害性伝承No.001 口裂け女
ファイルNo.001 口裂け女に関する概要
────禁則────
当ファイルを「文部科学省現代伝承調査室分局」の許可無しに閲覧・配布・複製することを禁ずる。
当ファイルの内容を口伝・文面・電子媒体によって流布することを禁ずる。
当ファイルの内容を調査する場合、女性調査員による単独の調査を禁ずる。
調査に当たり「役人」を使用する場合において、女性役人を使用することを禁ずる。また男性役人を使用する場合においても、男性役人が消失・絶命・損傷するまで調査継続を命ずる。
────PASSWORD────
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────概略────
・名称
【害性伝承No.001】
・符号名称
【口裂け女】
・害性度【Ⅰ~Ⅹ】
【レベルⅣ】 注1:当該レベルは20XX年4月調査時点で策定されたもの
・初年度観測年
【1980年代】
・当該伝承の概略
【害性伝承No.001、符号名称「口裂け女」は1980年代から観測されているヒト型の都市伝説、及び当該都市伝説の事象発露に際して発生する一連の現象の総称である。「口裂け女」は1980年代より市井に流布された害性伝承であり、現20XX年においても各媒体によって緩やかに伝承の流布が続いている】
【「口裂け女」として市井に流布されている当該害性伝承は主に夕方から夜半の都市部路地に出現する。様々な細部の差異はあるが、共通した特徴として女性の形態を取った「誘因形態」と被害者を現実世界より隔離する「結界形態」に分かれる。なお本ファイルにおいて「誘因形態」を甲Ⅰ、「結界形態」を乙Ⅰと仮称する】※1
【当該害性伝承の行動理念は一貫しており、主目的として成人女性を目標として顔面部への障害・及び頸部切断による殺害を企図することが調査により把握されている。だが第一・第二調査、および第一次制圧作戦における付加作戦においてもコミュニケーションの可否は確認できておらず、生存被害者へのヒアリングでも対話言語能力の有無すら確認できていない】※2
【当該害性伝承は出現時間帯に単独及び小数人で歩行する成人女性の前に甲Ⅰの状態で現出する。甲Ⅰは標的とした成人女性に対し甲Ⅰ直近へ誘因する芳香を発し、また目視や聴音において標的が催淫する肢体・発声を有する。芳香の採取は失敗しているが、肢体・発声に関してはマイク付きカメラによる観測が成功している】
【ただしこれらの録画・録音情報と生存被害者へのヒアリングにおいて判明した甲Ⅰの容姿の記憶スケッチングに大きな差異が見受けられること、第一次調査と第二次調査における甲Ⅰの録画情報の差異などから、標的が理想とする芳香・肢体・発声を何らかの方法によって投映していると目される】
【甲Ⅰの共通する特徴として、赤いロングコートを季節に関せず着用し、大型の市販品不織布マスク(型式不明)で顔面を被覆している。他衣装は録画及びヒヤリングにおいても差異があること、生存被害者への聞き取りにおいて甲Ⅰへの具体的な着衣例が記憶の錯誤・混濁によって判然としないことから身体的特徴と同様に標的が欲する着衣を不自然にならないように投映していると目される】
【甲Ⅰは標的を近傍への誘因に成功すると、日本語と認識できる何らかの不明言語を用いて「私、綺麗?」と認識できる音で標的へ質問する。この際に標的が質問を聴音する際まで、特徴的な芳香及び催淫作用のある発声は継続して観測されている。なお甲Ⅰの質問に対する否定的返答は被害者へのヒアリング、及び調査に使用した役人の言動記録などから「発声できない、判断できない、否定する気分が発生しない」など記録・記憶において行動が決断、あるいは完遂されたものは存在しない】
