美少女龍召変身記~龍を召喚するために変身ヒロインになります!!
中原 美槻
第1章
1話
この
この国の象徴である
その黒智宮中央に配する内廷にある、この国の王
この21歳の若い王は、今日も職務に疲労が溜まり、伸し掛かるよう椅子に腰を下ろすと、少しでも楽になったかと思えた。
ほんの1ヶ月前に彼の母で先代の女王、
しかし、官のうち半数以上が子瑞の即位に反対し、萊珠の即位を唱える
それに対して萊珠の即位に反対し、母王甄祥の遺言通り現状維持のまま子瑞の即位を唱える
官はその二つの派閥に分かれ、壮絶な王位後継者争いが勃発している。
子瑞は以前、妹王派の官が使わせたと思われる刺客に、自分を亡き者にしようと彼女の命として、子瑞は一度刺客に襲われていた。
それ依頼、子瑞の寝所には5人体制で護衛兵が付けられている。
その渦中に巻き込まれている若き王が、このように束の間の安息の時を過ごしていると、この寝所に面する廊下に配置されている護衛の兵が霹靂の如く叫声を上げた。
「どうなさいました!!
「ええい、どけいッッ!!主上!!
堰を切ったかのような足音を立てて寄ってきたそれは、護衛兵をかわして王の寝所に飛び込んできた。そして、滑り込むように膝を着き拱手した。
この男は
彼は軍事を統括する役職に就いていて、普段から子瑞に従順してくれている。彼は子瑞が王位に就くことを訴えている兄王派だった。
一方で、祭祀を司る役職である
恭啓からの報告は、まさに寝耳に水であった。それを急いで子瑞に知らせようとした彼は焦りと疲労のあまり、普段は柔和な表情をしている彼の顔が引きつっていた。
子瑞は衝撃的な知らせを聞いて、心臓の鼓動が早まるくらい虚を突かれたが、それでも気を取り直して恭啓から詳細を聞こうと急かす。
「それは誠なのか!?詳しく聞かせてくれぬか?」
「はッ!奉常の海伯黎が大将軍の
子瑞に報告を迫られた恭啓は、上ずった声で更に付け加えた。
それを聞いた子瑞は顔から驚きを隠せず、何事も口に出せなかった。そして拳を握った彼の腕は震え、歯を食いしばる。
廊下に控えていた護衛兵達も、驚きを隠さずに動揺している。
伯黎が魁瑠に盗ませて、王でない彼が”陰昇玉”を使えばこの黒智宮の文官も武官も関係なく彼らを洗脳させ意のままに操ることが出来る。
それと同時に"
陰昇士も伯黎に洗脳されるので、陰昇士を偽王に就かせるのかどうか不安になり子瑞に戦慄が走った。
それにしても、陰昇玉を盗んだ伯黎は子瑞から王位を簒奪せんとしていることは変わりないのだった。
陰昇玉は普段、この極央殿の地下深くの
陰昇玉は両極器として、もう一つの”
そこに張られた結界は王のみしか解いて入ることが出来なかった。それを王ではない魁瑠が成し遂げたのだった。
伯黎は術士でもあり、彼は大将軍の魁瑠との義兄弟の
それほどの一蓮托生の仲にある彼等だが、陰昇玉を盗むことを魁瑠であれば出来るということを伯黎は知っていたのだろうか?
それを知っていたとしても、なぜ妹王派に付いていたはずの伯黎は、今更それを実行したのか?
子瑞は疑問に思わざるを得なかった。
このようなことが起きて、恭啓が口に出した"謀反"という二文字が現実となってしまった。
「この国の王としての余の王としての宿命が終いとなるのか。ただでさえ莱珠に命を狙われているのに。どうすればよいのか……」
「ですが……王ではない伯黎が陰昇玉を使い、黒智宮の官や兵も全て伯黎に洗脳させるに違いありません。やがて私もそうなるのです」
恭啓が言う通り官も兵も全て自分の敵になるのであれば、もうこの黒智宮に居場所は無いとしか考えられなかった。
しかし恭啓は、取るべき策を立ていた。
「部下が順羽があるこの
恭啓が言っていた”伝鴇”とは、伝令用に飛ばす
「まず、主上はそこへ逃れることとなります。ですが……この王宮を抜け出さなければなりませんが、どの門も伯黎が洗脳させた兵どもによって封鎖されております」
「まずは靜耀に向かって、そこで県令に匿ってもらえればよいのだな」
そうするには、靜耀へ向かうためにこの黒智宮を抜け出さなければならない。
しかし、子瑞は召宝庫に両極器をそれぞれ配置していた二つの祭壇の間の床の下に王宮から抜け出す隠し通路があるのを知っていた。
それに、召宝庫から陰昇玉を盗んだ魁瑠は、王ではないので陽招鏡もろとも盗むと逆に内側にそれとはまた別の結界が入り口に張られ、そこから出られなくなるのだった。
そのため、魁瑠は陰昇玉しか持ちだすことが出来ず、彼がそこから出ていくと再び王しか解くことが出来ない結界が張られるのだった。
(余はこの黒智宮を抜け出すに召宝庫に向かうしかない。そやつにこのことは知らないと思うし、知られてはいけないのだからな)
そして子瑞は、この黒智宮を抜け出した後、靜耀の県令に匿ったままでは、王位の奪還は不可能であることは招致している。
靜耀に駐留された兵でも、自分がそこにいることがばれれば、禁軍が襲って来れば勝てるわけがない。
そのままでは、王である自分の命が危うくなる運命だった。最終的にどこへ向かわなければならないのか必死に思考を凝らしていると、一人だけ頼るべき者を思い出した。
(こうなれば、前代の大将軍、『
"流榮騏"とは、彼とは物心つく前の赤子の時以来会っていない。
なぜなら彼は、かつて魁瑠が就く前の冬亥国の大将軍だったが、その頃に彼は行方をくらませてしまったのだ。
自分で思いついたとはいえ、所在が分からない者を頼って良いのかという疑念が芽生え不安が募った。
しかし、自分が唯一頼ることが出来る当てが彼にしかいないとなれば、この状況で他には、この王宮内に誰一人ともいなくなる。やがて、恭啓もそうなるのだろう。
”流榮騏”という所在をつかめない者を頼るしかない子瑞は、顔に不安の色が増すばかりだったが、まだ他に頼るべき者はいたのである。
(余はこの黒智宮をこの王宮を抜け出す前に、陽招鏡を召宝庫から持ち出して、靜耀に向かう前に"
子瑞は、陰昇玉と同じように、陽招鏡にも幻世からそれを使って陽招士を転移させることが出来ることを知っていた。
この黒智宮を抜け出すことが出来たのであれば、まずは彼をこの四鵬神界に転移させなければ、自分一人では何も出来なかった。
子瑞はいつ伯黎に洗脳された禁軍がこの寝所に迫ってくるという身の危険を感じていたにもかかわらず、彼の聡明な頭脳を発揮させ、取るべき策を取っていたのだった。
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