第47話

《side 桜木鷹之丞》


 家の中に通された俺たちは、厳かな雰囲気に包まれた広間に案内された。

 そこには御老公が座しており、その眼差しは鋭くも温かいものであった。


「桜木鷹之丞、よく参ったな」

「はい。お声をかけていただき、ありがとうございます」


 御老公は一瞬微笑み、その後真剣な表情に戻った。


「早速だが、そなたに与える仕事がある。江戸の町奉行所に勤め、江戸の町の治安と経済の安定に尽力してもらいたい」

「町奉行所…ですか?」

「そうじゃ。江戸の町は今、多くの問題を抱えている。そなたの力を借りたいのだ」


 御老公の言葉に、俺は深く頭を下げた。


「ご期待に応えられるよう、全力を尽くします」

「うむ、それでよい。まずは町の状況をよく把握し、必要な改革を進めるのじゃ」


 御老公は一枚の書状を差し出した。

 それは町奉行所への辞令であり、俺はそれを受け取ると、改めて決意を固めた。


「桜木殿、そなたの手腕に期待しておる。しっかりと務めを果たしてくれ」

「はい、ご期待に添えるたいと思います」


 俺は小説の中で敵対する人物に後ろ盾になってもらうことができて、改めて感慨深い気持ちになった。


 御老公の家を出た俺たちは、すぐに町奉行所へ向かった。

 そこでの役目が始まるのだ。


 挨拶や住む場所などを決めねばらなない。

 その後には、美波藩主に御目通りを願うつもりだ。


 町奉行所に到着すると、奉行所の役人たちが出迎えてくれた。

 その中に一人、見慣れない遊び人風の男がいた。


「おう、新しい町奉行様か。俺は遠山銀次とおやまぎんじと申す。これからよろしく頼むぜ」

「銀次殿、こちらこそよろしく頼む」


 銀次は遊び人風の見た目だが、その目には鋭い光が宿っており、ただの遊び人ではないことが一目でわかった。


「桜木鷹之丞と申す。若輩の身ではあるがよろしく頼む」

「おうおう、任せときな。江戸の町は一筋縄ではいかない場所だがな。俺たちで力を合わせれば、必ずや改善できるだろうぜ」

「うむ。まずは町の状況を把握し、改善策を考えるとしよう」


 銀次と別れ、町の見回りを始める。


 江戸の町は賑やかで活気に満ちていた。


「まずは治安の改善から手をつけるべきだな」


 御老公の屋敷にたどり着く前に、何度も事件を目にした。

 妖怪だけでなく、人同士の罪も少なくないようだ。


「そうですね。我々に何ができるでしょうか?」


 新参者である我々の意見を取り入れてはくれないだろう。

 何よりも、江戸の街は美波藩の5倍か6倍ほど大きい。


 一筋縄では行かぬ場所だ。


 俺たちは町の見回りを続け、江戸の町の実情を把握していく。



 数日は、江戸の街の視察と、新しく用意された屋敷の手配を銀次に手伝ってもらいながら準備を進めていった。


 一週間ほどで、町奉行所での役目が始まった。

 江戸の町は活気に満ちているが、その裏には多くの問題を抱えている。


 銀次に街奉行所内の、説明を受けながら俺が行うべき仕事を教えてもらう。


 町奉行所の主な業務は……。


1、治安維持

•犯罪の取締り: 泥棒、詐欺、殺人などの犯罪を取り締まり、犯人を逮捕し、裁判を行います。

•巡回: 同心や与力が市中を巡回し、治安を維持します。

2.行政管理

•町人の登録・管理: 町人の戸籍や住居、商業活動の管理を行います。

• 市場の管理: 市場での取引の監視、価格の調整、不正行為の取り締まりを行います。

3.訴訟・裁判

•民事訴訟の対応: 地元の紛争や訴訟を取り扱い、公正に裁判を行います。

•刑事裁判: 犯罪者に対する刑事裁判を行い、罪に応じた処罰を決定します。

4.公共事業の監督

•土木事業: 橋や道路の建設・修繕を監督し、町のインフラを整備します。

•防災対策: 火事や洪水などの災害対策を行い、被害を最小限に抑えるための措置を講じます。

5.財務管理

•町の財政管理: 町の収入や支出の管理を行い、財政を健全に保つための施策を実施します。


 これらを一人の人間が取りまとめるのではなく、各部署の代表がおり、それを町奉行にあげていくようになる。


・町奉行所の組織構造


1.町奉行:町奉行所の最高責任者であり、全ての業務を統括する。

2.与力:町奉行の補佐役として、治安維持や訴訟の手続き、巡回などを担当する。

3.同心:与力の下で実務を行い、巡回や犯罪の取締り、訴訟の調査などを担当する。

4.番方ばんがた:警備や見回りを担当し、町の治安を維持する。

5.役所方やくしょがた:事務処理を担当し、町人の登録や財務管理、訴訟の記録などを行う。


 主な組織体制はこのような感じになるが、それぞれが江戸の街で雇った岡っ引きなどのバイトを数名雇って、街の警備に当たっている。


 町奉行所は、現代に例えるなら行政区間の集合体のような場所だ。


 警察、市役所、裁判所など、様々な業務を行う際に取り決めや確認、沙汰を言い渡す組織として存在している。


 美波藩の代官からすれば、かなりの出世と言えるだろう。


 だが、ここで実績を残すことができなければ、なんの意味もない。


「仕事は多岐に渡るがやりがいがあるな」

「まぁまぁ、こんを詰めすぎないように気をつけな」


 先輩である銀次に何かと教えてもらいながら、各部署の仕事を回ることが決定した。


 

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