めぐるあくありうむ

入山夜鷸

「めぐるあくありうむ」二十首

水底に果てたさかなの腹の色 波打つ上と同じなないろ


ゆたゆたと岩壁を這うネコザメも あのなないろに生かされている


こんにちは 手を振り生きるエイの口 人らしくそう思い込みたい


水槽も水族館も同じ箱 渦巻く群れもヒトを見ている


めぐりゆく有象無象の一匹の白い瞳よ何を見てきた


ギョロギョロと夕陽の瞳 ハシキンメ もう空青き昼を忘れて


空を向きホバリングするメバルたち 哀しいことに煮付けてやれぬ


食われるか住める広さを取られるか 命拾いの哀しきマダコ


マアナゴはミニマル極め 筒の中 とうとう捨てた泳げる広さ


素通りにとうとう飽きたイシガレイ 恥ずかしがって も一度消えた


隠れ住むイソギンチャクが少なくて 赤く恥じらいクマノミは浮く


ぷかぷかと浮かぶペンギン潜水艦 スクリュー無しさ伝統の技


オキャクサン 誰も知らない技ですが サービスします次のショーまで


誰がために傘を光らすミズクラゲ 私の夜も照らしておくれ


くらくらと降る陽の光 集うタイ その暖かさどこまで届く?


番では暖かくとも狭かろう 寂しく触れるウミガメの鰭


閉ざされたアコヤの中で眠ったら 番う気がする 夢も現も


また来たね そう言いたげに目を閉じた また来るからねイロワケイルカ


目にしみる夕暮れの風 土の町 さっきまで居た青が恋しい


身を捩り 息を継ぎ継ぎ抗えど 時が暮れたらみんな水底

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めぐるあくありうむ 入山夜鷸 @yaits

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