第11話

 四人を倉庫へ監禁してから一週間。


 行方不明として捜索されないように、四人の親と学校側への対処が必要だったが、それに関しては問題無く完了した。


 少し手を握り『襲われた、警察とか大事にはしたくない、だけど少し怖い目に合わせたい』そう言って説得をすると、寧ろ喜んで差出して来たくらいだ。


だが問題はそこではなかった。


「………出ないな」




 あれから霧島は学校に来ていない、そして電話も繋がらない状態になっていた。


登校して来ないのは、会わなくて済む事になるので有り難いが…倉庫へ行かないようにする為にはそうも言ってられない。


「………ちっ」


 上手くいかない状況に舌打ちをする。


「っ…」

ガタッ!


「……あぁ、お前らにじゃない」


 俺の様子に反応した、理性が崩壊していない山野ふうかにそう言う。


 その他三人は未だ落ち着きを取り戻さず、起きては乱暴に拘束を外そうと藻掻き、襲おうとそれまた乱暴な言葉で脅そうとしてくる。


「……やはり自然には落ち着く事は無いのか?」


 前回では、一週間もしたら理性崩壊後もある程度は落ち着きを取り戻していたのだが……こいつらは寧ろ酷くなっている様に感じる。


 原因は何なのか、三人同時にこうなった事には理由があるのか。


 もし、何かウイルス的な感染で理性崩壊が起こるのであれば、一週間も近くでにいた彼女が平気なのはおかしい。


「…………………」


 今日の観察記録を手帳に付けながら、山野ふうかを見る。


 彼女は大人しく、他の三人への食事や排泄行為の世話を縛られた状態のまま手伝ってくれていた。


 そして、今起きている三人の状況と俺が何をしているのかを何となくだが把握したのか、彼女も注意深く三人の様子を探っているようにも感じた。


「……わからないな」


 科学者でも心理学者でもなく、知識としては社会人として出て来たばかりの一般人である自分が、これ以上どうしようもない事は分かりきっている。


 幸いと言っていいのか、彼女等が元に戻る様子は無い為、後回しにして知識のある人物を探した方がいいのかもしれない。


 それでも、宛はあるにはあるが今はまだ探しに行ける様な近さでもない。

唯一、近くにいる人物もまだ学生でそこまでの知識は身に付けていないだろう。


「……一応連絡はしておいて、他に探すしかない…か」


 その人物が通う学校は把握している。

学校へ手紙を数件送るのと、利用しているSNSで連絡をすれば、怪しみながらも返事をくれる可能性はある。


「よし」


 そうと決まればと、俺はフウカへ食料の入った袋を渡して倉庫を出る。

彼女だけ、逃れなくても物を自分達の口へ運べるくらいに縛っているから、もし数日ここへ戻ってこれなくなった時でも平気だろう。





…………………………。








 とある学校の図書室。

静かな空間で一人、本を読む生徒がいた。


コンコンッ


「…どうぞ」


 入り口の扉を叩く音に返事をすると、教師が入って来る。


「また、頼廉さんにお手紙が来ていましたよ」


「差出人はどちらでしょうか」


 教師が持つ手紙は小さく、普段数多な大学から送られてくる物とは違うように感じた。


「それが、差出人は分からなくて…念の為校長先生に中を確認して頂きましたが危険なものではなかったので一応渡しておこうと思って……どうしますか?」


「………受け取ります。持ってきて頂きありがとうございます」


「いいえ、それでは私は職員室に戻りますね」


 どんな内容なのか、今の教師に聞いてもわからないだろうと、内容だけ確認する為に受け取ることにした。


 封を開けて、一枚の手紙を取り出す。


「……はぁ…イタズラね」


 書いてあった内容は、匿名男性から私を雇いたいというものだった。


「これが本当なら……いいえ、有り得ないわ」


 よくある詐欺広告の様に、女性を誘い込む為の罠をぶら下げた文章。


「URL……校長はきちんと検査したのかしら」


 『……宜しければ連絡をお願い致します』その一言と一緒にURLが載っている。

見覚えがある所を見るに、SNSのユーザーリンクだと感じるが…そんなもの誰が信じるのだろうか。


「迷惑だわ…………」


 手紙を丁寧にかばんの中に仕舞う、学校で捨てて誰かが拾ってしまう事が無いように持ち帰って処分する為だ。






………………………。




 夜が来て暗くなった倉庫の中、理性が崩壊していない彼女は考えていた。


「……にてる…」


 ウチは、横にいるバカ三人を見て九割確証を得ていいた。


こうなっている理由についての確証だ。


「……ばかたち」


「「「んんぅっっ」」」


 三人に声を掛けると、猿轡で喋れないまま凄い目付きで睨んでくる。


 その顔は赤く…口や鼻から…そして、顔からだけでなく身体中から…特に下半身から汗や汗とは違った液体が溢れ出ている。


「……くさ…」


そんな姿を何処かで見たことがあった。


 けれど、ウチの専門外であり元々作品が数少ない

ジャンルの物だったから忘れていた。


「………これでやくにたてる…///」


 南宮くんの為になれることを考えると、身体が胸の底から気持ち良くなる。


「……んぁ…///…………これすき…」


「…………ん…」

うん。


 彼は、何かの協力者を探してる。

ウチはその協力者として求められていないのは分かっている。


勿論、求められないのであれば求められないでも、南宮くんがしたいようにして欲しいと思う。


 けど、もし…もしウチが役に立てる存在となれるのなら………。


「ん……がんばる」


 フウカは縛られた足のまま器用に立ち上がると、ぴょんぴょんと花実ゆうこへ近付いていった。


…………………………。









 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る