江戸時代で藩経営、可愛い姫様の教育は推し活です。

イコ

代官転生

第1話

 どうも作者のイコです。


 今回は歴史物ですが、基本的に架空のものです。

 普通に江戸風ファンタジーとして楽しんでいただければ幸いです。


 ※注意事項


 この物語はフィクションです。登場する人物・団体・名称等は架空であり、実在のものとは関係ありません。


 感想を読ませていただいております。


 質問などはお答えしておりますので、お気軽にコメントください。

 

 どうぞよろしくお願いします。


 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「わらわは、みなみはん、りょうしゅがむすめ、みなみらんである」


 真っ赤で派手な着物を身に纏い。

 髪は豪勢なクシやらカンザシが突き刺さりまくったお姫様。


 習った挨拶を必死に告げる姿は微笑ましい。

 ただ、着飾らなくても十分に愛らしいので、装飾品が邪魔だな。


 藩主の姫として教育されているはずだが、父親の前で披露するのを緊張しているのだろうか?


「はっ! ご挨拶ありがとうございます」


 今日より、俺は江戸幕府が治める美波藩の代官として任命されて、美波藩の藩主様と、お姫様にご挨拶を申し上げている。


「ふむ、良き挨拶じゃ」


 肥え太った藩主様が満足そうに返事をして、簡単な挨拶は終わりを迎える。


 ♢


 俺には秘密がある。

 

 世襲制が主流な代官職、両親が流行病で死ぬことになり、急遽代官を継ぐことになった。


 俺の名前は美波藩の代官、桜木鷹之丞サクラギタカノジョウという名を聞いた瞬間に頭に電気が走ったように、ある記憶が蘇ってきた。


 それは、俺が前世で読んでいた人気小説『アッパレ世直し漫遊記』という世界であると言うことを思い出した。


 そして、目の前にいる愛らしい幼女こそ……。


 物語の黒幕として断罪される、美波蘭ミナミラン姫様、その人である。


 そして、俺の推しだ。


 ♢


 『アッパレ世直し漫遊記』は、高貴な身分の老人が、商人に扮して江戸幕府が治める藩を回って世直しの旅をするという物語だ。


 歴史が大好きな俺は面白いと思って読んでいた。


 年代や趣味趣向は分かれるかもしれないが、小説がアニメ化された時などは毎週欠かさず見ていたほどだ。


 内容は、江戸時代に存在しなかった架空の美波藩を舞台にして、悪代官や悪徳商人、魑魅魍魎などをバッタバッタと倒して世直しをしていくという古典的な内容だ。


 小説は1〜5巻まで出版され、毎回悪役となる敵の悪事を暴いき、妖怪や鬼などから民草を救っていく。


 解決するまでのドタバタ劇がコメディータッチで笑いを誘い、江戸時代の慣わしなども付け足して放送されるので、この時代は大変なんだぁ〜と感心した。


 最終巻である五巻で断罪される悪人こそ蘭姫様だ。


 一巻から癇癪姫として登場はするのだが、別に黒幕というよりも自分勝手に生きているだけの美しい女性だった。


 幼い頃から美波藩の藩主様が江戸住まいを選んで、藩に帰ってくることはなく。


 藩に取り残されて放置された姫様。


 彼女は家臣によって、ワガママ放題に育てられたため、藩に住む民衆を我物として虐げ、悪びれた様子もなかった。


 最後まで自分の悪事を理解できず、高笑いして死んでいく姿は、なかなかに悪役っぷりが過ぎる光景だった。

 

 だが、俺はそんな姫様を美しいと思った。


 話は高貴な老人の世直しがメインだ。姫様が断罪されると美波藩はお取り潰しになり、世直しの旅に協力していた家臣に与えられて、めでたしめでたしとして幕引きをする。


 その物語の中で、桜木鷹之丞である俺は、四巻で悪代官として断罪される。

 そのため代官と、名前を聞いたことでやっと思い出すことができた。


「全く、悪代官に転生とは、面白いじゃないか」


 俺は時代劇が好きだ。


 戦国時代や幕末時代などはよく民放でやっていて見ていたが、江戸時代は大奥を中心にした話ばかりで、その時代の暮らしなどはあまり知られていない。


「好き勝手にやって悪代官の地位を欲しいままにしても問題ないということだ」


 前世の記憶があるということは、俺は一度死んだ身であり、これはやり直しのおまけみたいなものだ。


 ならば好きに生きたい。


 ただ、本に登場する桜木鷹之丞は、悪人らしく私服を肥やして、癇癪姫様を利用する最低な害虫野郎として書かれていた。


「残念ながら、まだ悪代官として功績を積む前に転生してしまったから、その楽しみは俺のものだ」


 物語が始まるのは、癇癪姫と呼ばれる蘭姫様が十六歳になった時だ。


 目の前にいる蘭姫様は、五歳ぐらい。

 そして、代官の任命を受けているということは、俺は元服して十五歳ということになる。


 両親が亡くなったことで元服した俺を代官として任命した美波藩の領主は、また江戸に戻っていく。


 戻る前にもう一度挨拶した際には……。


「はっ! 身命を賭して美波藩に勤めさせていただきます。桜木鷹之丞にございます」

「うむ。桜木よ、貴殿の両親はこの美波藩を切り盛りしてくれた恩人だ。改めて惜しい人材を失った」

「もったいないお言葉にございます」

「今後は、其方が美波藩の代官として、頑張ってくれ。またここにいる蘭姫を藩主代理として城に滞在させる。幼いながら聡い子だ。頼むぞ」

「はっ!」


 十五歳になって元服したての俺に代官が務まるはずがない。

 それなのに任せるとは? この藩主は頭がおかしいのではないだろうか? だが、どうでもいい。


 この親に藩に置き去りにされた姫様は次第に我儘になって、人らしい感情を失って癇癪姫と呼ばれるようになる。

 

「……蘭姫様! 今後はこの桜木鷹之丞が姫様の代官として、勤めさせていただきます」

「わらわの代官?」

「はっ! どうぞ、鷹之丞とお呼びください。よろしくお願いします」


 俺が蘭姫に向かって挨拶をすると、蘭姫様は嬉しそうに微笑んだ。


 その表情は癇癪姫と呼ばれるような苛立ちはなく、穏やかで可愛らしい少女のものであった。


「たっ、タカノジョウ」


 舌足らずな口では呂律が上手く回らないようだ。


「呼びにくければ、鷹だけでも結構ですよ」

「たっ、タカ。よろしくたのむのじゃ」


 顔を赤めた蘭姫様が、もじもじと嬉しそうに返事をする。

 その姿は、とても将来、癇癪姫として断罪されるような姿ではなかった。


「はっ! 必ずや蘭姫様のお役に立ちます!」

「ふむ。挨拶はこれで終わりじゃ。我は早々に江戸に帰る故、あとは貴殿に全て一任する」

「かしこまりました!」


 これが蘭姫様との最初の邂逅であった。


 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 あとがき


 どうも作者のイコです。


 新作として、書いたのですが、カクヨムでは出すコンテストがないので、小説家になろうでネットコンテストに出そうと思っている作品です。


 ただ、私の主戦場はカクヨムなので、ここで先に出して、話数を貯めてから小説家になろうにまとめて投稿をしようと思います。


 ですので、カクヨム読者様に先に楽しんでもらえれば嬉しく思います。

 今回はカクヨムではコンテスト関係なので、面白いな〜と思ってもらえたら嬉しいです。


 どうぞよろしくお願いします。

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