幕間1 リカ様と私
「お兄ちゃん……」
明日、私にまた新しい家族ができる。図書室の受付で気だるげに座っている彼だ。
私の血のつながった父はアメリカの血を引いた人でママ曰くとても自由な人だったそうだ。私が赤ん坊の時に離婚、それからママは2度結婚と離婚を繰り返している。
私が小学4年生の時できた新しいパパはとても優しい人でお医者さんをしていた。彼にはまだ幼稚園に通う小さな男の子がいて……弟ができた。
けれど、弟はママと顔を合わせるたび「ママじゃない! キライ!」と泣き叫びそれは1年経ってもおさまることはなかった。そのせいでママは園から虐待を疑われ、結局少ししてからまた家を出ることになった。
私はこの頃、転校するのが嫌で泣いて嫌がったことをよく覚えている。せっかく仲良くなったのに離れ離れになり、その上転校先の小学校ではいじめにあい、また転校した。この頃から、学校ではあまり口をきかない子になった。
中学生になると、私のことを「可愛い」といって仲良くしてくれる子が多くなったが、結局人間不信になって私の中で「リカ様」が出来上がっていったのだ。
私が中学2年生の時、ママはまた再婚をした。新しいパパ……
新しいパパは麗香ちゃんと私を分け隔てなく育てるために優しくしてくれた。「静香さんによく似てとても美人だね、将来は知的な女子アナウンサーやCAを目指すのかな? お父さんに応援させてくれ」と私をよく褒めてくれた。
それに彼と結婚したママは幸せそうで私はママが幸せになってくれるのがとても嬉しかった。
しかし、彼の娘である麗香ちゃんは違った。
「パパに色目を使わないで!」
と泣いて嫌がった。麗香ちゃんは幼稚舎からお嬢様学校に通っている生粋のお嬢様で、私のような子は嫌いなのかととても悲しかったのを覚えている。
けれど、それから数ヶ月して三国が家族風呂のある温泉に行きたがったり、突然私の部屋に入ってくるようになったりしてすぐに麗香が勘付いていたことに私も気がついた。その瞬間から三国が私に向けていた視線が気持ち悪くて虫唾が走ったのを覚えている。
ママに相談したら、ママはその日のうちに私を連れて家を出てくれた。
私さえいなかったら。私さえ、気に入られる容姿じゃなかったらママは幸せになれたのかな?
***
ママが連れてきた石橋優さんにあった時、私は彼がとても信頼できる人だと感じた。三国が私に向けていたようないやらしい視線ではなかったし、何よりも優さんはママにベタ惚れだ。
次は「お兄ちゃん」ができる。彼は信用できる人なのかな?
「あの」
私は本の整理をする彼に話しかけた。
印象が悪くならないように眉間に皺が寄らないように努力をしつつもじっと彼の目を見つめる。
少しでも、三国がしていたような目をしたら距離を置くようにしよう。
私に声かけられた彼はさっと目を逸らしてしまう。
「あの、その本。借りてもいいですか?」
とにかく会話を続けなくちゃ。とりあえず、彼が手にしていた本を指差した。
「あ〜、大丈夫ですけど……」
彼は本の表紙をまじまじと眺めてからボソッとつぶやいた。
「そう。ありがとう。早速だけれど、貸し出しの手続きをお願いしたいの。外で友人を待たせているの」
できるだけ悪い印象を与えないように柔らかい言葉を選ぶ。けど、どうしたって彼とは目が合わなかった。
恥ずかしがり屋なのかな?
もう、ママを私のせいで不幸せにしたくない、だから仲良くなりたい!
——けど、お兄ちゃんとどうやって仲良くなったらいいんだろう?
図書室を出た私はスマホで検索する。
【お兄ちゃん 仲良くする方法】
すると、一番最初に書籍がヒットした。
『突然義妹になった同級生と仲良くなった俺〜陰キャと学年1の美女が兄妹になるまで〜』
私は学年一の美女かはわからないけど……もしかしたら境遇が似ているのかも? ライトノベルを読むのは初めてだけど、口コミも良いに参考にしてみましょう。
家族ができるまであと少し。
今度こそ、幸せになるんだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます