追われている最弱四天王
レイヴンは、息を切らしながら森をかけていると、何やら人の気配がする。
木の裏に隠れて様子を見ると、二人のインプが呑気に話しているところだった。
「全く、四天王様も人使いが荒いだわさ」
「レイヴンを見かけたら報告しろだなんて、そんな簡単にいくわけないだわさ」
インプ――下級悪魔。小柄な体と、赤い肌、そして背中に生えた小さな翼が特徴的な悪魔だ。
そのインプ達は何やら愚痴をこぼしている。
「でも、四天王様はどうしてレイヴンなんかを探しているだわさ?」
「わからないだわさ。どうもレイヴンを捕えろと言う魔王のおふれだわさ。だから、他の魔族も捜索しているだわさ」
レイヴンは、インプの会話を聞きながら疑問に思う。
まず一点。魔王は死んだはずではなかったのか?
もう一点。死んだはずの魔王が、なぜレイヴンを探しているのか?
一瞬、魔王がレイヴンの能力を高く買っており、まず真っ先に合流させたいという楽観的な考え方もしたが、少なくともこれはあり得ないだろう。
何故なら「捕える」と述べている以上、レイヴンをなんらかの形で生け捕りにした上、殺さずにとどめておきたいということが予想できる。
その目的が何であれ、現在の魔王軍に対して、簡単に姿を現すことはリスクが高いことがわかる。
何故なら、今の魔王が、レイヴンの仕えていた魔王が解らぬ以上、捕まったら何をされるかわからないからだ。
レイヴンは『封魔と使役の腕輪』を憎たらしく見つめる。
この腕輪が無ければ、最弱とはいえ、身を守りながら部下を集めることが出来るというのに……。
しかし、魔王軍が「レイヴンを捕える」ということを目的にしており、そして、自身の力が封じ込められている以上、簡単に姿を現すのは得策ではない。
そう判断し、レイヴンがその場から立ち去ろうとした、その時だった。
パキ、パキパキ。
レイヴンは不用意にも、足元の枝を踏んでしまったのだ。
「何か物音がするだわさ!」
そう言いながら、インプは手元にある三又の槍を構えて、物音のほうへ駆け寄る。
レイヴンは急いで、その場を離れる。
インプはレイヴンの後姿を見て、叫ぶ。
「いただわさ!レイヴンだ!」
「本当にいただわさ!報告すれば、四天王様に褒められるだわさ!さっそく報告するだわさ!」
そう言いながら、インプはその羽を羽ばたかせ、急いで四天王のところへと戻っていく。
レイヴンは自分の浅はかさに後悔した。
とはいえ、もう起きてしまったことは仕方ない。ここは冷静に対処しよう。
悪い方向ではあるが、自身が置かれている立場が分かったのだ、それだけでもいいではないか。
レイヴンは、そう自分を納得させて村へと戻ることにした。
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