社長的に言えば、宇宙人NTRって要は特撮エロですか?②
『しかし、凄いセットだな…それにお前の着ぐるみ…これ、全部でいくらかかったんだ?』
腕を組みながらユカを包んでいる直径二メートル前後の触手球体を眺める社長。
この人は意地でも宇宙の事、僕の話を信用しないから…その話をすると怒っていきなり『大人を馬鹿にするな!』とか言って叩いてくるので適当に答えた。
「大体……えーっとそれで…一つ百万ぐらい?で『百万!?お前馬鹿か!?あっ!遺産使っただろ!?育子婆さんの遺産!お前外道だな、養子に入り遺産でエロか……このクズめ』
勝手に決めて勝手に蔑まれた。僕には辛辣なんだよなぁ…とにかく……
「とにかく…ちょっと話を進めても良いですか?」
『あぁ、そうしろ。最高のプレゼンをオレにしろ。そんだけ金かけてんだ、素晴らしいければクソサトルに追加の金を出させる。そうだ!お前の企画とアイツの金で、あの娼館獣共をデビューさせてやろうぜ』
また勝手に…クソサトルとは現場監督の事だろう……しかし、現場監督も大概で、2回浮気する人以外はいつも違う女の人と歩いているからなぁ…
違う違う、とりあえずユカに、何があったのかを知りたい。
さっきから感じる念には後悔しかないからだ。
様子がおかしくなったのは、高校卒業前……スカウトをされた辺りからだ。
そして僕には、洗脳とかそういう事は出来無いし、知識は無い。
僕が出来るのは心を溶かし、弱らせ自ら喋らせる事しか出来ないので……ずっと敏感なウルトの神経を刺激し続け、心を折り、防専に入った後からの事を喋らせる様に誘導していた。
『ゼァ…ァァァ……エアアア』
ユカは語り出す、ウルト語で。
自らの想いを…そして……え?
スパアァァァァァンッ!!
「社長!?やめて下さい!なんでユカ殴ったんですかっ!?」
社長がいきなりユカの顔面を掌底で殴り、外骨格の頭部パーツを粉砕した。
しかし……社長に殴られたパーツは核が分子レベルまで粉砕され、元に戻らない…多分……二度と再生しない。
再生不可の超振動の一撃、こんなのまともにくらっ……
『いや、何言ってるか分からないから。キャストが何言っているか分からない事でストーリーが一ミリも分からない物語って何だよ?WEB小説だったら大変な事だぞ?』
まぁ確かに…社長からすればそうですが…WEB小説?
『良し、じゃあキャストからストーリーを語ってもらおうか?ちなみに安いテンプレはやめろよ?大作を頼むぜ?』
いや……ぜ? じゃなくて…
『ワタシは……防専に入り……そして………』
僕らのやり取りを無視して、精神がグラグラのユカが話し始めた。
それはヒーローを目指し、現実を知ったユカの話だった。
ユカはスカウトされ、インターンの形で放課後に防専に通っていた。
体験入学ではなく、通っていた高校に話しを通し特別授業…戦闘訓練だけ参加していた。
確かに以前聞いた時、大半の生徒がそんな感じらしい事は言っていた。
入学して本格的に活動するそうだ。
ユカは防専の成績は良く、学内ではヒーロー適性がトップクラスだったそうだ。
適正とは本人の力ではなく外界の力。
例えば、痺れる程度の電気を流す、強固な肉体や熱を持つ皮膚、異常な視力、その程度の能力を防専の技術で上乗せしたり、倍加させる。
ユカの場合はウルトの力を強化していたんだろう。
最悪の場合、強化スーツが不要で、身体能力は劇的に上がる珍しい能力は前線で活躍出来る力として重宝されたそうだ。
高校卒業後にはすぐにチームを組んでリーダーとして訓練に励み、敵対する異能と戦う事になった。
入学して自分を信頼をする仲間達と出会った。
今までヒーローになると言って笑われていた、高校では口に出さずに生徒会活動をしてユカ自身の能力で交友関係を築いた。
『お前はヒーローとしての才能がある!特に心は既にヒーローだな!!』
既にヒーローとして活躍している先輩に認められた……瓜生先輩……嬉しかったな。
こんな自分が、先輩ヒーローに認められる歓び、そして、ヒーローとして同年代に羨望の眼差しで見られるのは初めてだった。
『本当に…嬉しかったんだと思います…ヒーローとして認められた事は一度も無かったから……でも、浮ついて、調子にのって、周りが見えていなかった……と思います』
そして…初めての実戦で事件が起きた様だ。
――――――――――――――――――――――
再度、緑の化け物に捕まり、いつも違うのは、この化け物の目的が分からない事。
何かを語り、私を、知ろうとする………
頭がボヤける、私の記憶、何が起きて、何をした?