【甲Ⅰにおいて標的を近傍まで誘引し、標的が質問に好意的な返答を回答した場合において当該害性伝承は乙Ⅰへと変化する。具体的な要綱は以下の通り。
①甲Ⅰが「これでも?」と認識できる音を発生させ、同時にマスクを顔面被覆部より外す。
②甲Ⅰが耳殻近傍まで鋭利な刃物で切断された頬部を露呈させる。この段において、いかなる標的=被害女性においても等しく絶望的な恐怖を覚え、甲Ⅰから逃走せしめんと行動を起こす。
③甲Ⅰへの逃亡を開始するが、この段において既に乙Ⅰの展開は完了しており、標的は1980年代程度に製造された一軒家と思しき新築の建築物が並ぶ結界内へ誘因されている。
④甲Ⅰは逃走する標的への追跡を開始する。なおどのような反撃手段を事前に用意あるいは事前に所持していたとしても、乙Ⅰ内に誘引された直後に紛失・消滅することが確認されている。
一連の①~④への移行はシームレスに行われ、「甲Ⅰが乙Ⅰを展開する」のか「甲Ⅰが乙Ⅰの
【乙Ⅰへ誘因された標的は逃走を試みるが、どのような逃走経路を選択あるいは外部からの指示を参考にして逃走したとしても2分から3分前後で甲Ⅰが標的背後へと接近し拘束する。具体的数値は不明だが、映像記録による算出から標的を拘束する際に300Kgから400Kg程度の腕力を以て標的に抱擁し動きを制限せしめる。また生存被害者からのヒアリングにより、抱擁時に甲Ⅰの右手に大型の裁ちバサミが所持されていることが一致記録として確認できている】
【標的女性は甲Ⅰの抱擁により動きを制限され、極度の恐怖を保持するに至る。甲Ⅰは標的の頬部か頸部を大型の裁ちばさみにて切断せしめ、顕出が終了する。この際の恐怖は心因性ショック死を起因させるに至るほど強烈ではあることが生存被害女性へのヒアリング・継続的カウンセリングによって解明できているが、現在のところ出血性ショックや失血以外の死亡は認められていない】
【生存・死亡何れに関わらず被害者は甲Ⅰへの直接的加害によってのみ身体的な障害を得る。乙Ⅰが甲Ⅰのように直接的な加害をおこなった記録は存在しえないが、同時に乙Ⅰが甲Ⅰの機能を飛躍的に向上あるいは開放している可能性は否定できない】
────提言────
・当該害性伝承の緩やかな継続的流布を即刻停止するよう各団体へ圧力を強めることを継続的かつ長期的に実行すべきである。
・インターネット上に流布された当該害性伝承の存在を肯定あるいは暗示させる画像の消去及び掲載者の捕縛を短期的かつ可及的速やかにに実行すべきである。
・当該害性伝承の存在を秘匿し代替報道として「不審者情報の増加」、「成人女性の拉致・殺害事件の増加」という統計資料を作成、可及的速やかに報道機関へ流布・周知させるべきである。
・当該害性伝承は遭遇すると逃走困難でありまた極めて暴力的な害性伝承であるため上述の対策に加えて物理的・情報的・心理戦的な抹消作戦を可及的速やかに実行するべきである。※3
・当該害性伝承は同年代に爆発的な流布を経験した他の害性伝承と類似性・相似性が見られるため、「島郷伝奇創作研究所」における短期・集中的な再現実験が計画されている。
→再現実験にて女性研究員数名が■■■■■■■■■■ため、実験計画は現在凍結。当該事態における被害結果は破棄の上、本ファイルにおいては閲覧制限。
※1:甲Ⅰに関する調査報告は別紙記録(甲Ⅰ)を参照、乙Ⅰに関する調査報告は別紙記録(乙Ⅰ)を参照する事。
※2:第一次調査及び第二次調査における報告は付随する研究報告(Ⅰ・Ⅱ)を参照する事。また第一次制圧作戦の記録は付随する作戦記録(Ⅰ)を参照する事。
※3:第一次制圧作戦及び付加作戦においては物理特性による制圧を試みたが、分局所属部隊「
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