第11話 転校 14
ハミルEN 14
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「いやだ!」
「アユラ、仕方ないんだ。すまない」
「絶対引越しなんか嫌だよ!私は残る!」
「そういうな。俺にはお前を育てる義務があるんだ」
「そんなの!だってみんないるし、私ダディがいなくても大丈夫だよ!」
「アユラ!わがまま言うな!」
「だってやだよ。絶対いやだ。みんなと別れるなんて」
「すまない。でも仕方ないんだ。仕事しないといけないし」
「ルチカ、ララタ、ピエハ、ユーリ、ユリリ、エルヒ。みんなと別れなくちゃいけないの」
「そうだ。でも近い。静岡の浜松市だ。名古屋からは近いんだ。いつでも戻って来れる」
「本当?ダディ」
「本当だ。月に1回か2回は戻ってこよう」
「もっとだよ」
「うん、そうだな」
「・・しくしく」
アネハの転勤が決まった。スーパーに勤めている。愛知県内に14店構えるスーパーは他県に初出店する。静岡県浜松市だ。スーパーは既に豊橋市にも店舗を構えていて、豊橋から浜松は程ない距離だから配送に関しても負担は少ない。そのあたりを考慮して浜松に新規店舗の出店が決まっていた。浜松店の準備は進んでいて、ある企業のストアが閉店するところを居抜きで買取り出店する。改装は進んでいて翌年三が日の後、1月7日が新規OPENの日取りだ。
アネハは熱田店で副店長をしていたが、新店のハミマツ店への異動の辞令を受けた。元々他の人間がその対象だったが、病で彼の異動が頓挫したためお鉢が回ってきた。急遽指名された形だ。役職は変わらず副店長だった。愛知と静岡では市場性が異なる面があり静岡地域の特性に合わせた仕入れを行うためアネハは副店長と兼任して加工食品のバイヤーを担当することになった。
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新しい地域での仕事にやりがいを見出せるような気がしたし、十年前に亡くなった娘の母セイナのことを一旦頭の奥の片隅において人生を再スタートさせるいい機会かもしれない。近々で恋する気持ちを覚えた女のことももう諦めたし
辞令に従うことを決定した。娘のアユラの抵抗が予想できたが、期待通りの駄々を彼女は捏ねた。
「ねぇ、ダディ。私たちハミルENならみんながそばにいてくれるから、私は行かなくてもいいんじゃないの?」
「俺がアユラと一緒にいたいんだ」
「・・うん」
「ルチカか?」
「・・シクシク、いやだよぉ。離れたくないよ」
「すまない、すまない。ごめん、ごめんな」
父の謝罪で許しを得たかのように、アユラは大きな声で泣いた
2歳年上のルチカにずっと想いを寄せていた
花瓶のない家だった・・
いつかアユラがペットボトルで花瓶を作ったね。父がある人に渡せなかった失意の花束を持ち帰った時だった。今、ペットボトルの花瓶に挿されたキバナコスモスが幼い恋心を優しく慰めていた
#HAMIRU
#アユラ
#アネハ
#ハミルEN
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