第19話 川掃除をしよう
空が
疲れは完璧に取れている。手斧で素振りをした時に出来た豆も綺麗に治っていた。
気力溢れる目覚めである。
隣を見るとエーリカが私の隣で気持ち良さそうに眠っている。
起きるまで気づかない私もどうかと思う。
毎回潜り込むなら一人部屋に移動した方が良いかもしれないな。
「まったく……」
私は微笑みを浮かべると、スヤスヤと寝ているエーリカの頭を優しく撫でた。
困った妹を持った姉の気分である。外見はおっさんだけど……。
「邪魔……」
エーリカが眠りながら私の手を弾く。
……本当に困った妹だ。……ぐすん。
その後、軽く運動をしながら時間を潰し、朝の鐘の後、エーリカと朝食を頂き、冒険者ギルドへ向かった。
冒険者の列が落ち着いたのを見計らいレナの元へ行く。
「アケミさん、依頼の授受の前にこれを渡しておきます」
挨拶を済ませた私にレナが銀貨三枚を渡した。
「昨日、アケミさんたちが捕まえた恐喝犯の懸賞金です」
「彼ら、懸賞金が掛けられるほどの悪人だったのですか?」
「極悪人ではありませんが、ここ最近、被害に遭われた方が多く、被害者の方がお金を出し合い、指名手配していたのです。そういう事ですから、気兼ねなくお受け取りください」
エーリカが言った通り、回り回って良い事が起きた。借金もあるし、有り難く頂いておこう。
「それでは、本日の依頼を説明します。とは言っても、西地区に流れる川のゴミ拾いですから説明も何も無いですね。現地の案内は別の職員がしますので、そこで聞いてください」
本日は川のゴミ拾い。街の奉仕活動である。冒険者見習いは辛いね。
レナに依頼の授受をしてもらってから、昨日会った無表情の若い職員に現場まで案内してもらう。
昨日使った荷車をエーリカに牽いてもらい、商業地区を通り抜け、西地区の川へと辿り着いた。
その間、特に会話らしい会話はない。この職員、無表情な上、無駄口を一切しない。
コミュニケーション不足の私にとっては有り難い事である。
ちなみに彼の名前はレンツと言うそうだ。
川辺に出た私たちは、川に沿って、上流へ向かう。
しばらくすると商業地区の地下に入る入り口が見えた。先の見えない暗い地下道から川が流れており、その側面を人が歩けるように整備されている。
ただ、部外者が入れないように入り口は縦格子で封鎖されていた。
「荷車はここに置いて下さい」
レンツは荷車から道具を持ち、ポケットから鍵を取り出して、縦格子に設置してある扉を開けた。
川のせせらぎを聞きながら、レンツの後に付いて地下道へ入る。
ひんやりとした風が肌を撫ぜる。悪臭はしない。
レンツは持ってきた道具から松明を取り出し、火打ち石で火を点けた。
先端に燃料が染み付けているようで、ボッ、ボッと火の粉を落としながら薄暗かった地下を照らし出す。
奥へ進むと学校のプールほどの水がダムのように溜め込まれていた。
「この水溜まりを掃除するんですか? とても深くて広いんですけど……」
こんな場所、掃除できるか! と思いながら恐る恐る聞いてみた。
「いえ、ここは水を一時的に溜めて、浄化している場所です」
レンツが水溜まりの中央を指差す。
水の底に青く輝いている大きな石が光っていた。
「あれは水の魔石です。排水で流れた水を一度ここに集め、魔石の力で綺麗にしてから流しています」
それを聞いて安心した。
こんなだだっ広い水場を掃除するなんて無理な話だ。
「掃除してもらう場所はこちらです」
さらに奥へ進むと、水場に繋がる細い水路が間隔を空けて三つほどあった。
その水路には縦格子が嵌めてあり、その裏にゴミが溜まっているそうだ。
「支流になっている三つの水路のゴミを取り除くのが依頼内容です。ゴミは荷車に積んで下さい。あと、ここから先は進まないようにお願いします」
レンツは松明を壁に付き立て説明する。
「もしかして、魔物が出たりするの?」
「ええ、化けネズミや魔魚がいます。それに入り組んで迷路になっていますので、青銅等級冒険者以上でないと対処できません」
ひぃー、奉仕活動レベルと侮っていたが、結構ハードな内容みたいだ。
「この西地区の水路は元が綺麗ですから、これ以上進まなければ問題ないです」
今いる西地区の水路に比べ、東地区の水路や中央を流れる水路は酷いらしい。
特に中央の水路は下水も合わさっているので、化けネズミの巣窟との事。
水路の掃除は、通常、下町の住人の仕事であるが、中央の水路の時だけは冒険者の護衛がつくそうだ。それだけ危険な場所との事である。
「夕方前に様子を見に来ますので、その間に掃除を終わらせて下さい。それでは自分はギルドへ戻ります」
私に水路の鍵を渡してから、レンツは光魔法で周りを照らしながら帰っていった。
水路に取り付けてある縦格子の裏に回ってゴミの確認をする。
「目立った大きなゴミはなさそうだね。水路は三つあるけど、これなら昼前には終わりそうだ」
私は軽く目途を立てて意見を述べてみる。
「底の方も
「それなら先に洗濯をしようか」
どうせ川辺まで来るので、ついでに洗濯をしようと汚れた服を持ってきていた。
乾かす時間が欲しいので、先に済ませておこう。
私は松明を持って、エーリカと一緒に外へと戻った。
川辺に出ると、エーリカの収納魔術に入れていた衣服を取り出してもらい、石鹸と共に洗い始める。
「エーリカの服、そのまま洗っても大丈夫なの? 高そうな服だから専門に依頼した方が良くない?」
「構いません。専門に任せても、やる事は同じです。それに少し破れたり、ほつれたら修復すれば済みます」
やはりエーリカは衣服や化粧などの美意識は低いようである。
ちなみにエーリカは、まったく同じ服を何着か持っているので、いつも同じ服装になっていた。
私が着ている服は、目の粗い麻の服だ。洗濯も簡単に終わり、大木の幹に掛けて乾かす。
それに引き換え、エーリカはヒダヒダの多いゴシックドレスで時間が掛かっている。
エーリカは、ワイン作りのブドウを潰すように、豪華な服を足でフミフミしながら洗っていく。そして、石鹸を洗い落とすと、雑巾搾りの要領で水気を絞っていった。
服の扱いが雑。
最後にエーリカは、布団の埃を払うようにゴシックドレスをバサバサと振り、私の洗濯物の横に掛けた。
「うーむ、変な光景……」
安かった男性服(下着も含む)の横にゴシックドレスが掛けられている。
「ただの衣服です」
「盗まれないよね」
私が着ていた男物の服とパンツを盗む奴はいないだろうが、すぐ横に綺麗なドレスと女性の肌着類が干してある。このまま木に干していたら、盗まれる可能性がある。
「盗まれたら盗まれたで構いません。盗人を見つけて、冒険者の貢献度を上げましょう」
それでいいのか? と思うが、エーリカが良いと言うなら干しっぱなしにしておく。
「それでは、ゴミ掃除を始めましょう」
地下道の水路に戻ってきた私たちは、縦格子に挟まっているゴミを回収していく。
長い棒の先に水切り籠のくっ付いた道具でゴミを拾う。
ほとんどが木屑である。たまに食べ物の残飯も混じっている。
「この道具では、底の方は取れません」
エーリカが空の木箱にゴミを入れながら報告する。
「やりたくはないが、水の中に入るしかなさそうだね」
私は服を脱いで、下着姿になる。
さすがに背の低いエーリカを水の中に入れる訳にはいかない。
「この水、綺麗なのかな?」
「水から魔力を感じます。水路の奥にも浄化用の魔石を設置しているのでしょう。ご主人さま、水質には問題ありません」
私は腰を落とし、足だけ水に入れる。
水温は低いが、我慢できるほどだ。
私はお腹に力を入れて、水の中に入った。
水深は一メートルほど。
