勉強大好き変態オタクが間違えて陽キャしかいないスポーツ科に入ってしまった話
黒兎しろ
第1話 間違えた!!人生終わりの入学式
間違えた!!
うん!世界の終わり、人生終わりだ!
4/1。春。晴れて僕は高校生。
桜が咲き並ぶ道に続く校舎と、その周りにいる筋骨隆々のラガーマンが部活勧誘のチラシ配りをしているのを見て僕は終わりを確信した。
いつ間違えたのだろう。僕は健康医学特進コースに進む予定だった。それが、何かの手違いで健康スポーツ科になっていた。
歩けば歩くほど、あの筋肉ムキムキラガーマンたちの群れに近づけば近づくほど、僕の一歩は小さくなっていく。
これから、ああいうゴリマッチョの陽キャスポーツマン囲まれて生きていくのかぁ……
ん、あそこにいるのは、茶髪、金髪、ピンク髪!?のスポーツ陽キャギャル。スポーツ科は髪も染めていいのかっ。めちゃくちゃ派手目の女子たちが黄色い声をきゃあきゃあと上げている。
ああ、急に胃がキリキリしてきた……
この時、間二屋 拓雄の胃は過去のトラウマから胃酸を大量分泌していた。
それは中学時代のあの苦い思い出。
「お、間二屋、なんかおもしろそーな本読んでんじゃん。貸せよ〜」
クラスカーストトップの陽キャ女子に話しかけられた時だった。
「うわ、なにこれ、めっちゃエロい挿絵ある!」
「え、間二屋、学年一位のくせにこんなにどっえろい不埒な本読んでんのぉ?」
「これニヤニヤしながら読んでるとかキモ〜ッ引くわぁ〜アハハハ!」
「やっぱり頭良い奴っておかしいんだね〜」
………。
「おえ、吐き気してきた」
この苦い思い出にタイトルをつけるならば、ラノベを読んだだけなのにだろう。またこれが繰り返されるかもしれない場所に行こうとしているのだから体が拒否反応を起こしても無理はない。もしかしたら、これよりも酷いことが起きるかもなんてネガティブな思考も生まれてくる。
嫌な想像が連鎖しながら、教室の扉を開けると、教室内にはもう多くの生徒が集まっていた。
「な、なぁにこれ……」
僕は思わずぼそっと呟いた。入学式や自己紹介などはまだこれから行われる。それなのに、クラスメイト達はもう賑やかにガヤガヤと会話していたのだ!
あるものは、「なあ、あの子可愛くね?」などともうクラスの女子を品定めするようなけしからん話をしていたり、あるものは、「えーその、アクセ可愛い〜どこで買ったの?え?○○?」と訳の分からぬどうでもいい話をしていたり、またあるものは、「翔貴、お前と同じ高校でしかも同じクラスなんてな!あの時の決勝はやられたけど、今度は負けないぜ!!これからは仲間同士だけどよろしくな」などと熱いスポーツ漫画のようなことを言ったりして……
ああ、なるほど。そういう事か。
僕は影を潜めながら、一番端の席に座り、一人で納得した。
僕は、もうついていけないのだ。
これは、一種の開き直りである。
まだ推測の域を超えないし、該当しない人もいるだろうが、このスポーツ科の新入生達は部活動やクラブ活動で学校の領域を超えた繋がりがあるのだろう。だから顔見知りや友達が多いわけでもうこんなに賑やかにやってるのだ。僕はもちろん中学は帰宅部だったし、友達もオタク友達しかいないので、顔見知りもいるはずが無い。
つまり、詰み確定演出!!!!!
「そろそろ、入学式が始まるので整列して体育館に移動してください」
教師に促され、整列する。
俺は一番後ろに並び体格のいいヤツらの後ろに隠れながら体育館へと移動した。
さすがスポーツ科の体育館。大きくて設備も最新。床には埃ひとつなく、ピカピカだ。
「では、次に在校生の挨拶です。在校生代表、○○さん」
「はい!!!!!!」
体育館中に大きな返事が響き渡る。式中、眠気眼だった僕の目をパッと開いた。
「春のぉ、暖かなぁ、気持ちの良い晴天になりましたぁ、この度はぁ」
キレのある運動部らしい喋り方で淡々と話していく代表。
単調なトーンなので、だんだん僕の目が閉じようとしていた。しかし閉じる寸前で、また目は見開かれることになる。
「よし、これで終わり。こっからは俺のオリジナル即興で行きます!とにかく新入生のみんな!一緒に熱く頑張ろうぜ!!!」
えぇ!?
「盛り上がっていこう!新入生の意見も聞きたいな。よし、そこの君!壇上上がってくれ!」
在校生代表は僕の方を指さした。僕はキョロキョロとする。まさか自分じゃないよなと。
「君だよ君、黒縁メガネで前髪の長い!」
黒縁メガネで前髪が目にかかりそうなくらいな人間は、僕しかいないだろう。
周りもおおおおと拍手なんてして、列に隙間を開けて僕が壇上まで駆け上がるスペースなんか作っちゃって。
もう、断れないし顔をひきつらせながら壇上に上がるしか無かった。
「君、名前は?」
「あ、えっと、あ、ま間二屋 拓雄」
「拓雄くんか!よし、拓雄くん!ズバッと新入生としての意気込みを一言叫んでくれ!!」
「えっ」
急にそんなことを言われても、ここに立っているだけで心臓が飛び出しそうなのに。
訪れた静寂。体育館中の人の視線が僕に集まっているようで、痛い。
ああ、モグラになりたい。今すぐにでも穴を掘って潜りたいよ。どうするんだよこの状況!!
「拓雄くん?緊張する必要は無いぞ!さあ、どんと!好きなことを言いたまえ!」
好きなこと?なんだよ好きなことって僕の好きな事、そりゃあひとつしかないよ。ああ、もう。
「あ、あっ、は、はい…ええっと、僕の名前は間二屋 拓雄です。好きなことは、アニメを見ることです。推しのアニメは最近やっているご注文はうなぎですかという和食料理店を可愛いヒロインたちが営む日常系のアニメで一番好きなキャラみゆちゃんで、よくそのキャラの口癖、心がぷわぷわするのじゃ〜というのを使ってLimeのステメにもしてますよろしくお願いします!!!」
オ、オワッター、完全にオワター。
代表は目を見開いて口を開けて唖然としていたが。慌てて、我に返って、苦笑いをしながら拍手してありがとうございました!と取り繕ったが取り返しがつかなかった。
この地獄ともいえる入学式はいつの間にか終わっていた。心ここに在らずでその後の記憶が無かったからだ。
そんな中、僕の知らないところで、4つの春風が吹いていた。
「へぇ、、面白い子もいたもんだね。後で話かけてみよ」
一つの風が僕の近くで
勉強大好き変態オタクが間違えて陽キャしかいないスポーツ科に入ってしまった話 黒兎しろ @utumi_yushin
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