あぁ…あの時、私はチームリーダーとして『大聖堂』と言う壊滅した筈の集団を追う事になった。
駅ビルの地下を隠れ家として、いつか来る革命の火が燃える日の為に力を蓄えているという。
地下駐車場に入り狭い通路を行く。
車がすれ違える程度、二台分程の幅のある螺旋状の通路を走る。
『本部!目標確認しました!皆、準備は良い!?』
『大丈夫!ユカ!後方から援護する!』
地下に下る、車の走る通路にそいつらはいた。
白い人型の物体、二メートルは無いが大きめの身長に、戦う為の筋肉がある能面の様な化け物が二体。
見た事がある、それは高校時代にクリスマスの夜に見た化け物。
緊張したが、この日の為に…昔からこんな日の為に、格闘技を習っていた、努力をしてきた。
防専に入って本格的な戦闘術も学んだ。
そしてこの力を最大限に活かす方法、石と一体化する事により自分の肉体を皮膚から変える、そして肉体強化率を上げる術を覚えた。
今回の為に学校から強化スーツも支給され、万全の筈だった。
「皆、予定通り私が先行する!指示系統はミナトに任せる!それでは援護!ハァああアアア!!」
緊張している皆を鼓舞するためにも、私が……
石と100%シンクロするとマスクが現れ顔と頭部前面を覆う、髪の色が変わり喋れなくはなるが、更に力が漲る。
『ユカ、フルスペックモード【IVY】を確認、射撃目標、捕捉!これからえんッ!?グガアアッ!?』
背後でドンッ!ドンッ!と連続して鈍い音がした、即座に振り返る。
仲間達が通路いっぱいのサイズで走る、2台のトラックに轢かれていた。
10人程の部隊、仲間達全員が吹き飛び、巻き込まれ、倒れ動かなくなる。
そのまま後ろに吹き飛ぶ仲間や衝撃で私より前に飛んでくる仲間達。
強化スーツを来ていると言っても生身であれば即死する様な速度で、そのまま私に突っ込んでくる!
「ゼアアアアッ!!!(やめろおおおおお!!!)」
私は即座に振り返り2台のトラックの真ん中に立った。エネルギーの配分は考えない!
全力で抑える、止めないと…前に吹き飛んで来た瀕死の仲間達、トラックに引きずられている仲間達を見る、もう一度轢かれたら多分…
ガッッザザザザザーーーー!!!
トラックを両手で1台づつ押さえ込み、速度が緩まった時に気付いた、私の身体中に巻き付いている何か……そして、先程まで追っていた白い怪物が真後ろに…その拳が、足が……隙だらけ、力を前面に使い切り強化の弱くなった背面、私の頚椎と足を破壊した。
「イアアアアアアアアアアアアアアア!?ガアッッ!?」
車は止まったが、足が動かない…折れている…いや、首をやられたせいか身体が痺れて動かない。
鎖の様なものでがんじがらめにされ動きを拘束され、壁に叩きつけられた。
トラックが止まると同時に同じ様な人形の白い怪物が降りてくる。
計四体……シミュレーションで…私一人では万全でも二体が限度だった。
それを瀕死の仲間を庇い、自らも致命傷を負い拘束された状態で…作戦失敗と判断し、すぐに上階で待機している別部隊に救難信号を出す。
怪物達は何も喋らないが瀕死の仲間の中から選んでいる様な動き、そして私を何処かへ攫おうとする。
私のせいで仲間達が……そう思ったらこのままではいけないと激しく暴れた。
私に注意が行くように……そんな時に別働隊の声が聞こえた。
助かったと思った時…………
私だけが近くのマンホールに引きずり込まれた。
そこからは良く覚えていない。
ただ、彼等…彼女ら?は、私を女として見ている事は分かった。
動かない身体で暴れ抵抗したが、同じ怪物が更に五体いた、何処かで諦めていた。
ただ、変身さえ解かなければ傷は全て治る。
意識を失わなければ変身は解けない。
化け物たちは私の姿を見てか、滅茶苦茶をした。
壊す様な、暴力的な行為によって私の初めては奪われた。
それでも、その時は無我夢中で耐えた、いつか誰かが助けてくれると信じて。
助けてくれれば、変身を解かなければ、壊された身体は、再生する。
もし解ければ取り返しがつかない事になる。
それでも、心も折れかけて、もう助からないと思った時に聞こえた。
「タスケテ!オネガイ!ハヤクウウウウ!!」
『相武!どこだ!?助けにきたぞ!』
瓜生先輩………何でここに…………
『仲間を見捨てられる訳無いだろ!』
私は…初めてヒーローはいるんだなと思った。
仲間達と共に私を救いにきたのだ。
そして高校を卒業したばかり、どん底に突き落とされた私の心を、瓜生先輩はずっと寄り添い、励まし救ってくれた。
それから、先輩と二人でトレーニングに励んだ。
心を癒し、身体を鍛える。先輩の指導で実感する。この人についていけば間違いないと。
『君の力は多分……愛、身体の繋がりを知らなければ強くなれない。どうだ?俺を信じてくれないか?』
「はい!瓜生先輩なら構いません!!」
私を救ってくれたヒーロー、瓜生先輩。
私は…彼を信じ……彼を受け入れた。
―――――――――――――――――――――――
『お?いや、何でだよ。この女、頭おかしいか悪過ぎだろ。それにお前が一切出てきてな…………』
「社長!ちょっと黙ってて下さい!お願いです!ちょっと今は!」
『うお?急にキレるなよ。分かった、最後まで聞いてやる。クソ話だったら引っ叩くけどな』
僕は社長が何かガタガタ言ってるが何だかイライラして良く聞いてなかった。
そしてユカは…
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