体中の肌が総毛立つ。水温が低いだけでなく、足元が気持ち悪いからだ。
「底がヌメヌメする!」
「ヘドロが溜まっているのでしょう。ザルを渡します」
エーリカから平たい木製のザルを受け取り、腕を伸ばして底を浚う。
寒天のようになっているヘドロの塊が取れた。
「底に一杯に溜まっている。これは大変な仕事になりそうだ」
「時間はあります。ゆっくりやりましょう」
私はザルでヘドロを掬い出す。エーリカは長い棒の水切り籠でサポートする。
たまにネズミの死体が混じっていて、叫び声をあげてしまった。
………………
…………
……
「綺麗になりました」
「ああ、このぐらいで切り上げよう」
一時間ほど掃除をして、この水路は終わりにする。
残りの水路は二本。
「わたしは溜まったゴミを荷車まで置いてきます」
そう言ったエーリカは、ゴミ(ヘドロ)で山盛りになった木箱を持って外へと向かった。
ちなみにエーリカは夜目が効くので松明を必要としない。
私は水から上がり、松明の火で暖を取る。
エーリカはすぐに戻って来たので、次の水路へ行き、同じように作業をする。
「今更だけど、魔物の魚に襲われないかな?」
「魔石で浄化した水には魔物は近づきません。もし現れたとしてもこの辺の魔魚では、肉を食いちぎるほどの力はありません。噛まれても痛いだけです。安心してください」
全然、安心できない。
冷たい水で縮こまっている異物がキュンとなってしまった。
私たちは黙々と作業をこなす。
………………
…………
……
「ここも綺麗になりました」
「きゅ、休憩しよう。さ、寒い……」
二時間近く水に浸かっていたので、骨の髄まで冷えて震えが起きる。
私とエーリカはゴミを持って外へと出た。
「わたしは昼ごはんを買ってきます」
エーリカは、私の荷物を取り出してから商業地区へ歩いて行った。
川辺の石を集めて簡単な竈を作り、松明の火でお湯を沸かし、ミント茶で体を温める。
はぁー、落ち着く。
お茶を飲みつつ、日向ぼっこしているとエーリカが戻ってきた。
「パンとソーセージと串焼きを買ってきました」
串焼きは豚串二本、カエル串二本である。エーリカはカエル肉が気に入ったようだ。
パンとソーセージを竈で炙ってから、自家製トマトソースを掛けて、ホットドックみたいに食べる。
カエル肉も食べてみた。カエル肉は鶏肉に近い味がする。結構、美味しかった。
この世界の鶏肉は美味しくないので、鶏肉料理をする際は、カエル肉で代用できるかもしれない。
一時間ほど、昼休憩をした私たちは、地下道へ戻り、残りの水路まできた。
「ご主人さま、様子がおかしいです」
水に入るため服を脱ごうと手を掛けていたら、エーリカが通路の奥を見つめながら呟いた。
「何? 魔物?」
「生き物の足音が聞こえます。こちらに向かってきます」
私は水路の奥を見つめ、耳を澄ますが、何も聞こえない。
デビルイヤーを持っているエーリカだから聞こえるのだろう。
「ご主人さまはわたしの後ろへ」
エーリカが私の前に出て、人差し指を前方へ向ける。
私もすぐに対応できるように腰を落とす。
無表情のギルド職員のレンツの話では、この水路は化けネズミと魔魚がいると言っていた。
足音がするらしいので、化けネズミの可能性が高い。
はぁー、ネズミか……。
嫌だな、怖いな、見たくないな。
「来ます」
暗闇の中からトトトッと駆ける音がする。
闇の奥から徐々に丸みを帯びた生き物の姿が浮かび上がる。
「デカい!?」
暗闇から現れたのはスイカサイズのネズミ。ヌートリアより一回り大きい。異常に長い前歯とミミズのような尻尾。
そんな化けネズミは、泥で汚れた黒い毛をなびかせながら、私たちに向かって走ってきた。
「はっ!」
エーリカの指先から放電を帯びた球体が飛ぶ。
直進してきた化けネズミに直撃する。
