こちら勇者パーティー最前線〜成り行きで敵の味方・味方の敵やってます〜

@naadesu

魔聖女とBIRTHDAY

プロローグ〜I〜


現世ではないどこか…







自然と人工物の調和が取れた神聖なそんな世界で。







一際大きな人工物…。人の世では城と表現される建物。

その建物の中のこれまた一際大きな部屋にある玉座に、1人の女性が腰掛けていた。

豊かな黄金色の髪を足首まで伸ばし、まさに絶世と呼ぶに相応しい妙齢の女性。

その女性は目の前にある半透明のウインドウ画面を凝視しながらその画面に写しだされている映像に対し、その傾国になりうるであろう美貌のかんばせを興奮により真っ赤に染め上げていた。












やっと…やーーっと、見つけました。

まさか私の世界どころか…近辺の世界線にすらいないとは…これは盲点でした。


私としたことが、不覚です。


ですが見つけることが出来たので良しとします。


流石、私です。


しかしここは…ふーむ………地球ですか。また厄介な所ですね。あそこの神々ってケチなんですよね〜。

やれ規律が、やれ因果律が、とか…そんな小難しいことばかり言ってくるんです!そんな意地悪だから禿げちゃうんですよ!

ピッカピカのキッラキラです!全くもう!



しかし、うーん…もういっそ手っ取り早く拉致ちゃったり…いえ、流石にそれはダメですね。

やろうと思えば出来ますが、バレてしまえば地球の神々に私が袋叩きにされてしまいます。それは嫌です。だって痛いですもん。


となれば、別の何か…そう例えば彼らの全くいらない好感度を上げて気分良く融通してもらえるようにしちゃえば…。所望賄賂と呼ばれるものを渡してしまえばいいのでは?

…うん、そうしましょう!平和的解決ですね!



さて、問題は何を渡すかですが、そういえば地球のバカ…こほん。神々は飲兵衛が多かったように記憶しております。





女性はその考えへ至ったところで徐に何もない空間へと手をのばす。

伸ばした先にはそれに呼応するように闇が生まれ、その中へと躊躇なく手を突っ込む。






ふむ。ふむふむ。

……ん〜。これなんてどうでしょう?






女性が闇から抜き取った手には1つの瓶が握られていた。





『神ころし』






それは、あまりの度数の高さに神々さえも昇天してしまうと言われているお酒。所望酒好きのバカどもが作り出した、ボクが考えた最強のお酒。である。


美味しいから飲んでみて、なんて言って貰ったはいいけれど、ありえないくらいの度数の高さにドン引き…こほん。飲む勇気がなくずっと放置していたお酒。



これならあの飲兵衛達地球の神々も感謝のあまり私に首を垂れること間違いなし!

ふふ…今から楽しみです。









頭が高ーい!








えへへ…。

一度でいいから言ってみたかったんですよね。この台詞。



うーん、でも本当にコレ美味しいのでしょうか?私、騙されてませんよね?

ふ〜む。ふむむ…少しだけ、そう。ほんの少しだけ味見してみましょうか。だって美味しくなかったら賄賂で渡しても意味ありませんから…。







貰ってから飲む勇気がないと、ずっと放置していたにも関わらず、いざ自分の手元から離れると分かってしまったら何故か非常に興味を惹かれてしまうこの不思議。

そしてその欲望のままに、「一口一口、一口だけだから」と、誰に対してかかわからない言い訳を口にしながら、女性はお酒に口をつける。




「ん……んっ………んんっ!?けほけほけほっ!?

な、何ですかこれ!キツすぎます!神が飲んでいいモノじゃっ!ありません、よ!?………………はっ!」


あまりの度数の高さに気がつけば大声を出して取り乱していた…が、すぐに我にかえり、痴態を見られていないか急ぎ周りを見回す。



…見られてはいなかったようですね、よかった………。ふう…。あっつ。



見られていなかった安心感からか脱力し、手で顔を扇ぎながら、先ほどとはまた別の意味で女性は顔を赤く染め上げるのであった。

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