ぼくはスペースオペラを読んだことがない~非SF読者がSFの賞で佳作を獲るまで~

九頭見灯火

第1話 SFである必要はなかった。

 どうも、はじめまして。

 筆者は昨年、関西のSFの賞で佳作を取りました。これからお話しするのはそういう経歴を生かしてSF界ってどうなっているのか、あるいはSF界でやっていくには、そしてスペースオペラを私が書くまでを記録していこうと思います。


 簡単に読書歴から書きます。読書があまり好きではなかった筆者が読書に目覚めたのは中学生、高校生くらいのときです。最初は父親の買い物に付き合っていたところから始まります。SFもいわゆる中心地メッカである早川書房や東京創元社の書籍を買い漁るようになったのはずっと後、大人になってからのことです。

 最初のSFはたしか光文社古典文庫のクラーク「幼年期の終わり」。読みやすい翻訳でするするとSFが読めたというのが原体験です。なのでSFというとこの辺からが素人でも読みやすいと思います。あとは手に入りやすさから言えば、「宇宙戦争」「タイムマシン」などですね。


 次に手を付けたのが当時、新世紀エヴァンゲリオンが流行っていたのでエリスン「世界の中心で愛を叫んだけもの」でした。読んでなんだかわからなかったですね。SFというより読書体験が浅いのでこういう本という印象でした。

 この頃はというと石田衣良とか重松清とか読んでいたんですよね。ドラマで「池袋ウエストゲートパーク」が放送していたので同じ作者なら読みやすいだろうなと思って手を付けたんです。面白かった記憶があります。海外文学もウェブスター「あしながおじさん」、ケラーマン「プライヴェート・アイ」、ゴールディング「蝿の王」、読書が趣味のひとつという家で育ったのが大きかったと思います。


 なのでここで気を付けておきたいことはSFの賞を目指すからと言ってSFばかり読む必要はないということです。SFは仕事になるからには読んでおきたいですが、そればかり読んでいるだけじゃなく、出来ればオールジャンル、ミステリを読んだり、ホラーを読んだり、怪奇小説を読んだり、現代ドラマを読んだり、ある程度の下地は必要だということです。


 SF界というのは大小さまざまなファングループの総体を指します。なので地方ごとにSF大会というコミュニティイベントが開かれるのは、面白いところだと思います。そういうSFファンたちのことをまとめてSFファンダムといい、日本SFファングループ連合会議という組織が元締めになっています。ただそこに承認されていない小さなファングループもあちこちに存在していますし、これからあなた方がそういうファングループを作ってしまっても構わない、そういう自由さがあります。


 いっぽうで家庭というのは子どもにとってひとつの世界です。大きくて、後から思えばめちゃくちゃ小さいわけですが子ども視点でいえば大きいわけです。そこでSF読者の父親にある種のを受けて育ちました。


 SFの話をする、というよりしなくちゃいけないわけですね。おかしいけれど。こういう名作があったという話をとにかく延々と聞かされるわけです。正直ウザい……。同じ話が繰り返される……面倒くさい。そういう親との付き合いで少しずつSFが面白そうであれば読む、興味があれば読むくらいにはなったのです。これが大学に入る前くらいでしたね。SFアニメは好きだったのでその影響もありました。1990年代から2000年代のアニメシーンは宮崎駿、庵野秀明、押井守、新海誠といった名監督たちがSFアニメを撮っていた時代でしたから。


 そうした下地があってSFを書き始めるわけですが、SFといったってSFファンと呼べるほど、SF読者と呼べるほど、SF読んでいないよなーというのは分かるわけです。

 ただSFを読んでいないけれどSFを語る技術はあった。これは逆説的ですが、読んでいない本を語る技術はあったんですよね。このへんの話はピエール・バイヤールなんかを参考にしてください。

 なにせ読んでいないし、でも創作はしたいので、インプット少なめ、アウトプット多めでやってきました。今も小説は量であるという姿勢は崩していません。

 たくさん駄作を生み出し、自分の手を動かすことによってそれだけイノベーションが生まれやすくなるというサイクルがあります。


 そこでやはりSFの世界と向き合っているとインプットの量を指摘されるわけです。こういう重箱の隅をつつく輩は放っておいてもいいのですが、細部を指摘されるということは全体も狂っている場合があるために一度確認しておいたほうがいいこともあります。


 こうしてSFを書き溜めること8年が経過しました。このあいだ、SFのウェブファンジンに投稿したりして全く交流がなかったわけではないです。だから鉄人のように書いてきたわけでもないです。


 そうして関西のSFの賞で佳作を獲ることになりました。SF短編を盛り上げる流れがここ三、四年のあいだでありました。そのなかで短編の賞に佳作として潜り込めた、そこは大きかったです。


 ――あとがき――


 SFのゆる~い教室にようこそいらっしゃいました。

 ここではSFを読んでいないけれど、SFに興味がある読者向けに記事を不定期で書いていくつもりです。どの創作でも同じですが、SFは怖い世界です。でも少しでも楽しくなるような記事を書いてみたいですね。


 

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