ぶつかった瞬間、バチッと音がして、暗闇の水路を光で染めた。
「ナイス・コントロール! 戦闘民族のショルダー・プラズマキャノンみたいだね」
「雷属性を含ませた魔力弾です。……また来ます」
暗闇から現れたのは三匹の化けネズミ。
縦に並んで駆けてくる。
エーリカが同じように指を突き付けて魔力弾を放つ。
先頭の化けネズミは魔力弾が当たる瞬間、横へ飛び、避ける。
外れた魔力弾は二番目を走っていた化けネズミの目の前で弾け、二番目と三番目の化けネズミが小範囲に広がった魔力弾の放電を浴びて倒れた。
横へ避けた化けネズミはそのまま壁を走り、エーリカの横を通り過ぎる。
「ご主人さま!」
エーリカの叫びと同時に化けネズミが私に飛びかかった。
私の顔に目掛けて、異常に長い前歯が迫る。
一瞬、腕で顔を防ごうとしたが、ネズミの前歯で怪我をしたら病原菌が入りそうだと思い、ついつい両手で化けネズミを受け止めてしまった。
「うわっ!?」
予想以上に重く、掴んだまま化けネズミと共に後ろへ倒れる。
尻もちをつく体勢で倒れた為、お尻が痛い。
ジンジンするお尻の痛みを我慢しながら私は、暴れる化けネズミの動きを力尽くで押さえる。
湿り気を帯びた硬い毛。弾力のある体。毛の生えたスイカのようだ。
両足をバタつかせ暴れる化けネズミは、私の顔に噛み付こうと長い前歯をガシガシと歯噛みする。
長いミミズのような尻尾が腕に絡みつき、鳥肌が立つ。
「ご主人さま、そのままの状態で維持してください」
エーリカは私が掴んでいる化けネズミに触る。
バチッと化けネズミを通して、電流が手に伝わった。
「痛ッ!?」
私は痛みで化けネズミから手を放す。
化けネズミは身動せず、ドスンと地面に落ちた。
「失礼しました。少し、強く流してしまいました」
全く悪びれた様子を見せないエーリカは、袖口から手斧を取り出した。
「化けネズミは弱めの電撃で気絶させています」
エーリカは私に手斧を渡す。
「もしかして……」
「ご主人さまの経験値にしてください」
……まじか。
………………
…………
……
私は気絶している三匹の化けネズミの頭を手斧で落とした。
虫や魚ならまだしも、生き物の命を自分の手で終わらせるのは、魔物とはいえ良い気分ではない。
丸々とした化けネズミの傷口から真っ赤な血が流れ、通路を染めていくのを見て、ますます気分が重くなる。
「ご主人さま、足音がします」
「また化けネズミ? この辺は出ないんじゃないの?」
ゲンナリしていた私はますますゲンナリする。
「いえ、人間の足音です。数は三人」
私とエーリカは通路の奥を見つめると、暗闇から小さい光が見え始めた。
エーリカの言った通り、三人の男女が現れた。
「あんたたちは冒険者か?」
「ええ、見習い冒険者で、ここの掃除をしていました」
「そうか……俺たちも冒険者だ」
同業者だったので、私たちは簡単に自己紹介をする。
腰にカンテラを下げ、小剣と大きな盾を持った男性はヴェンデル。両手にナイフを持った男性はサシャ。杖の先端を光らせて、白のロープを
年齢は三人とも二十歳前後。青銅等級冒険者だそうだ。
「すまない、水路の奥で魔物の駆除をしていたんだが、何匹か逃がしてしまって、急いで追いかけて来たんだ」
小剣を持った戦士風のヴェンデルが申し訳なさそうに説明する。
「お前達、見習いって言ったな。よく四匹も倒せたな。こいつら、すばしっこいから青銅等級冒険者以上じゃないと依頼は受けられないんだ」
首をはねた化けネズミの死骸を見ながら、シーフ風のサシャが感心している。
「化けネズミは毒持ちですので、怪我をしていたら治療させてください」
紅一点のプリースト風のマリアンネが近づいてきた。
「怪我はしていません。優秀な相棒のおかげで、無傷で倒せました」
私は素直にエーリカを褒めると、半目の眠そうな顔がほんの少し満足そうな顔へ変わった。
