文字戦争

逢良イト

第一話 Muddle 1/5

東京で生まれ、四歳でカナダのカルガリーに留学。十年ほどそこで過ごし、中学二年生になってから帰国。現在は神奈川の高校に帰国子女枠で編入中。


僕という人間を説明するのに、これ以上の情報は必要ない。強いて言うならば「マナブ」とかいう、いかにも真面目そうで、これ以上ないくらい僕に似合わない名前くらいのものか。


大層な趣味は無いし、特技なんてモノも無い。

もちろん、英語が話せるのは特別だ。特に人口の90%が英語を話せない、日本という国においては尚更。それについてクラスメイトが僕に憧れても、おかしな話ではないだろう。

しかし、僕は自分が「英語を話せる」という事を、誇りに思ってもいなければ凄い事だとも思っていなかった。普通の日本人が「日本語が特技です」なんて決して言わないように、僕の英会話能力も「特技」ではないのだ。ただの物珍しさが別に凄いワケではないように、僕のこれも別段誇らしい事ではない。


さて、それはさておき自己紹介に話を戻そう──と思ったのだが、いかんせん話せることがない。

僕は凡庸だ。英語のクラスで活躍していなければ同級生に名前すら覚えて貰えないレベルの、特異的な凡庸さだ。


趣味は──先ほど言ったように無し。

特技も──無し。


得意な教科は──英語だ。だけど、得意な教科の一つや二つ、誰にだってあるだろう。別に特別な事ではない。

苦手な教科──国語。上に同じく、別に特別ではない。


好きな食べ物──ホットドッグ。

苦手な食べ物──辛い食べ物全般。


友人──数名。大抵がゲーム仲間。

好きな人──居ない。

恋人──居るわけない。


家族関係──ノーコメント。

友人関係──良好。今のところは。


犯罪経験──無し。

殺人経験──……無し。



『殺し合い』への参加経験──。




──当然、無し。

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