攻撃力最強・速度最速・防御力最硬・魔法は一切使わない・ただひたすら敵を殴る・約500年無敗のマシン。以上が彼のスペックです。何年かかっても構わないので倒してください。
第30話 身につけようと思ってるんだけどね……
第30話 身につけようと思ってるんだけどね……
アテナは元気だろうか。まだ別れてから数週間しか経過していないのに、もうそんなことを考えている。
どうやらララにとってアテナは信頼に値する存在らしい。自分でも気が付かないうちに、アテナにベッタリと甘えてしまっていた。
とはいえ最終的にはぶっ壊すのだ。変な情は無用である。
さて魔王城の中を歩いて、第3会議室とやらを目指す。
「……真面目な雰囲気だなぁ……」
もっと荒くれ者たちの集団をイメージしていたのだが、魔王城の中はスマートだった。壁もキレイだし床もキレイ。通りすがる魔物も礼をしてくれる。思わずララも礼を返してしまったくらいだ。
魔王城の変化に戸惑いながらも、ララは第3会議室にたどり着いた。
「失礼しまーす」
意識して軽い声を出して、ララは入室した。
広い部屋だった。100人とか集まって会議をしても余裕がある。そんな部屋。
その部屋に魔物が一匹だけいた。全身を鎧で覆った兵士のような魔物だった。
「来たか」その魔物はイスから立ち上がって、「魔王軍への入隊を希望する者か?」
「一応そういうことになってるよ」ララは部屋に入りながら、「魔王軍って……こんなピッシリした感じだったっけ?」
「ここ数年で改革が行われたのだ。魔物とはいえ品格と礼儀が必要。そう魔王様が言い出してな。暴れているだけで尊敬される時代は終わったのだ」
真面目か。なに魔王軍が時代の流れに沿おうとしてるんだよ。そこは逆らってくれよ。そう思ったが、もちろん口には出さなかった。
鎧の魔物が続ける。
「しかし礼節を重んじた結果、実力を持った魔物が減ってしまってな」本末転倒にもほどがある。「礼儀も重要だが
、やはり最も重要なのは実力だ。実力ですべてを黙らせるような魔物が必要なのだ」
「魔王軍も迷走してるんだね」
「……そうだな……」面接官らしきこの魔物が、一番気にしてるんだろうなぁ……「とにかく……さっそく入隊試験を始めるぞ」
「それは望むところだけど……」ララは会議室を見て、「他の魔物はいないの? ボクだけ?」
ララが言うと鎧の兵士は顔をそらして、
「スカウトは難航している、ということだけ伝えておこう」
「あ……なんかごめん……」傷つけてしまったようだ。「……魔王軍も大変なんだね……」
「……平穏な時間が長かったからな……」争いはあるけれど、そこまでの争いではなかった。「腑抜けばかりが集まった。私も含めてな」
それは知らんけれど。
鎧の兵士は言う。
「さて……では試験を始めよう。試験の内容は2つある」
「面接と筆記以外なら大丈夫だよ」
「ならば安心しろ。1つは実技試験だ」それはあると思っていた。「私と戦い、勝利することができれば合格だ」
「おや……それは結構頑張らないといけないね」
目の前の面接官は見るからに強者だ。当然アテナほどではないが、油断していると負ける可能性もある。
ララは手を上げて、
「はい質問」
「なんだ?」
「ボクは技術者なんだけど……自分が作った機械を戦わせるのはOK?」
それがララのマイブームである。アテナに憧れて、同じように自律する機械を作ろうとしているのだ。
「お前がそれを制御できるのなら問題ない。お前自身の力と同義だ」
「了解」ララは背負っていた大きな袋をおろして、「とはいえ、どうしよう。カメオちゃんは重いから置いてきたんだよなぁ……」
とても持ち歩ける重量ではなかった。というわけでお留守番である。
また新たに作るという手段もあるが、入場券の期限は今日一日だ。さっさとケリをつけたほうが良いだろう。
「じゃあこっちかな」ララは袋からとある機械を取り出して、「バサバサトリッピ」
「……は?」
「この機械の名前だよ」鳥型の機械だった。「……ネーミングセンスは身につけようと思ってるんだけどね……」
毎回適当に名付けてしまう。しかも本人は別にこれで良いと思っている。だがあまりにも不評であることが多いので、なんとかしたいとも思っている。
ララはトリッピを起動しながら、
「このトリッピくん、結構強いからね。油断しないことだ。場合によっては即死するよ」
トリッピくんのテーマは暗殺である。油断している相手に飛び込んで即死させるのが目的だ。
とはいえ面と向かって戦闘を始めても暗殺などできない。面接官を殺してしまう心配はないだろう。
「期待しておこう。では、行くぞ」
というわけで、VS面接官のスタートである。
会議室はめちゃくちゃになってしまうかもしれないが、ララの知ったことではない。
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