命の時間

「ねえ、自分の時間ってわかってる方がいいかな?」


「自分の時間って何?」


「命の時間だよ。

 あたしはわかってる方がいいと思うんだ」


「そうかな。ぼくはそう思わないよ」


「そう?

 自分が終わる時間がわかれば、

 その間にいろんなことできると思わない?」


「ぼくは、ある日突然終わる方がいいと思うよ。

 その方がきっと、幸せなんじゃないかな」


「そうかな~……」


でも、彼の言ったことは当たってる。

もし、自分の命の時間がわかってしまったら、

その後は不安に脅えて生きてしまう。

だから、その間に何かやろうなんて気持ちは失せてしまう。

そういうことだってあるんだ。


命の時間について話せるのは、

あたしにも彼にも、

まだ命の時間なんてまったくわからないからだった。


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