生活の練習_シュミレータとしての小説

石上丁

二千二十四年 六月 十日

二千二十四年 六月 十日


こどもの風邪が一週間以上治らない。小児科に連れて行くのだが、車が一台しかないことを気にかけてもらい、仕事は午前の休みもらっている。


かかりつけの小児科は丘の上にあるのだが、いつもと違う道を選び、丘の裏から回り込む。


平日のスーパー。揚げ物は午前中に揚げたてが並ぶ。昼は買ってきたとんかつをメインに組み立てた。シンクの水はけがわるくて、水滴の透明な塊がシンクの全体に、まばらに留まっているのが抽象画のようだ。


ネコのぬいぐるみは窓から眺めていた。


二人の農夫が田んぼで腰を屈めていた。草刈りなのか。何をするにも田んぼはえらく広かった。蕎麦畑に花が咲いているのは先週すでにわかっていた。見ごろだと思っていたが、刈られている。白い花と緑だった畑は一面の土に戻っていた。


背中にタンクを背負い、長いホースを手にもった、火炎放射器のような装備を思わせる農夫が、自然の緑に埋没しない彩度の高い色の服を着ているから目立ち、田んぼにいるのが遠目でも見えた。

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