第27話 苦戦中


 まさかの階層ボスに苦戦だ。正直予想外過ぎる。


 なにせ我が都市は【女神の四剣】というチート冒険者パーティーを抱えているので、戦力的に苦戦することはほぼなかったからだ。


 だがその【女神の四剣】が現状でボスの討伐は難しいと提言してきた。あのソールレイスがだ。


 なので俺は彼女を屋敷に呼んで応接間で話をすることにした。


「師匠、お久しぶりです。婚約はいつに致しますか?」

「いつもいたしませんが? それでどうして苦戦しているんだ? お前たちならドラゴンの階層ボスでも普通に勝てると思っていたのだが」


 ソールレイス率いる【女神の四剣】は万能のパーティーだ。弱点がまったくなく文字通り器用万能という理想。


 あらゆる点で優れているがゆえに、どんな魔物が現れようが弱点を突いて勝利できるのだから。


「勝てないとは申しません。ですが苦戦は免れません。確実な勝利のためには他にも優秀な冒険者パーティーが五組は欲しいです。あるいは師匠が」


 淡々と告げてくるソールレイス。彼女が天才である理由のひとつに、状況を客観的に正しく分析できる能力がある。


 そんな彼女が他の冒険者パーティーの助力を欲するということは、つまり必要と言うことだが。


「お前がそこまで言うとはどんなドラゴンが階層ボスなんだ?」


 正直に言うなら【女神の四剣】だけで階層ボスを倒せると思っていた。なのにさらに


「プラチナウムドラゴンです」

「……白銀竜か。なるほどな」


 プラチナウムドラゴンは白銀プラチナという特殊金属の鱗を持ったドラゴンだ。


 こいつはドラゴンの中でも上位種であり厄介な特殊能力がある。それは魔法に対する強耐性だ。プラチナウムドラゴンに魔法はほとんど効果がない。


 おそらく魔法A以上の冒険者パーティーでなければ、プラチナウムドラゴンに魔法での有効打は与えられない。いかに【女神の四剣】と言えども、まだプラチナウムドラゴンに魔法は通用しない。


 それは【女神の四剣】の武器がひとつ潰されるに等しい。


「プラチナウムドラゴンは弱点がない上に魔法耐性が高いからな。流石の【女神の四剣】も強みをひとつ潰されたら無双までは出来ないか」


 プラチナウムドラゴンの弱点というか、有効打になりえるのは物理攻撃だ。なので物理特化の冒険者パーティーほど有利になる。


 と言ってもプラチナウムドラゴンは物理に弱いわけではない。魔法に強すぎるだけで比較的物理が効くというだけだ。


 【女神の四剣】は物理特化冒険者パーティーにも負けぬ力を持つが、流石に物理特化で優秀なパーティーにずば抜けて勝つほどの力はない。


 やはりいくら言っても【女神の四剣】の優れた箇所は万能性だからな。


 というか本来なら万能なタイプのパーティーが、物理特化に物理で劣らない時点でおかしい。


「【熱き黒鉄の漢たち】もバランスがいい系だからなあ。物理特化で優秀な冒険者パーティーがいないし、現状だとお前たち含めて二組しか戦力にならないってことか?」

「その通りです。【熱き黒鉄の漢たち】以外の冒険者パーティーは役に立ちません」


 いくらソールレイスたちと言えども、二組でプラチナウムドラゴンを倒すのは厳しいだろう。


 ましてやどちらもバランス型の冒険者パーティーだ。バランス型の一番の利点は相手の弱みに付け込めることなので、こういう弱点がない系の魔物は相対的に相性が良くない。


「うーん。どうしようかなあ」

「師匠が手伝ってくだされば楽勝かと」

「なんとか戦力を増やす手立てを考えないとなあ」


 ソールレイスの発言は無視だ。


 一度でもこいつと一緒に戦ったりしてみろ。その後ずっと組まされる未来が見える。


「……ん? でも他にも強い冒険者が街に来てなかったか? たしか【闇夜の竜殺し】ってやつらが」


 ドラゴン階層は需要が極めて高いため、他都市からも優秀な冒険者が集まって来る。それでもプラチナウムドラゴンに通用するのはそうそういないが、それでもいることはいるのだ。


 その中の一パーティーが【闇夜の竜殺し】。かつてドラゴン階層のボスにトドメを刺したこともあるというベテラン冒険者パーティーだ。


 最近はあまり活躍を聞いていないのが少し懸念だが、多少衰えていたとしても戦力になると思っていたのだが。


「エリサ。【闇夜の竜殺し】の情報はないか?」

「あります。ドラゴン階層には潜っているようですが、階層ボスとは戦う気がないようだと聞いてます」

「なんでだ? 奴らなら実力も通用するだろうし、階層ボスに勝てればすごく儲かるのに」

「わかりません。私も冒険者ギルド長からそう聞いているだけですので」

「うーむ……ソールレイス、ちょっと聞きたいことがある。プラチナウムドラゴンを倒すには、あとどれくらいの戦力が欲しい?」

「優秀な物理攻撃を持つパーティーが最低二組は欲しいです」


 二組か。そうなると【闇夜の竜殺し】と俺の伝手を辿れば用意できそうだ。


「わかった。じゃあ俺が【闇夜の竜殺し】を説得してみよう」

「難しいと思いますよ」


 何故か少し顔をしかめるソールレイス。


「なんでだ? わざわざ竜階層に来ているくらいだから、儲けたいだろうし説得できるだろ。階層ボスと戦わない理由が危険とかなら、強制転移札を渡せばいいし……」

「先日、【闇夜の竜殺し】のリーダーと大喧嘩したので」

「お前のせいかよ!?」


 ちょ、ちょっと不安だけど説得できるかなあ……。

 



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魔物の王たる魔王様、テイマーになったらだいぶチートでした ~魔物の王が魔物を使役したら反則だし、なんなら魔物使わなくても最強な件~

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タイトル通りの無双作品です。

よろしければ読んでいただけると嬉しいです。

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