【完結】空白の美学

湊 マチ

第1話 汚部屋の日常

三田村香織は、信用金庫での忙しい一日を終えて自宅に戻る。ドアを開けた瞬間、彼女の目の前に広がるのは、まさに「物の洪水」だった。玄関には数日前に脱ぎ捨てた靴が散乱し、まるで靴のブーメランが帰ってきたようだ。


「ただいまー、私の小さなゴミ屋敷…」と自嘲気味に呟く香織。


廊下を進むと、キッチンには洗っていない食器が山積みになっている。シンクの中には、かつては透明だった水が、今では未知の生物の住処になっていそうな色に変わっている。香織はその光景に目を背け、「後で片付けよう…」と心の中で決意するも、既にその決意が揺らいでいる。


リビングに入ると、そこにはさらにカオスが広がっていた。ソファには洗濯物が山積みになっており、まるで洋服のエベレストが存在しているかのようだ。床には雑誌や書類が散乱し、歩くたびに「シャッ、シャッ」という音が響く。


「もう無理、絶対に無理…」と香織は嘆きながら、なんとかソファの隅に座り込む。しかし、その瞬間、山積みの洋服が彼女を埋め尽くす。


「まるで洗濯物に襲われてるみたいじゃない…」と半ば呆れながら、香織は洋服の山から抜け出す。


ふと見上げると、テレビの上にはホコリが積もり、その上にあるフィギュアが薄い灰色のマントを羽織っているかのように見える。香織はため息をつきながら、スマホを取り出し、YouTubeアプリを開く。


香織はYouTubeで何気なく「ミニマリスト」と検索し、いくつかの動画を再生する。そこにはシンプルな生活を送る人々が映し出されていた。彼らは少ない物で豊かに暮らしており、その部屋はまるでモデルルームのように整然としている。


「こんな生活、私にもできるかしら?」と興味津々で動画を見つめる香織。


動画の中で、ミニマリストたちは無駄な物を手放し、必要最低限の物だけで豊かに暮らしている姿を見せている。彼らは「物が少ないほど心が軽くなる」と口々に言っている。


「よし、私もやってみよう!」と香織は決意を新たにする。


次の日、香織は職場で同僚の藤田涼介に相談する。ランチタイム、香織は自分の悩みを涼介に打ち明ける。


「涼介、昨日すごい動画を見ちゃってさ。ミニマリストって知ってる?」


涼介は微笑みながら、「もちろん。どうして?」


香織は目を輝かせて話し始める。「それを見て、私もミニマリストになりたくなったんだけど、どうやって始めればいいか全然わからないの!」


涼介は少し考えながら、「そうだね。まずはキッチンから始めるといいよ。使っていない道具や食器を整理するのが一番簡単だから。」


香織は驚きながら、「えっ、涼介ってミニマリストなの?」


涼介は笑いながら、「まあ、そうだね。必要最低限の物しか持たない生活をしているよ。」


香織は興味津々で、「それってどんな感じ?」


涼介は軽く笑いながら、「とりあえず、使っていないフライパンや古い食器を全部捨ててみるといいよ。きっと気分がすっきりするから。」


香織は興奮しながら、「よし、やってみるわ!」


彼女は初めての一歩を踏み出し、新しい生活への希望を胸に抱くのであった。

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