GSMワールド-プロローグ
Ep.1 -『GSMワールド』が手に入った-
「お兄ちゃん、おかえり」
「ただいま、渚」
家に帰るや否や、僕に抱き着いてくる渚の背に手を回して、お互いに抱き合う。暫くして、お互いに離れてリビングに入る。
暫くすると、インターホンが鳴り、宅急便が来たことを知らせ、宅配員の人から荷物を受け取ってリビングに戻る。
「おにーちゃん、その荷物何?」
「…なんだろ」
段ボールを開けると、手紙と『GSMワールド』と書かれた箱が、緩衝材に包まれていた。
「『GSMワールド』…?」
「ほら、最近リリースされたVRMMOだよ」
「ん?…ん~…あ~…あっ!なんか見たことあるかも」
「抽選、前にしたし、それが当たったのかな?」
「そうかも。…ねえお兄ちゃん、もう1箱あるよ」
「あれ、本当だ」
何で?と思っていたけど、そう言えば渚名義でも抽選を受けていたっけ。それも当たったんだ。
「ね、ね!早くプレイしよ!」
「分かったから、もうちょっと待って」
『GSMワールド』にログインするためのデバイス、GSMゴーグル。付属の説明書を読みながら、使用できる準備をする。
フルダイブ式、つまり、人間の感覚のほぼ全てをゲームの中とリンクさせるというもの。
本当にその場にいるような臨場感が味わえる…らしい。
「よし、これで準備完了」
ベッドに横たわって、GSMゴーグルを装着する。渚も、GSMゴーグルをつけて僕の左腕に抱き着く。
「その状態でログインするの?」
「うん。お兄ちゃんにくっつきたいから」
「そっか」
そう言いながら、GSMゴーグルの電源を入れる。
一度瞬きをすると、目の前に広がっていた世界は家ではなく、真っ白な空間。
【アバター設定】
そう書かれた場所の横に、白い体の素体がある。パラメーターや、設定項目がいくつかある。
「…リアルの体をもとにアバターを設定できるのか」
その項目を押すと、リアルの僕の体が白かった素体に反映される。
…目の色だけ、水色に変えておこうっと。
『ステータスを設定します』というアナウンスとともに、僕の前にステータスが映る。
【ユーザーネーム:未設定】
攻撃、防御力は低くて、素早さと瞬発力が高いのか…。
ユーザーネームのところに指をかざすと、名前の設定画面に移った。
「じゃあ…イニシャルを取ってケイでいいか」
ユーザーネームを設定し終わると、僕のアバターに視点が移り変わる。さらに、初期装備も受け取ると、辺りが光に包まれる。
どうやら、所属を選べるらしい。一番左のイングリットでいいや。
そうして、周囲の光が収まると、イングリットの前に居た。
■
「ここが、『GSMワール―――」
「お兄ちゃ~~~ん!!!!」
「おわっ」
唐突に渚から抱き着かれて、僕のアバターに体を擦り付けてくる。
「えへへ、ここでもお兄ちゃんはお兄ちゃんだね」
「そりゃ、アバターはリアルと殆ど変えてないし」
「…ん~」
そう唸りながら僕の顔をじーっと見つめる渚。
「…目の色、だね?」
「正解。…あ、フレンド登録しないと」
「そうだね。…はい。これでお兄ちゃんとフレンド♪」
そう言いながらまた僕に体を擦り付けてくる渚。
「バーチャルでもリアルでもやってることは変わらないんだ」
「だってだって!お兄ちゃん大好きなんだもん!」
まあ、僕も実際嬉しいから良いんだけど。
…そんな時、後ろから気配を感じた。スキルとかも今のところ無いし、これはただ単に僕の直感だろう。
初期装備のショルダーバッグの中を探り、武器を探す。…あった、ナイ―――
「危ない!渚!」
「わっ!?」
渚を突き飛ばし、僕もそれに合わせて伏せる。さっきまで僕らの居た地点に弾痕が出来る。
発砲地点の方を見ると、黒い外套を纏った人物が一人。
「…プレイヤーキラー、いきなりか…」
「…お兄、ちゃん…怖いよぉ…」
渚はそう言いながら僕に涙目で抱き着いてくる。
「…渚、出来る限り当たらないようにな」
「あっ!お兄ちゃん!ちょっと!」
ショルダーバッグの中からナイフを鞘ごと取り出し、取り出した勢いのまま鞘を飛ばして、刃先をプレイヤーキラーに向ける。
…初陣はPvPじゃなくてPvEが良かったんだけどな。
「…ふっ」
鼻で笑ったその人は、僕に照準を合わせて引き金を引く―――。
―――辺りに響いた、甲高い金属音。
発砲された弾丸は大きく軌道を変えて、上空へと弾き飛ばされる。
「なっ…」
「初心者だからって簡単にキルできるとは限らないよ」
ステータスの敏捷と瞬発が高いことを活かして、相手に一瞬で近付き、首にナイフを突き立てる。
もちろん、バーチャルの世界だから血とかは出ない。当たった部分が赤色に置き換わるだけ。
「…クソ―――!」
そう言い残し、プレイヤーキラーはその場で幾つもの赤い破片になって砕け散る。
その数秒後。
「お兄ちゃぁ~ん!!!怖かったよぉ~!」
そう言って僕に飛びついてくる渚を受け止めて、頭を優しく撫でる。
「怖かったね、もう大丈夫だから」
「…ん…」
――――――――
作者's つぶやき:『また彼方くん?』と思ったそこのあなた。そうです。また彼方くんです。
それはそうと、彼方くん、拳銃の弾丸をナイフで弾いていたんですけど、実際できるんですかね?
それと、投稿はいつも通り、毎日投稿をしていきたいですが、最近モチベーションが不安定なので毎日投稿が続けられるかどうかは分かりません。
――――――――
よろしければ、応援のハートマークと応援コメントをポチッと、よろしくお願いします!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます