第8話 槍
ガーランドから飛行訓練に関しては免許皆伝と言われたのち、
次は父がユーリと訓練を初めた
「ほう、ガーランド公が飛行術に関しては免許皆伝、私に匹敵すると言うとは」
しばしの間を置きクラウゼは言い始める
「おそらくはユーリ、お前はこのまま行けば最高クラスの飛行術を得るだろう、だが、竜騎士には3つの能力が必要だ」
ユーリは聞き入る
「竜騎士に必要なのは飛行術、そして槍術、最後は魔法だ、この3つが必須となる」
「魔法ですか?」
「ああ、中には竜騎士では3属性ぐらいの魔法を使う者もいる」
「魔法使い顔負けですね」
「いや、そうとも言えない、私はせいぜい、一つの属性の魔法をマスターすると良いと考ている、アレコレと手を出すとどっちつかずだ」
ユーリにはその意味が少し解らなかった
「そして、本題だ、槍術をこれから私が教える」
「父上、槍とは?」
「うむ、竜騎士はその名の通り龍との戦いが多くなる、そうなると、竜の堅い鱗を破る為に槍が基本的な武器になる、中には剣や弓を使う者もいるが、、、」
クラウゼは説明した後、自分の槍を取り出した
「うむ、私の槍、クイジナルだ」
それは一見、古ぼけた槍だが刃は研ぎ澄ませれて輝いている
ユーリは何かを感じる
「その槍、魔力をおびてますね?」
「ほう判るか?、この槍は風の魔法が仕込まれてるマジックアイテムだ」
「マジックアイテム?」
「見ていなさい」
そういうや、クラウゼは槍を森に向けて投げた
凄まじいつむじ風が起きて木がズタズタに切り裂かれ、命中した大木は真っ二つに割れた
「すごい、、、」
「まあ、これは10大神装級の槍の一つと言われ我がドラグノフ家に代々、伝わる物だ」
クラウゼが語る
かって、太古に地獄の魔王をとある国の王が召喚した、しかし、魔王は暴走して世界中に恐怖を与えた、その時、神々が龍と人々に魔王と戦う為に騎士には神聖なる4つの剣を、竜騎士には4つの槍を、そして魔法使いには4つの杖を渡したという
「これは、その4つの槍を模倣した物と言われる、風の力を持つウインダムという4大神装の複製品でもあるが」
ユーリは聞き入る
「他の槍は?」
「風の槍、ウインダム、火の槍、イフリタス、雷の槍ライガーン、そして地の槍ストーンガルム、もっともストーンガルムは戦乱で魔王に破壊されて現存してないと言われている」
クラウゼはユーリにクイジナルを持たせる
「、、、、重たいです」
「まあ、ユーリにはまだ無理かもしれない、子供用の槍がある、コレで練習したら良い」
しかし、その槍を持ったユーリは妙な違和感を持つ
「父上、これで皆を守れるのですか?」
「守る?」
「はい、自分には違和感が、、、」
ユーリの違和感は奇妙な物だった、自分には前世の記憶がある、そしてふと思い出した時に既存の槍では駄目だという感覚だった
ユーリは言う
「自分で槍を作りたいです」
これにはクラウゼも驚く
「槍を作りたいという竜騎士は、私も何人も指導してきたが初めてだ」
「父上?」
クラウゼはしばし考える、ユーリには奇妙な所があるのは感じていた
そしてそのユーリが槍を自分で作りたいと言ったのだ
これはなにかの運命だろうと
「良いだろう、腕の良いドワーフの知り合いがいる、明日はそこに行こう」
ユーリとクラウゼは、翌日、クラウゼの古くからの知り合いのドワーフの工房を二人で訪れた。ドワーフは職人技に優れ、武器の製作に長けた種族である
そこにはずんぐりとした如何にもドワーフのような職人がいた
「久しぶりだな、ドギー」
「おう、クラウゼか?どうしたクイジナルのメンテナンスか?」
「いや、ちょっと変わった依頼でね、槍を作りたいという弟子を連れてきた」
「槍を作りたい?、変わった竜騎士候補生だな?、で、何処にいる」
ユーリが挨拶する
「ユーリと言います、クラウゼの息子です、槍を付くって見たいんです」
ドギーの動きが止まる
「まてまて、子供じゃないか?、それにお前の息子は竜騎士になるんじゃないのか?」
「それが槍を作ってみたいと言うんだ、だから連れてきた」
ドギーはしばし、ユーリを見つめる
「まあ、クラウゼの頼みなら槍を作る工程を見せるぐらいは良い」
ユーリは礼を言う
「ありがとうございます、ドギーさん」
「しかし、槍を作りたいなんて変わった竜騎士の子供だな?」
ドギーの問にユーリは答える
「僕にもよく解りません、でもこの世界であたらしい槍を作らないといけないような気がするんです」
「あたらしい槍?、普通は槍の職人になるには10年かかるぞ?」
「でも、僕は自分で自分用の槍を作りたいのです」
ドギーはしばし考えて答える
「変わった子供だ、だが、私も最初に槍を作ったのはお前ぐらいの年の時だ、いいだろう、工房に来ても良い」
「ありがとうございます」
「ただ、私は厳しいぞ?、仕事の邪魔はするなよ?」
「かまいません」
ドギーは暇な時にユーリに基本的な鍛錬や技術、やりの構造を教えた。
ユーリもドギーの話や槍の制作風景を熱心に見る
ドギーは槍や剣を作る時にまるで魂を込めるかのごとく
ハンマーで鍛え上げる
ユーリはそれを見てこう思った
「魂を叩き込めている?」
「ああ、強い武器は職人が魂を叩き込むように叩き上げるんだ、お前は良く見ているな」
「はい、勉強になります」
ドギーはクラウゼに答える
「面白い子だ、明日はナイフ作りからヤラせてみようと思う」
クラウゼは礼を言う、そしてユーリにも言う
「何事も初めたら最後までやりとげるんだぞ?」
「はい、父上」
こうしてユーリの槍作りは始まった
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