて5食に!」
「おやつが4食目ですわ」
「バナナでもかじってなさい」
「うほ」
「つなぎ」
「やらないか?」
「先が思いやられます」
「しかしなぜまた立候補など?」
「なり上がりたいのです」
「ダメだこりゃ」
「ごわ、ごわ、ごわ!」
「なろう系ですね」
「ラノベのネタになりますわ」
「朽木はすでにスケベ心を発動させているようです」
「まさかのサタナエラお姉さまが主役ですか」
「利根川スピンオフのような内容になるのがオチです」
「リアルなことをおっしゃらないでください」
「なり上がるのが目的なら、住民票を東京に移しては?」
「わたしは福岡が好きなのです」
「ミラー!」
「この豊かな土地を、それを守る県民の心に、よりそいたいのです」
「サタナエラ……」
「お姉さま……」
「アザゼラお姉さまとシェミーにもぜひ協力していただきたいですわ」
「その心意気、忘れてはなりませんよ?」
「さっそく事務所を立ち上げましょう」
「なんだか楽しくなってきました」
「本番が楽しみですね」
こうしてサタナエラは順調に選挙活動をしたが、結果は残念ながら落選となった。
「いやいや、よくがんばりましたよ、サタナエラ~」
「お姉さま、結果がすべてではありませんわよ?」
「うお~ん、お二人とも、ありがとう~」
「ところで得票数はどうだったのですか?」
「アザゼラお姉さまとシェミーは少なくとも投票しましたが」
「……2票」
「は……?」
「ははは、公示するのを忘れておりました……」
「……」
一週間後、日本海の潮流に乗って、秋田は男鹿半島の波打ち際に、ドレスを着たどざえもんが流れ着いたという。
(息を吹き返した彼女は、住民票を移すことをすすめられたが、とぼとぼと故郷へ帰っていった、徒歩で)
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます