地球にはNTRと言う文化がある事を、私は知った

クマとシオマネキ

人間って良いな

悔しいNTRにホカホカのザマァ

地球・日本の良き所、どんな事だって捻じれ、そして拗れる

 少しイライラした感じの彼女が言う。


『何?何か言いたい事あるの?あるなら言ってよ』


「いや、何でも無いんだ。ただ、最近忙しそうだね…あんまり会えないのが寂しくてさ…」


『うん…そうだね。でも防専(不知火防衛専門短大)に入った時から分かっていたし…それに宇宙ソラは暇だからそう感じるだけでしょ?私は忙しいんだから』


「あぁ…うん、まぁ…」


 久しぶりにデートと思ったらコレだ。

 僕は今、先ほどまで説教されていた。

 そんなんで良いのかとか、高い目標を持てだとストローで指されて言われていた。

 そして、それがロールしていた、ぐるぐると。


 目の前にいる女性、相武あいぶ 由佳ゆか

 …僕と同い年で、19歳。

 同じ小、中、高校に通っていた、同級生だ。

 親しくなってからはユカと呼んでいた。

 彼女が私服で短パン履いて登校帽子を被っていた時から知っている。

 小学校の時から夢を持っていった、皆に馬鹿にされてたけど。


―私がヒーローになって、ソラを守ってあげるよ!―


 今は黒髪ロング、レザーに似た光沢のある特殊素材の防専の制服…と言っても特撮のコスプレか?と言うぐらいの格好で…

 ジャケットの丈は短く、その下にはハイレグのエナメルみたいなハイネックレオタード、パッツンパッツンのミニスカだ。指出しグローブに変なブーツを履いている。


―皆を守るヒーローになる為には、頭も良くないと!身体も鍛えないと!―


 2年制の不知火防衛専修短大、通称【防専】。

 数年前に日本を揺るがす大きな事件があってから国を守る為に、特殊技能のある若者を保護し育てる為に作られた学校だそうだ。

 一般なら防衛大学だが、特殊な才能を持つ人、選ばれた人間が通う謂わばエリートの集まる学校らしい。

 由佳は高校三年生の始まりにスカウトが来た。


『良い?宇宙そら?私達は束の間の平和にいるんだよ?今のうちにやれる事をやらないと…』


 そんなこんな話をファーストフード聞かされている僕は、大地だいち 宇宙そら…高校卒業の頃に育ての親が亡くなった為、生きていく為にフリーターになった。

 

 彼女曰く、束の間の平和を、僕は怠惰に過ごし、趣味の小説ばかりを嗜み、と言ってもネット小説をぼちぼち書いて、ネットで同好の士とキャッキャウフフしてる程度の人間だ。

 そもそも読んでいる事は知っているが書いてる事は、彼女には言ってない。


『小説や漫画読んだりは良いけどさ、もっと現実的に考えて…聞いてる?…だからペラペラ…もっとペチャクチャペチャクチャ…分かった?』


「んん、聞いてるよ…分かってるよ…」


 彼女の言葉を聞き流す。分かってる。

 彼女は日本…いや、地球を守る為の訓練と言う、大義のある事をしている。その事に反論は無い。

 いくら今は平和だからといって、その為に日夜努力している言われれば…何も言う事は無いから。


 言われている僕は日々の生活の為に知り合いの建設会社でバイトして、その日暮しな生活をしている。

 亡くなった母が懇意にしていて、昔から知っている人が社長とオーナーだが、建設会社とは名ばかりの元暴力団が母体で滅茶苦茶な会社だ。

 社長との距離は近い…だからこそ終わってる会社だと言うのがすぐ分かる。


 社長は悪い人?では無いと思うが…一般的にはクズ(言い過ぎた)だから楽が出来る良い会社でもあると思う、未来はないけど。

 ぬるま湯に浸る僕にいつも彼女は憤慨している。


『だからちょっと考えたら…あ!?時間…約束…作戦の時間もあるし…とにかく帰るね…何かさ、公園とかファーストフードだけじゃなくて…もっとちゃんとした場所でデートしたかったんだけど…』


