ツキも実力も無い僕は、その日何かを引いたらしい。- 人類を救うのは、学園最強の清掃員 -

久遠 れんり

第一章 神の世界創造と都合

第1話 管理宇宙創造と難しさ

「あー。つまんない。強い者が弱い者を捕食して増えるだけ。魂の数だけ増えても仕方が無いのよ…… 質。そうよ質。高位の魂になるまで、どのくらいの時を待てばいいのかしら??」


 文句を言いながら、また、少し遺伝子をいじり始める。


 そう。ぼやいている彼女。

 彼女は女神。それも女神に成り立ての新神。

 世界を創るのも、管理をするのも初めて。

 自分が創った世界に『プリモス=ムンダスデオリューム』と名付けていじり回っている。


「性を二つに分けたら、ずっと繋がりっぱなし…… 意味ないじゃない。あー滅んだ。多様性を持たせないとすぐ死んじゃうし、そう思って強くすれば、他の生き物をすべて食べ尽くす。もう……」


 この数十億年、ぼやきっぱなしである。


 なれない者は、一足飛びに結果を求め。すぐに手を加えてしまい、それがさらに悪い方に……


 新人女神マジッカ=ヘタ=ケイケニャン=シヴは手引き書『原生生物にも理解できる宇宙構築論』を眺める。


 最初に、宇宙を創るフォーマットには基本がある。

 物質に、過剰な力を与えると燃えてしまい、それは他のものにまで影響を与える。

 また、電子すら運動できない低温では、物質は変化をしない。

 そのバランスが、重要だ。


 そして、それ以外の機能を付加すると、神はずっと神気を供給せねばならない。

 それは、複数の宇宙を管理するには弊害となる。

 その点は、古代神オーディン様の創る世界を参考にすればよい。


 構築する世界の中心に、必要なものを与えて一気に反応させて光を起こし、放って置くのが効率的だ。


 だが、この方法は宇宙創造として効率的でも、魂の進化においては限界があることが判っている。


 そこからが、管理者の力。だが、あまり、目を掛けすぎ。上手うまく行かないからと、ホルンを鳴らして、ラグナロクを起こすのは愚の骨頂だ。また一からとなる。

 そう、この本を読んでいる新神のために言っている。


「はあっ。どうすればいいのよ」

 そう言って彼女は、空間に穴を開けて、色々な世界。

 つまり他の神が管理をする世界をのぞき見る。


 物理だけの所もあれば、魔素を創り魔法の使える世界。

 神気を世界の上に固定するダンジョンシステムにより、循環供給をして神気の供給回数を減らす創り。


 体の小さい弱き者が生き残るために、魔法という特別な力を生物に与える。


「これは良いわね。いただくわ」


 他にも、物理だけれど、スキルシステムで初心者でも道具の運用を効率的に行える能力。

「これも良いけど、ああそうね。上限を設けないと使用者の体が持たないのね…… だけど、使えるわ」


 禁忌だというのに、他の世界との間に穴を開けて、覗き回る彼女。


 色々な世界の良いところだけを取り込み、神気をぶち込む。

「疲れたわ。寝よ」

 そうして彼女は、せっかく出来た世界を混ぜっ返すだけ混ぜっ返して眠りにつく。


 そうして出来上がった、混沌とした世界でも、生物は生まれて輪廻を繰り返し、進化をする。


 数十億年後、ある程度落ち着いた人々の暮らし。

 社会生活を行い、魔物などの脅威と戦う。


 与えられたスキルシステムを使いこなし、修行の場と化したダンジョンも上手く利用をしているようだ。



 この世界に発生した、人の営みをジャマする脅威。

 魔素の影響で変化をした動物は、モンスターとなる。

 それは、魔素の供給源であるダンジョン近くで発生をして、周囲へ広がっていく。


 武器を作り、それを扱うシステムはスキルと呼ばれる。

 スキルの発現者は、およそ五パーセント。

 七歳を目処に人々はテストを行い、スキルを有する者は国を管理する者として、重用される。

 そして、もう一度が十二歳。

 それで拾われなければ、能力無しとして平民のまま。


 能力無しも、むろん魔法も剣も使えるし、たゆまぬ研鑽をすれば、その能力はスキル持ちを凌駕する。

 それを、先人は歴史の中で知るが、何時しかそれは封印される。

 そう、スキル持ちが管理する上で不都合な事実。


 スキルには、上限がある。

 だが早熟さと、便利さ。

 その効率的運用を各流派として体系化していく。


 特に、歴史の中で、モンスター対人の世界では、非常に有効だったスキル。

 だが国が乱立し、人対人となったときには、スキル使用の隙を攻撃される。

 スキルは発動すると、自動的に体が動いてしまう。

 そしてその動きは画一的であり、熟練者は発動した瞬間に、その動きがどういう軌跡をたどるか理解されてしまう。

 

 弱点だらけの技。

 そのため、重要なのが流派。

 弱点を埋め、効率的運用を発見し、子孫や弟子に伝える。


 歴史の流れで、それは極められていく。



 国を管理する貴族達。

 彼らは、何かしら流派を継承して、伝えている。

 七歳になると国民が受ける、『判定の儀』。

 そこでスキルがあると判断がされると、貴族が養子として取り込み学園へと通わせる。


 騎士コースと、魔法使いコース。

 エリートと言われる、魔法剣士コース。


 共通科目として、法律と礼儀作法。戦術と算学。

 貴族としての教育を受ける。


 大体この大陸にある、どの国でも行われる事は同じ。

 ああ一つ、ダンジョンを管理し、商売のみで国を経営するフィリップ商国のみ少し違う。


 そう、惑星フロンティに存在する、大陸ローレンス。

 その大陸は、現在七つの国が統治している。


 その中で、ダンジョンが存在する北の半島を持つコンラート王国は、教育においても、戦力においても別格となっていた。


 そこのダンジョンである日、ちょっとした異変が発生した。


「うん? これは、違う世界か?」

 空間に穴が開き、骸骨が覗き込む。

 その目は赤く光り、こちら側で倒れ込み、死にそうな少年を見つめる。

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