【第二部完結】不屈の悪役令嬢は最強の警察騎士に溺愛される〜無実の罪で婚約破棄された令嬢は、ツンデレ強面騎士と契約婚をして冤罪を晴らします!〜

ぷきゅのすけ

【第一部】第一章、令嬢プロメ、警察騎士のシドウと出会う

第1話 成り上がりの炭鉱女



「プロメ・ナルテックス!! このフォティオン学園はあんたみたいな成り上がりの炭鉱女が来るとこじゃないのよ! なのに卒業まで居座るなんて面の皮が鉄で出来てるんじゃなくって!?」




成り上がりの炭鉱女と呼ばれた私――プロメ・ナルテックスは、三人の令嬢に囲まれました。


私の実家は平民階級でありながら、この国の鉱山全てを所有する鉄工業の要――大会社のナルテックス鉄工です。


ですから、平民のくせにたまたま商売が上手く行っただけの家柄の私なんて、貴族達からしたら「成り上がりの炭鉱女」でしかありませんでした。



そんな私が通う金持ち学校――フォティオン学園の豪華な噴水広場には人がおらず、私と気の強そうな令嬢三人しかおりません。



それもその筈、今日はフォティオン学園の卒業式なのですから。

卒業生は卒業パーティー会場に向かっており、在校生も人気のある卒業生の制服のボタンをもらおうと会場の前ではしゃいでいるのです。



つまり、私を助けてくれる人は誰もいません。


だけど、こんなのはもう慣れっこでした。





「成り上がりの炭鉱女で、しかも『炎の加護人』なんて! 邪智暴虐の炎の精霊の加護を持って生まれた汚らわしいブスが! この国を護りし水の精霊の加護持つ私が、炎の加護人なんて断罪してやるわよ!」





水の精霊の加護を持つ令嬢三人組の一人が、炎の加護人である私を噴水に突き飛ばしました。


噴水は意外と深く、私は全身水に浸かるように倒れ込みます。



こんなのはもう、慣れてます。

だって、私は炎の加護人だから。



かつて、この国を滅ぼさんと大暴れをした邪悪なる炎の精霊の加護を持って生まれた炎の加護人である私は、炎の精霊からこの国を護った水と風と大地の精霊の加護を持つ令嬢達に、断罪という名の嫌がらせを受けていました。





「ど〜お? プロメ・ナルテックスぅ? 成り上がりの炭鉱女にこのフォティオン学園の噴水の水は綺麗過ぎたかしらぁ? キャハハハッ」





私を突き飛ばした令嬢が、噴水に落ちて倒れたままの私を覗き込むようにしてきます。


そして、もう一人の令嬢が



「あんた、コーカサス炭鉱爆破事故の犯人の娘だもんね。……駄目よぉ? 煙草はちゃんと水につけなきゃ。アハハハっ」



と近付いて来ました。



こんなのは、もう慣れっこです。



コーカサス炭鉱爆破事故。これは、私の父が起こした事故です。



事故の犯人の娘として、私はいつもいつも嫌がらせをされていました。





「なんとか言いなさいよ! この成り上がりの炭鉱女が!! あ、もしかしてフォティオン語が話せないのぉ? そうよねえ。炭鉱の連中って薄汚い訛りで話す下品な連中なんだもん! ギャハハ!」





令嬢二人がキャハハハと笑って顔を近づけて来ました。



こんなのは日常茶飯事です。


私はもう、慣れていました。



――――だから。





「え? もしかして泣いちゃったあ? ごめんねえ〜? 私達ただあんたの炭鉱臭いブッサイクな顔を洗ってあげェッ!?」





私は『慣れた手付きで』のこのこ近付いて来た令嬢二匹の制服のネクタイを掴み、そのまま勢い良く引き下げました。



そして噴水へ顔から沈むように派手に転んだクソ令嬢共の後頭部を掴み、二人の顔を水に沈めます。



私に沈められたクソ令嬢共はジタバタと藻掻いていますが、こんな髪飾りのリボンより重いものは持ったことありませんとでも言いたげな、ひ弱なカスの足掻きなど何一つ意味を成しません。



三人目のクソ令嬢が「ヒィイイイ!! な、何してんのよあんた!! 二人とも死んじゃうでしょ!?」と喚いていますが、お友達二人が沈められているのに助けようとはしません。所詮、その程度の友情なのでしょう。



私は令嬢二人を噴水に沈め、二人が大人しくなる……つまり気絶するまで沈めました。


……そして。



二人が噴水にぷかーと浮いたので、手を離しました。



噴水から出てると、三人目のクソ令嬢が私の眼の前で腰を抜かして「ぁ……ああ……」と完全に戦意喪失しています。





「す、すみませんでした……。お願いします……私だけは許してください……私、ただ、その子達に無理矢理突き合わされただけで」





腰を抜かして泣きながら私を見上げて命乞いする令嬢に、私は一言言いました。





「どけ」





令嬢はビビりながらどいてくれました。



私はずぶ濡れのまま寮へと戻ります。



こんなのは、日常茶飯事でした。


嫌がらせをしてくる連中を返り討ちにしてぶちのめす修羅の日々には、もう慣れっこでした。




私の名前はプロメ・ナルテックス。

この国の炭鉱全てを所有するナルテックス鉄工という大会社の令嬢であり、スーパー金持ちです。


恋愛物語が好きで、白馬に乗った王子様に溺愛されるのを夢見る、どこにでもいる普通の女の子です。

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