第零章 "勿忘草"の花言葉

第1話 秋時雨の日の手紙

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拝啓 


 紅葉の候、涼しくなってきたね。


 さて本題に入ろうか。


 藤花ふじかは勿論、知ってると思うけど私って

 気まぐれな性格だからさ、そのせいで、

 嫌われて虐められてたよね。


 そんな私に藤花は寄り添ってくれた。


 でもね、もういいんだ。


 私の人生、思い残すことはもうないよ。


 さよなら、そしてありがとう。


 最後にあげたいものがあるから明日さ、

 XX橋に来てくれる?


 私が藤花を思いながら選んだの。


 藤花に似合うと良いな。 

                 敬具


               天草玲奈あまくされな

2017年10月XX日


花谷藤花はなやふじか

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「……懐かしいなぁ」


 人の心のように雨量の起伏が激しい秋時雨の日、膝を立て棚の整理をしていると、懐かしく苦しくなる手紙が出てきた。君が最後にくれた手紙だ。


 この手紙を君から貰った日も今日みたいな天気だったな。今、この手紙をくれた玲奈れなはどこで何をしているんだろう。


 不意にギシギシと開き戸が鈍い音をたてながら開く。妹の椿つばきが部屋に入ってきたのだろう。


「お姉ちゃん、朝だよ。起きて……っ!?なんで泣いてんの?」


 どうやら私は大切な手紙を持ちながら泣いているらしい。椿の困惑した表情が涙で霞んだ視界でもよく見える。私は椿を安心させたいからなのか、咄嗟に手を伸ばし抱き締める。


「いや怖いって。急に泣いて、抱き締めてきて、大丈夫?一回落ち着いて」


 椿に散々、退かれたが、水をかなり飲んでしばらく経って落ち着いた。


「ん?この手紙がどうかしたの?」


 椿が手紙を拾って読み、少し考えて言った。


「何これ?元カノの遺書?」


 確かに、読み方によっては元カノとか彼女の遺書に見えるかもしれない。


「……いや違う。私の親友からの手紙……」


 遺書じゃない、玲奈が死んだなんて、思ってない。私の心の中にいるとかそういうのでもない。私は彼女が必ず生きてると信じてる。


「そうなんだ。じゃあなんで生きていると思うの?」


 さすが私の愛する妹だ。私の心の中を見透かしてくる。椿になら話してもいいかもしれない。あの秋時雨の日、あった出来事を。


「少し長くなるけど私の過去……この手紙を書いた子、玲奈のこと話すね……」


――私は過去を話し始めた。

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