グラミ

七星北斗(化物)

1.世界ゐぬ

 世界の正体へ近づきすぎた、奴らは私を殺しにくるだろう。


 地球、いや宇宙?この世界のあらゆるものは、線でできている。


 私の作った線を消す能力は、奴らに奪われてしまった。このままでは、世界は終焉を迎える。君がこの手紙を読む頃には、私はこの世に存在していないだろう。


 願わくば、正しきものの手に、この希望を届けてはくれまいか?


 我が友、メラール・フィバートへ。


「おはよう」


「ああ、おはよう。もう朝か」


「また夜更かししたでしょ?」


「したけど、何でいるんだ?」


「忘れたの?今日は、榊石町に一緒に行く約束したよね」


「そういえば、そんな約束したような」


「待ち合わせ場所で待ってたよ、でもさ二時間経ってもこないから」


 顔は笑っているが、眉間にシワが寄り、ぷるぷる震えている。


 大変ご立腹のようだ。


「で、迎えに来たら、寝むってらっしゃたのよねー」


「ごめんなさい」


「今日は、暑いから。こんな日には、アイスでも食べたいな」


 アイスで許してくれるとは、安い女だ。


「ちょっとお腹空いちゃったな。こんな日には、ガッツリお寿司でも食べたいな」


「お寿司でありますか…?」


「ねぇ、食べたいよね」


「はい、食べていただきたいです」


「決まりね」


 俺の今月のお小遣いがパーになった。泣きたい気分で足取りは重い、なんてお高い女だ。


 俺たちの住む香瓦町は、田舎で何もなく、移動手段も限られている。


 外に出ると、強い日差しで玉の汗が出る。


「あちい」


 ふとバス停を見ると、男の視線を集める美しい女性が座っていた。近づいてわかったが、刺激臭のような酸っぱい匂いがする。身なりも、よく見たら薄汚れていた。


 視線を合わせないように、横をすり抜ける。その時、一瞬目が合った。


「古河森吉」


「えっ!何で俺の名前?」


「やっと見つけた!!」


「森吉の知り合い?」


「人違いじゃありませんか?」


「いいえ、あなたで間違いありません。この手紙を」


 バックから取り出されたのは、ぼろぼろな封筒。


「森吉止めなよ、この人変だよ」


 恐る恐る封筒に手を伸ばすと、急に女性は倒れ、慌てて受け止める。


「春水ごめん」


「もうしょうがないなー」


 このまま見過ごすわけにはいかず、背中に背負い自宅まで運んだ。


 春水は、女性の着替え用意してくれるようで、一旦別行動となった。


 手紙の内容が気になり、封筒を開ける。封筒の中には、一枚の写真と手紙が綴られている。


 写真には、この女性と祖父が写っていた。何でじいちゃんが?


 今思えばこの手紙から、これから起こる壮絶な物語が始まったのだ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

グラミ 七星北斗(化物) @sitiseihokuto

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