短歌連作20首「あいくらい」
星野ぐりこ
短歌連作20首「あいくらい」
波音を孕んだ胎を抱えゆく宵闇深く明日は何処へ
愛という言葉で全て誤魔化して育つ憎悪がナニカを殺す
紐解けば複雑すぎる感情を愛と謳って良いものなのか
誰からも感謝されない人たちがかなぐり捨てる自愛と慈愛
欲深く喉奥を突く銃身を噛みちぎられる覚悟はあるの?
子を成さぬ交わり終えて薄い膜隔てた距離の貴方が遠い
度を越せば何事も毒 優しさに包まれすぎた君は廃人
セックスが娯楽であった時を終え祖母の背中はお迎えを待つ
たましいを宿すことなくヨード卵・光は規則正しく並ぶ
広がってゆこうとすれば手を取られ愛に押しつぶされてゆく自我
凡庸な私が一人紛れ込む渋谷 どうして予備が無いのか
Knocking on Heaven's Door 彼方から傍観してる神様の群れ
感情の環状線をひた走る 私あなたを許していない
選択を間違いながら生きてきて瀬戸際に立つ 生きるか/死ぬか
浴槽を隈無く調べつくしても何処にも彼のたましいが無い
作文の中の私は嘘つきでママは優しいママじゃなかった
感情という爆弾を抱えてるどいつもこいつも皆爆弾魔
柔肌の杏仁豆腐 純潔は私にとって足枷だった
人として生きて死ぬにはどうすればいいの ジェンガはもう崩れそう
傷つけて傷つけられて傷ついてそれでも愛を叫ぶってこと
短歌連作20首「あいくらい」 星野ぐりこ @darauni_0906
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