その後、「俺たちも新人の時は、ここの水路を掃除したな」とか、「郵便局員が食中毒を起こして、代わりに郵便を配った」とか、「カボチャ祭の手伝いをさせられた」とか、見習い冒険者だった当時の話をしてから彼らは元の場所へと戻っていった。
ちなみに化けネズミの魔石は一匹小銅貨一枚、肉も売れるので必ずギルドで売るようにと忠告してくれた。
ライバル意識の強い同業者じゃなくて良かった。
その後、何の問題もなく残りの水路を掃除し、川掃除を終えた。
まだ、太陽は高い位置にある。レンツが来るにはまだ時間がありそうだ。
エーリカの提案で、川辺の広場でトレーニングをさせられる。
エーリカ軍曹の指示でトレーニングをする事一時間、ようやくレンツが現れた。
「なんで地面に倒れているんです?」
立つ気力も無くなった私の姿を見て、レンツが不思議な顔をする。
「問題ありません。依頼は完了しました。確認をお願いします」
エーリカが私の事を無視して、レンツに仕事の状況を知らせる。
「沢山、ゴミがありましたね。……おや、化けネズミまでいる。退治されたんですか?」
何とか立ち上がった私は、化けネズミの件を話す。
「見習い冒険者が対応する魔物じゃありません。成り行きとはいえ、あまり無茶をしないで下さい」
レンツに注意されてしまった。
彼も冒険者ギルドの職員だと思い知らされる。
「血抜きもされていますし、貧民地区の人たちが喜びます。今回の依頼とは別に化けネズミは買い取らせていただきます」
その後、現場の水路を確認してから、レンツと一緒に廃棄場所へ向かった。
ちなみに洗濯した衣服は、盗まれずに風に揺られていた。
廃棄場所は、馬糞を回収していた貧民地区の近く。
私たちはまず南門を目指して進み、そこから廃棄業者の元へ進み、ゴミを下した。
そのまま貧民地区を通り過ぎ、冒険者ギルドへ到着する。
担当がレナに代わり、依頼完了の報告を済ませた。
依頼達成の金額と化けネズミの買取金額を合わせて受け取る。ちなみに化けネズミの買取金額を差っ引くと、馬糞回収と対して変わらない依頼金額であった。
それと化けネズミを退治した事で、レベルが一上がっていた。
嫌な気分をした甲斐があったものだ。
レナに挨拶を済ませ、『カボチャの馬車亭』の近くまで戻ってきた私は目を見開いた。
「何これ?」
『カボチャの馬車亭』と兼営しているパン屋に人だかりが出来ている。
一列に並ぶ事はせず、店の前に二十人ほどの住民が半円に取り囲んでいた。
「ピザ効果ですね」
ピザの味を思い出したのか、エーリカのお腹からクゥーと可愛く鳴る。
一口サイズにしたピザを無料で試食させてみては? と助言をしたが、こんなにも効果がでるとは思ってもいなかった。
食革命って怖い。
私たちは人垣をかき分け、宿へと戻るとカリーナと鉢合わせした。
「おじさん、店の前の人たち見た? みんなピザを買いに来た人たちだよ」
カリーナが嬉しさと疲れが合わさった複雑な顔をしていた。
「すみません。こんな状況なんで夕飯は少し遅れます。お湯の用意をしていますので、先にお風呂にしてください」
我が儘を言う気はないので、素直にカリーナの言う事に従う。
部屋へ戻り、順番にお風呂に入り、部屋でゆっくりしていると夕飯の合図がきた。
夕飯の席に着くと、机にパンが山盛りに積まれていた。
「お客さんがピザばかり注文して、普通のパンが余っちまった。焼くパンの数を見直さなければいけないね」
カルラもカリーナのように嬉しさと疲れの交じった顔をしている。
私とエーリカは余ったパンの処理に貢献しながら夕食を終える。
そして、明日に備えて、ゆっくりと眠った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます