第7話 長休超課

「休んでいいといわれてもな」

 下校、霧子は両手に持ち帰る荷物を抱えて、それでもなお僕と手を繋ごうとモゾモゾと手が藻掻いていた。

 要領のいい子は、少しづつ持ち帰るのだが霧子は、こういうところが…。

 そういう僕も霧子ほどではないのだが荷物は少ないとは言い難い。


 集合住宅という場所は世界の縮図である。

 朝からワンカップ飲んで階段で寝ている爺さんがいてTHE公務員も住んでいる。その隣がスナックのママだったりする、暇になるとミサイルを飛ばしてくる隣国に頭を悩まし、大国の顔色を伺う世界と何ら変わらない。

 そう霧子の悩みも、本人にとってみれば、そういうことなのだ。

「なぁ聞いているか?八雲」

 珍しく僕の少し後ろを歩く霧子、その綺麗な顔に汗が流れる。

「いいんだよ夏休みなんだから」

「いいのかな~う~ん…1か月以上か…学校も行かずに小学生の自主性に任せるとか…大丈夫なのか?」

 保護者が心配するようなことを口走る小学生、これで1年生なのだから末恐ろしい。

「なぁ八雲……なぁってばぁ八雲」

「なんだよ」

「ワタシは明日から何をすればいいんだろう?」

「さぁ…とりあえず宿題でもすればいいんじゃない」

「宿題かぁ、なんで学校に行っている時以上に課題が多いのだろう?学校って何なんだろうな?」


 ホントに学校って何なんだろう?

 それは高校生になっても解らない。

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