第十五章 Fire Retinue 5/5
「あ……ひッ……」
僕たちが顔を向けると、レオナという少女は部屋の角まで後ずさり、血だまりに横たわっているフブキを見た。『F』の少年は指先一本動かすことなく、ただの物体のようにそこに倒れている。
「──あっちは、マナブくんがやる?」
ふと、鴨ちゃんが僕に話しかけた。
「え。あ……えっと」
「大丈夫そ?」
「いや……」
手に持った銃を見下ろしながら、僕はため息を漏らす。「正直言って……まだ抵抗あるよ。人を、殺すなんて」
「たとえ、やらなきゃ自分が死ぬとしても?」
「たとえ、やらなきゃ自分が死ぬとしても、だよ。僕は……人を殺せない」
この回答が間違っているとは、僕は思わなかった。僕に正義の心なんて無いけれど、それでも殺人を誇るなんて僕にはとても出来ない。
「……分かった。私がやるね」
鴨ちゃんは一瞬考え、そう言った。この時彼女が何を思っていたのか、僕には読み取れなかった。
その時突然、背後から、じゃり、という音がした。
「…………ッ!」
僕と鴨ちゃんは一瞬で振り返る。最初に視界に入ったのは、燃え盛るような赤だった。
フブキが、こちらを睨んでいた。
──バリアの中…………!
攻撃するべきか、距離を置くべきか、ほんの一瞬迷った。
フブキは僕に向かって右手を突き出し、部屋中に響き渡るような大声で叫ぶ。
「『Fire』ッッ!!」
*
その時、3階では。
「──爺さん、アナタの『文字』は?」
「文字……? 文字ってのは……何だ」
「あぁそっか、知らないのか。えっと、文字は……その、アナタの右手の甲に刻まれてるヤツですよ」
「右手…………ああ」
老人は言われた通りに右手を見て、そしてそれをセイジにも見せた。
そこには、『G』と刻まれていた。
──ビンゴだ。まさかこんなところで会えるとは。
セイジは心の中で喜び、そして同時に緊張した。
なぜならこの人は──
「岩橋マナブのお爺さん……武田ギンジさん、ですよね」
──その時、3階では、密かに同盟関係が組まれようとしていた。
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