〜23〜error cord system,All green.

玄之達はゲートの前へと来る。ゲートの前へと来るといつもなんか見知ったものを感じる。

頭の中に構造が手に取るようにわかるというか。

そんな感じ……?



ゲートの中に入ると目の前は岩の洞窟に続いていた。

ここから自分達の行きたい階層へ転移陣で飛ぶ。


今から行くのは十五階層。

そこを思い浮かべながら転移陣へと乗る。


そして十五階層にいるレッサードラゴンを狩ってくるのが今回のミッションである。

ギルドでの受付はもう済ませてある。


そして全員が乗り切り十五階層を想像し、転移を使う。眩い光に包まれながらシュンと音を立て階層を移動した。



着いたのは火山のような洞窟。

横にはマグマが流れており暑いのはしょうがないだろう。奥には大きな火山のようなものも見え奥に行けば行くほど難しくなるのだ。


ここでは【玄之特製 ひんやりグミ】を食べてから進む。これを食べると【回復小】【冷気】【体力回復】【気絶耐性】が付与され体がひんやりし始めるという効果を持っている。

寒い日にやると風邪を引くので気をつけないといけない。


少しずつHPを回復するようになるのに加え、体力を回復させ、気絶に強くなるという効果も付くので長期戦向けだ。


「これで暑くなくなったので進みましょう、今回は僕が指揮をします」


「おう、よろしくな! メガネより頼もしいわ」

「なんだと? 脳筋!!」


「まぁまぁ二人とも、早く行くよ」

「早く行きましょう♪レッサードラゴンに仕返しするんでしょ?」

まぁレッサードラゴンは下位種とはいえまぁまぁ強い部類に入る。


ファイヤードラゴンとかになったら手が負えないようなものへとなってしまう。



======


雑魚を狩りながら一時間ほど進んだ時、レッサードラゴンが探知範囲へと入る。

「前方、一時方向にレッサードラゴン一匹いますね」


「行くぞ!」

「「「「おー!」」」」

みんな仲がよろしくて結構、でも倒せないと意味がないからな。


スキル【不可視の盾 レベルⅦ】によりレッサードラゴン程度なら攻撃は通らないだろう。

だから攻撃以外は任せて欲しい。



そしてレッサードラゴンの視界に入るギリギリまで近づく、玄之が合図するのと同時に正宗さんの魔法を打つ。

【サンダーボルト レベルⅤ】は遠距離の攻撃魔法で威力はほどほどだが一定確率で【感電】を付与するのと、その一直線上を全て攻撃するという貫通効果持ち。


初弾には丁度いい魔法なのだ。


バリバリと鳴きながらサンダーボルトはレッサードラゴンを貫く。

ギャァァァア!!! と大きな咆哮をするレッサードラゴン。攻撃はうまく通ったようだ。


そして永さんが大きな斧を持ち、前衛へと躍り出る。

今回のヘイト役であり、攻撃もしてもらう要である。

「オラァ゛よ!! 痛いだろォ!!」

「ギャァァア!! キシャー!」


ヘイトは充分永さんに向いているようだ。

怒り狂ったレッサードラゴンは尻尾を振り永さんへと素早く攻撃するが途中に何かに防がれてしまった。


そう、【不可視の盾 レベルⅦ】だ。

レッサードラゴンは阻まれたことに困惑していた、その隙に煜さんの【シルフスピア レベルⅦ】と琉偉さんの【セイクリッドレイ レベルⅦ】を放つ。


シルフスピアは風系統魔術の遠距離専用魔術。高速回転し、圧縮された風は一瞬にして高威力を叩き出す。それまでは魔力を練って待っていたこともあり一般的なものよりは遥かに強くなっている。ならば脳天を狙い風穴を開けることを狙う。


セイクリッドレイは光系統魔術で射程の長さに比べ攻撃範囲が大きく味方を狙えないという特殊な光だ。熱線で焼き切ることができ、周りの火山の熱を使い威力を最大限に上げている。全体を狙いダメージを加算する目的で撃つのだ。


「永さん! 避けてください!」


「あいよ! オラァ! 最後の一発!!」

そう言い永さんは投げナイフをレッサードラゴンの眼に投げつける。司会を奪うことで戦闘を有利に進めることができるドラゴン狩りの定石だ。

みんなぬ先に教えたのが役に立ったのだろう。


そして永さんが避けたことによりセイクリッドレイを発動。

丸いキューブ状の物がレッサードラゴンの頭上へと現れ閃光を走らせる。


その光は降り注ぐ雨となり、翼や胴体を切り裂く。

動くことも困難になると軽く予想できる。


その動けない間にシルフスピアを放つ……。

その時だった。



奴は現れた。

紅蓮の焔を灯した赤き眼、鋼鉄の剣すらも容易く弾く鱗、一際輝く喉仏の逆鱗。大地を離れ空高く跳ぶ翼。

あそこまで練った高威力のシルフスピアは傷すら付けれずに鱗に弾かる。小虫を見つめるかのようにギョロッと眼が動く。


それは玄之達を見て、いや。玄之しか眼中にはないように思えた。


雑魚に帰らせるかのような大きな咆哮は煜達の逃走心を掻き立てる。

「【転移】発動! 対象、自分以外の四人!!!!」

玄之が叫んだ瞬間、煜達には光が宿りこの階層を離れる。

安全な一階層に運んだがここで持ち堪えなければ間違いなくこのダンジョンは封鎖され、街が崩壊する。

それだけで済めばいいくらいあるだろう。




「玄之くn……」

無惨にももう魔力は残っていない。ここから帰れる余裕すらない。

だが戦わなければどうする、僕は……ここで死ぬのか?




