第13話 ターボばあちゃん

 昔、日本ではとても有名な都市伝説がありました。そう、ターボばあちゃんです。その名の通り? めちゃくちゃ速いおばあちゃんです。様々な情報があり、ただ高速で走り去っていくだけの無害な存在だと言われることがあれば、走行中の車に事故を起こす危険な存在だとも語られます。色々な人に色々な形で語られるメジャーな都市伝説だったんです。僕が子供の頃から好きな都市伝説でもあるんですよ。


 ターボばあちゃんは夜の峠や高速道路で、走行中の車の近くを走ると語られることが多いです。様々な形で語られる都市伝説ではありますが、ある程度は共通のイメージがありました。車の側を高速で走り抜けていくお婆さんというイメージは多くの人が持っていたのです。まだインターネットも広まっていない時代に語られていた都市伝説が日本中で共通のイメージを持っていたのはなんででしょうね? 単にテレビやラジオが今のインターネットの代わりをしていただけなのでしょうか? 不思議です。


 ターボばあちゃんには類似のおばあちゃんが数多く存在します。ダッシュばあちゃんだとかジェットばあちゃんだとか……光速ばあちゃんとかも存在していましたね。光速まで行くと……強そうだし凄そうでもあるんですけど、あまり怖くは感じませんね。と、話がそれるといけません。僕が言いたいのは、話が広まるうちに、ちょっとずつターボばあちゃんという都市伝説は姿を変えているのではないかということです。


 もしかすると伝言ゲームで間違った言葉が伝わっていくようにターボばあちゃんは形を変えて伝わったのかも。もしそうだとすれば、インターネットで同じ情報を共有できなかった時代だったからこそ、多くの派生した都市伝説が生まれたんじゃないか。と、僕は思います。面白いですねえ。


 ターボばあちゃんという都市伝説はリレーをするように日本中の人から人へと走り抜けたのかもしれません。ここまではターボばあちゃん。ここから先へはダッシュばあちゃん。あちらではジェットばあちゃんって感じでね。日本中を高速で走って行く何人ものおばあちゃん。その姿は想像するとなんだか可笑しくも感じます。元は恐怖の存在だったとしても応援したくなっちゃいます。


 人から人へと走り抜けたおばあちゃんたち。彼女たちは今も走っているはずです。僕が書いた文字がこれを読むあなたに届いたように、この文字を読むあなたの元へターボばあちゃんの足は届いたんだと思います。そして彼女はまたどこかへ走り去っていきます。それはなんだか素敵。あなたもそうは思いませんか?


 人から人へ噂となって走り抜けていく都市伝説の、お話でした。

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