「ごめんね…ちょっと持ち合わせなくて…」


 本当はお金が無い訳じゃない…だけど話があるって言って駅前で待ち合わせに来たら今何やってるの?から始まり、怒られている内に時間が来た。


『はぁ…もう良い…ちゃんとしてよね…じゃないと…』


 最近…本当になんで付き合ってるのか良く分からない…

 彼女とは高校二年の初めに付き合って、キスまではした。

 元からヒーロー的な思考のある彼女だったから周りからは煙たがられていたな。

 しかも結婚まで性交渉しない事を公言する様な変わり者だ。

 だから外見は良くても誰も告白しなかった。


―結局、ソラしか私の事、見てくれなかったかぁ…でも嬉しいな!ずっと私の事、見ててくれたんだもんね―


―私はソラだけだよ?だって運命を感じるから― 


―チュッ♥いきなりゴメンね?だって好きが溢れちゃったから―


『はぁ…じゃあね、ソラ。バイバイ』

「うん、ユカ…またね。連絡するね」


 最近、高校の頃や、付き合ったばかりを思い出す。

 ユカは真っ直ぐで、正しく元気過ぎたから、周りに煙たがられていて…そんなユカを僕はまるで漫画のヒーローの様にカッコいいと思っていた。

 だから応援していた。

 だから自分の生き方に不安を感じていたユカを心から応援した。それが嬉しかったらしい。


 そう、どんなに否定をされても、それでも真っ直ぐ、進み続けた。


 気付けばユカは防専からスカウトが来るまでになった。

 そう、彼女は真っ直ぐに自分に正直に進んでいく。


―防専に行ったら寮だけど、休みの日は絶対会おうね!メールも沢山するから!―


 防専では可能な限り処女でいなければならないとかで。

 何やら特殊な力と言うのはそういう条件があって発動する事が多いらしい。

 だから彼女とはキスまでだった。


―学校卒業して…落ち着いたら…絶対しようね♥―


 しかし…そんな約束が果たされる気配は無い。

 今では会う約束も僕から。

 そして、実際は僕からしか連絡をしない。


 もう、僕に対してユカの心が無くなって来ているのが分かる。

 昔の真っ直ぐな彼女なら、何故か教えてくれたかも知れないけど。

 今はそれすらも語らない…彼女の住む世界はまた違うのだから、語られても分からない。


 早足で去っていく彼女を見ていると思う。

 彼女は変わった、きっと強くなった。

 僕は変わらない、変わったかも知れないけど…

 彼女の思う変化とはズレて、拗れて、すれ違い


 それでも諦めないのは、

        僕はきっとまだ彼女の事を…


 俯いていると店員さんが声をかけてきた。


『先ほどのお客様、お忘れ物ですよ?』


 小さなポーチを渡される。ユカのポーチだ。


 まだ間に合うだろうか?急ぎ歩いて行った方へ、多分駅だろうと向かう。

 約束があると言っていた。急いでいるかも知れないと走る。


 残念ながら駅までの道に彼女はいなかった。

 

「間に合わなかったか…何処までも、僕はグズだなぁ」


 この時、何故『忘れ物してるよ』…と、電話しなかったんだろう?

 何処かで疑っていたのか、もしかしたら…と心で思っていたんだと思う。

 約束とか、待ち合わせとか、嫌な予感がしていた。

 そして最悪の予想は的中する。


 駅から家に向かって踵を返し、帰ろうとするとロータリーに高級車が止まっていた。

 そこで待っていたのはパリっとしたスーツを来た中年…

 その高級車に乗り込もうとする…ユカ…


 声が出ない、柱に隠れる、何故僕が隠れるのか?

 訳が分からないがバレないように、男の顔が分かるように斜め正面に移動する。


 車の中でユカと談笑する、少し年上と思われる男。

 ここ最近、見なかったユカの笑顔…そして…


 そして…腕を回し…キスをした……

 時が止まる、唇を合わせる時間は数秒、だけど互いの舌が見えた…

 車はブロロロっと高級車らしい低い音を出し消えた。

 

 「僕だって、き、キスぐらいした事あるぞ………」


 少し強がってみる…舌入れてないけどな…ただ、今の感じだと…もしかしたらその先も…

 いや、防専は処女じゃないといけない筈だ…


「はぁ…これが…この気持ちが……いや、違うかな…」


 でも、少し前から冷たかったから多少悲しみが緩まったかも知れない…それがユカなりの優しさなんだろうか?


「ユカとはもう終わりなのかな…もうちょっとちゃんとしてれば…いや無理か…」


 日本を守るエリートと、その日暮らしのフリーター、元から難しいよね…

 気持ちが沈んでいると電話が入る…バイト先からだ。


『おい!ホラ貝!夕方から来い。オレは帰るから早く!』

「いや、僕その…今ちょっ『相談か?相談なら聞いてやるから、早く来い!レイドが!』


 バイト先の社長と呼ばれる怖い女社長…全然話を聞かない…ちなみに僕の話を全部小説の話や嘘だと思っており、本当なんです…と言ったら『ソラじゃない、ホラ吹きのホラだ』と酷いあだ名をつけられた。


 まぁでも少しは気が紛れるかなと思い行く事にした。

 社長に相談してみよう。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る