魔族への復讐

三奈木イヴ

復讐

人類は、何百年にも渡る長い間、魔族と争っていた。


『魔族が攻めてきたぞ!!』


『アル!! せめて……あなただけでも……!』


僕は、全てを失った。


大好きだった村のみんなを


家族を


そして、魔族から僕をかばった親友までも……。


僕は復讐を誓い、村だった土地を後にした。


そして、月日が経った。


「ついにここまで来たんだな」


あの後、僕は村を出て力を付けた。


仲間と呼ぶ存在も出来た。


だが……僕の心は復讐の色で染まっている。


何もかもを拒絶する、どんな色よりも深く暗い──暗黒のようだ。


それでも復讐の為には仲間が必要だった。


全ての元凶を討てたら、それで終わりだ。


僕の心は、村を襲われたあの日から壊れてしまったのだろう。


だけど、そんなのはもうどうでも良いんだ。


「……」


「この先に…ヤツが……」


この戦いを終わらせて、僕の復讐を終わらせる。


みんなの仇を討つ


「……行こう」


* * *


「無駄だ!」


「ガハッ…!」


「アル!!」


「……大丈夫だ」


「ねぇ……本当にもう…打つ手は無いの……?」


「……いや、一つだけある。」


「ただ、これを使えば君たちまで巻き込んでしまう。」


「だから、逃げてほしい」


「ふざけんな!お前を放って逃げれるか!」


「そうよ!ここまで一緒に来たんだよ!?それを置いて逃げろなんて…」


なんなんだよ……。


「……もう二人には利用価値なんて無いんだよ」


「なんだと…?」


「アル…?」


「僕はね、最初から君たちの事を仲間と思ってなかったんだよ!ただ僕の復讐に必要なコマとしか見てなかったんだよ!!」


どうせ、これが終われば話すつもりだったんだ。話すのが早いか遅いだけだ。


「コマとしか見てなかったけどさ、せめて君達には死んでほしくないんだよ…」


「だからさ…最期くらい、僕にやらせてよ…」


「……そうかよ。だけどな…俺はお前のことを仲間だと思ってたぜ」


「私も……二人とは仲間だったと思ってたわ。」


「あのな、お前にとって俺たちはコマだとしてもな、死ぬ時は一緒だぜ」


「そうね。どうせ、私も行く宛ないんだから……それならあなた達と心中するのも悪くないわね」


「っ……。」


なんで…なんでだよ…どうして僕なんかを仲間だって……。


そこまで言うのなら──やってやるよ。


「わかった。今から呪文を唱えるから、30秒だけ時間を稼いでほしい」


「おう!まかせとけ」


「ええ」


僕は詠唱を開始した。






「これで終わりだ、地獄で会おうか。魔王」




僕は、最期の呪文を唱えた。



魔力を爆発させ、全てを破壊する。



しかしそれは、魔法を唱えた本人までも焼き尽くす諸刃の剣


目の前が白い光でつつまれた。


ああ……。みんな、仇は討てたよ。



僕は、みんなと一緒の天国には行けないけど……。



地獄からみんなのこと見ているから………。



強烈な光と共に、世界は爆発した。

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魔族への復讐 三奈木イヴ @tumugyu

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