ミウくんなんで?

弓長さよ李

はじめに

いきなりこんなものを送りつけてごめんなさい。

鹿野かのさん経由でとはいえ、迷惑ですよね。


まずあいさつなんですけど、俺の名前は若松青葉わかまつあおばと言います。鹿野さんは大学のOBで、授業の関係でお話をしに来てくれた関係で知り合いました。


そこで、すこし怪談の話になって、俺が自分の個人的な話を相談したら、先生を紹介してもらったという流れです。


送らせてもらったデータの中身は、俺の幼馴染で親友の、白月しらつきミウが亡くなって、2年くらいしてからクラスメイトたちに取材したいいくつかの幽霊話です。


これを送ろうと思ったのは、鹿野さんに紹介されたのもそうだし、先生の本を読んだからっていうのもあります。


先生の作品、この前初めて読んだけど怖かったです。いろんな実話怪談みたいな話を集めてて、自分も巻き込まれそうになったこともある、って言ってましたね。それでも話を書き続けてるのって、すごいです。


怪を語れば怪至るって言葉、俺は正直信じられない部分もあるけど先生が言うならそうなんだと思います。


ミウくんの幽霊を見た、という話は高校卒業前くらいから聞いていました。話していたのは、ミオくんが亡くなった時の2-Aのクラスメイトたちで、それは多分冗談とかではない雰囲気があったと思います。


ただ、俺はまだ気持ちに整理がついてなくて、そういうのを聞くのを拒否していたんです。


ミウくんの死をネタにしやがって、という気持ちもありました。あんなに腫れ物に触るみたいな扱いだったくせに、いつのまにか死んだ人は話のタネなんだ、みたいな。


ひいじいちゃんが死んだ時、散々泣いてた母親が告別式で思い出話をしながら笑ってたのと、ちょっと似た気持ちでした。


でも、多分そうじゃなかったんです。


みんな、本当にミウくんの幽霊を見ていて、本当に怖がっていたんだと、今は思います。


時間がたって、ようやく色々調べる気になりました。卒業した後だったから連絡を取るのも大変だったし、調べている途中で、話を聞く前に死んでしまって何も聞けなかったクラスメイトもたくさんいます。


だから、かなり部分部分というか、そういう感じになってしまっているかもしれません。


俺は文章も下手だし、俺の想像も入ってて、だから一応最初にごめんなさい。


話は、聞いた順に並べてあります。時系列順ってやつです。


でも、多分先生だったらわかるかもしれないって。


最後まで読んで、どうしたらいいのか教えてください。


あと、最後にひとつ


俺は未だに、ミウくんの幽霊を見ていません。


いろんな話が集まったのに。


いろんなやつが見てるのに。


なんでなんでしょうね?

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