貞操逆転世界〜回帰した奴隷〜

@azatomati

第1話

 冷たい水を感じて、意識を目覚めさせようとする。


顔を上げると、気怠げな表情をした自分が鏡に映る。


「………………」


 確かに自分の顔であるが、一つ違った所があった。


「………なぜ…」


 触れる肌や、身体の調子…、とても俺の……いや、三十代後半の肉体には思えない。


「……」


 いや、この状況に対する結論は既に出ている。


肉体、そしてこの場所……俺に『二度目』の摩訶不思議な現象が起きたのだ。


 一度目…俺が『異世界』へとやって来た事。

二十年前……元の世界と似てはいるが、『男女の貞操観念が逆転した世界』へとこの世界の俺としてやって来た。


 二度目の今回、それは『回帰』しているという事。

この世界に来た日、それこそ二十年前の時間に当たる自分に意識が戻って来ているのだ。





「……っ」


 ふらつく頭を押さえ、鏡に手を付く。


やっと……やっと開放されたこの世界に戻ってしまった事実に、視界が勢いよく回転する感覚がしていた。





「…いや、落ち着こう」


 だが、今までの苦痛とストレスの経験で頭はすぐに元の状態へと戻る。


自分を苦しめる存在は今、近くにいない。


 今は、これからどうするべきなのかを考える必要がある。






 

………………………………。







 



 本来、学校へといかなければいけない今日一日の時間を使い、ノートへと『前回』の事を整理していた。


まず、先程の通りこの世界は『貞操観念逆転世界』だということ。


…………そして。



未来で男達は…女達の『奴隷』として扱われていた。




「っ……」


 頭痛を感じながらも、俺は考える。


実を言うと、男が『奴隷』として扱われる様になったのは……俺が大きな原因となっている。


 この世界の女は、元の世界にいる男達よりも『性欲が強い』。

その欲をこの世界に来た俺は何も考えず、手当たり次第に刺激していってしまった。


その結果、女達の理性は壊れていき………男達は数の暴力によって支配されたのだ。



 もし、また同じ様なことをしてしまえば、同じ未来を辿る事となってしまうだろう。


だから俺は、今回は大人しく…目立たずに生きて行くことを決めた。


 そうすれば、あのような地獄を作り出さないで済むと……そう願って。





 望んでいた『人間』としての人生を取り戻せる希望を胸……いや、頭に…静かに眠りについた。



















 そして、数ヶ月後の朝。

地獄の始まりを知らせる、とある『ニュース番組』が始まってしまう。





「……なん…で…」


 大人しくしていても、同じ未来にたどり着いてしまうのならば。



「………俺が支配すればいい」


 『前回』見てきた、欲望に抗えない『依存状態』の女達、その姿を思い浮かべる。


 その『依存』を、性欲へではなく…それ以上に『俺』へと『依存』するように仕向けてやればいい。


俺の命令を無視できない様に、自分の意思で行動できなくなる様に…………。






………………。

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