本編
外は晴れていて、緑の葉が風に揺れていた。
白いリネンか綿のような服に身を包んだ巻毛の小さな少年が、
天窓の外の揺れる葉を見ながら立っていた。
その後ろには痩せた黒い服を着た背の高い男が立っていた。
彼は少年に似た生き物のように見えたが、
男の目はそれが少年と異なった種のものであることを物語っていた。
男はまるで少年を捕まえようとしているように、
少年の後ろからじわじわと距離を詰めていった。
少年はそれにすぐさま気がつき、
一定の距離を空けながら男から逃げた。
両者一歩も譲らない、静寂の中の長追い。
それは真剣なものなのか戯れなのかわからなかった。
少年は男から逃げている間、ずっと玄関を気にしていた。
それはまるで誰かの帰りを待っているかのように。
しばらくすると、
誰かに釣られられてどこかから小さな少女が帰ってきた。
少女は少年と同じ年で、同じ素材でできた服を着ていた。
でも少女は何かに怯えた表情を浮かべており、その顔は疲れ切っていた。
少年は駆け寄って少女に笑いながら優しい声で言った
「大丈夫、すぐに元気になるよ」
そして少年は少女の手を握り、2階にある小さなテラスへと向かった。
窓を開けてテラスへと出る。
太陽の光、青い空、緑の葉、頬を撫でる優しい風…
二人ともその感覚を目一杯楽しんだ。
すると男が二人に家の中に入るように言った。
「外に出るなと言っただろう」
男は少年に向かって静かに怒鳴った。
その男は外は綺麗み言えても二人にとっては良くないものだと告げた。
少年と少女はその意味がまだ理解できなかったが、
女の子はその後少しだけ咳き込んだ。
二人が家の中に戻ると男は静かにテラス出る窓に鍵をかけた。
その後三人は一緒に食事をとった。
食事は白いクリームスープのようなものだったが、今まで食べたことのないような味だった。少女がそれを食べるのを躊躇していると少年がそれに気づいて言った。
「大丈夫、ほら、食べられるよ」
少年はスプーンでスープ掬って口に運んだ。
少女はそれを見て、恐る恐るスープを食べた。
そのスープは美味しかったが、この世の食べ物ではなった。
その食事はお腹を満たさず、魂を満たす食事だった。
少年は自分の命を分け与えるように、ずっと少女の手を握っていた。
この世界ではそんなことさえも可能に思えた。
食事を食べ終え、男がいなくなった瞬間を見計らって少年が言った。
「いつか一緒にこの家を出よう」
少女は「…うん」と答えたが、その考えが正しいのかどうかわからなかった。
少女はすでに疲れ切っていて、
少年について行けるかどうかわからなかった。
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