【鬱注意】惑星調査員Aの業務日誌
AZマスター
調査員Aと生命の星
第1話 調査員Aと生命の星(1)
星には星の
その
嘘偽りなく記録し報告する義務が惑星調査員にはある。
(惑星調査法第1条1項)
◇
「ふぁ~あ」
『おはようございます、■■様』
目を覚ますと同時に、自然な形に合成された女性の声が耳に入る。
「だから僕の名前は■■じゃない。
『まもなく、目的地の惑星S3-4に到着します』
「わかった、上陸準備をしておくよ」
次世代型調査補助用多目的専属AI
僕の私生活から業務まで多くのことを補助してくれる最高の相棒だ。
まぁ、一つ不満があるならば、やたら僕を本名で呼びたがる所だろう。
調査員として形式的に本名である■■を登録しているが、もうとっくの昔に捨てた名前だ。
Reyに
船の食糧庫からイチゴ味の栄養ゼリーを取り出し一気に流し込んだ。
栄養バランスは十分だが腹は満たされない。味は..5点かな。勿論10点満点で。
惑星調査員、それが僕の仕事だ。
300年ほど前、
【第二次大航海時代】
と呼ばれる時代が訪れた。
星間ワープ技術は人々を熱狂させ、人口爆発問題の救世主となったのである。
多くの企業や国家が他の銀河系の領有権を求め大量の宇宙船をとばした。
【彼方に進め、そして拓け】
それををモットーにした人類は身の丈に合わない程多くの惑星に文明を起こしたのだ。
しかし、大量に増えた文明惑星を完全に支配するには地球の力は弱すぎたのである。
結果地球は全文明惑星の六割弱を支配し、それ以外の国には条件付きの独立権を与えることにした。
その主な条件は、
・惑星間の戦争等の軍事行動を行わないこと。
・不定期に地球から訪れる惑星調査員を受け入れること。
(以下略)
つまり、僕の仕事は独立惑星に異常はないかをチェックする、
さながら定期健診のようなものだ。
「Rey、今回の惑星の概要は?」
『....調査員なのだから少しは予習をしておいたら如何ですか?』
注意されてしまった。
『はぁ....仕方がないですね。
この星では、【獣人】と呼ばれる人間の変異種が人間に労働力、つまり奴隷のように扱われています。』
「獣人?詳しいデータを出してくれ」
『了解』
腕時計型携帯端末(通称:WaD)から獣人に関するデータがホログラムとして投影された。
【獣人】
かつて過疎状態にあった惑星S3-4において、対応策として科学者が人間の生殖能力を高める人体実験を行った。その結果、一回の性行為において10人近い子供の出産に成功。さらに、運動能力が常人よりかなり向上していることが確認された。
しかし、知能面における重大な欠落が見らたため、科学者は彼らをより獣に近しい人間として【獣人】と名付け、労働力として利用している。
「なるほどね」
『上陸地点はいかがなさいますか?』
「前回の調査で判明している一番大きい人間の都市の近くでお願い、透明化はわすれずにね」
『了解しました』
「忘れないうちにっと......。
「
調査員は自分が調査員だとバレてはいけない。あくまで、その星の通常を記録する必要があるからだ。だからこそ、服装でバレるなど論外なのである。
『着陸しました。透明化も完璧ではないので、なるべく早く上陸してください』
ズサッ
一歩踏み出す。
今回の着陸場所は都市近くの森林、その中にある少し開けた場所だ。
「ん~~~久しぶりの生の酸素最高!!」
やはり安定した大地は素晴らしい。体感気温は26度くらいだろうか。
差し込む日光を浴びると一気に目が覚める。宇宙船内ではできないことだ。
自然をひとしきり堪能した後、忘れないうちに船を縮小する。
あらためて技術の発展に感嘆させられる。有機物以外なら全部ポケットに入る程度の大きさに縮小が可能であり、宇宙船は持ち運べるのだ。
しばらく歩き、そのまま、街に入ることができた。
綺麗にコンクリートで整備された道に、高層ビルが並んでいる。
道行く人々の多くは笑顔であり、服装もそれ程地球と変わらない。
反重力機構を組み込むことにより浮遊走行を可能とする
「ずいぶんと綺麗な街だなぁ」
これに尽きる。
今まで多くの惑星の都市を見てきたが、ごみが大量に落ちている都市や異臭のする都市もあった。
それらの都市に比べ、この街はしっかり清掃もいきとどいており、ポイ捨てなどを行う輩もいない。
暫く歩いていると街の雰囲気が変わりだした。
人の声がする方へ歩いてみると、多くの
食欲をそそる匂いが鼻を刺激する。
考えるよりも先に身体が屋台型空遊車の方へ向かっていた。
「そこを歩いているお兄ちゃん!串焼き食べねぇか?」
屋台の中年のおじさん店主に声をかけられた。
答えはもちろん決まっている。
「じゃあ、1本お願いします」
「まいどあり!!」
調査員は調査のため本部からその星の通貨を一定額渡される。
そのため、このような買い食いも可能なのだ。
もちろん食文化の調査のために。無論、私利私欲に使ってはならない。だから決して、朝食をゼリーで済ませることで、空腹状態のまま美味しいものを沢山食べてやろうなどという考えはない。
「美味しい....」
やわらかいお肉に濃厚なタレ、適度な焦げ目。
職人の業を感じる。大変満足。10点満点中10点、完璧だ。
一つ気になるとすれば、これは一体何の肉なんだろうか。
「あと、5本追加で!」
..........これは調査だ。
Reyから後で文句を言われるだろうが、これは人間の特権であり、長旅のご褒美なのだ。
とはいえ、ここまでの間で流石に気になったことが幾つかある。勿論、料理のことではない。
一つ目は、獣人を全く見ないことだ。奴隷のように扱われているとのことなので流石に一人ぐらいは見るかとおもったが、見当たらない。
二つ目、こっちが本命だ。
まったく同じ顔、背丈の少女を何人も見る。年齢は17~18ぐらいだろうか。
いや、何人どころの話じゃない。ここまで歩いている間に100人近く見た。
流石に気味が悪い。
こんなことは報告に無かったはずだ。
『そのような事実は確認されていません、あとさっきあなた串焼きを食べt....』
「そんなこといってる場合かよ!」
状況が変わった。
調査員は基本的に自分の身分を隠すことになっているが例外がある。
前回の調査とあまりにも状況が変化したときには役所に自らの身分を開示し、情報を請求することができる。
「串焼きの美味しい星、で終わってくれよ....」
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