『危機的状況を感知……error cord systemをアンロック。成功……一時的に記憶を解除します』




「…………そうだ、僕……いや、俺はコイツを知っている。火焔龍ディアボロス……このダンジョンの裏ボス。俺の敵では無いな」

どこからかの記憶、この世界で起きていること、前の世界での自分。

今すべき事は、ただ一つ。




コイツの攻略デバッグだ」


〜24〜火焔龍ディアボロスをテイミング。


「お主はここから逃げぬのか?」

そう問われる玄之。この世界の自分なら弱音を吐いたりしたのだろう。

「俺はお前を直さないといけないんでね、ここは湧きスポーンではないんだよ。まぁチートとかエラーではないからダンジョンブレイクなんだろうけど」


本来ならこのような事はないし、湧いている時点でエラーかチートなのだ。

だが一つ可能性がある。


稀にダンジョンではダンジョンブレイクという物が起こり、モンスターのいるべき境界線などがバラバラになる現象がある。

ここはD7地区なのだろう。ダンジョンブレイクが起きた際唯一このディアボロスが湧くのだ。

とはいえ確率は低すぎるのだが。


「何をほざくかと思えばこの世界の深淵でも覗いておるのか……我も一度お前みたいな奴を知っている。負けてしもうたがまぁ楽しかったな」

そうか、俺の記憶にある兄さんのことか。

兄さんしかできる奴はいないだろう。

「じゃあ、その二人目になろうかな。【コード書き換えtuning】まずは手始めにこれかな、」

そう言い玄之の目の前にウインドウが現れる。キーボードもブォンと表示され、片手で素早くコードを打つ。


一文字0.01秒で打ち続け、たったの2秒程度でコードを書き終えた。


[Debuff grant #Target/Diabolos #Effect/Weakness, paralysis, weakness grant, lethal dragon poison, behavior inhibition #time/∞]


[Ability enhancement #target/self #effect/super recovery, super faint resistance, effect grant, recovery material grant, floating #time/∞]


打ち終えた瞬間、相手が急にふらつく。

そしてズシンという音と共にディアボロスは突っ伏す。

身体はもう動かすことは困難だろう。

「……な、なにをした…………!」

「効果を与えただけだよ、今回は早くしたかったし君にはやって欲しいことがあるからね」


こんな致死龍毒を盛られてもまだ話す余裕があるなんてやはりこの世界の裏ボスなだけあるだろう。


致死龍毒はこの世界で最も強い毒で、約0.000007ミリの致死龍毒が含まれただけで大抵の動物は死んでしまう。

この毒の採取も困難でほぼ無理だが、これを使ってボスを倒すプレイヤーまでいた事もある。


「【コード書き換えtuning】」

[Gimmick grant #Target/From kuroko to Diabolos #Effect/Absolute obedience, ability limitation, Tame monsterization/#World's engagement execution......affirmation]



「これからよろしくね、ディアボロス?」

そう玄之は話しかける。ディアボロスからの殺意は消え失せ、忠誠心へと置き換わる。

テイムモンスターとなったことで毒などは回復した。



「……わかった、のだが……何故殺さぬ。殺せば大金を手にし、英雄にだってなれるであろう」

大きな首を伸ばし玄之の前へと首を垂れる。

鼻息が突風のようになっている。強い日の風程度だが、少し暑いのだ。

まぁ直せと言っても無理に決まっている。呼吸するなと同義だからな、我慢しよう。


それで倒さなかった理由か……この火焔龍ディアボロスとはこの世界の厄災であり、全ての火を司る神と言っても過言ではない。

それを倒したとなれば英雄にもなれるし、国王にだってなれる。


「さっき一緒にいた人達いたでしょ?」

「彼奴らがどうしたんだ」


「あの子達を守らないといけないんだよ、だから君にはダンジョンに行く時の護衛役を務めてもらいたいんです」

そう、今回のようにダンジョンに行く事もある、もしかしたら誰かに襲われるかもしれない。

だからといえ黒子にだってやる事はあるのだ。


だからその代わりにやってもらおうって算段だ。

だがこの見た目だと怖いし、一緒に入れない。国から災害とされているのにこの見た目はダメですね。

「だからまずは小さくなろうか、【コード書き換えtuning】」


[Appearance change #Target/Diavolos #Size/To the degree to which you can ride on the shoulder #Weight/Around a kilometer #Limit/Kuroko's permission, or allow it to return to the original only when you fall into a dangerous situation #Time/Semi-permanent]



コードを書くとディアボロスはみるみると縮んでいく。

さっきまでの厳つさはなくなり、肩に乗れる程度までにはなっている。重くもないしちゃんと飛べるようだ。

目はクリクリで可愛いし、赤い鱗は今でも硬いみたいだ。

これで多分ヒロイン達は貰ってくれるだろう。


「なんだこの姿は、小さいじゃないか」


「でもしょうがないじゃん、我慢してね」

「お主がそう言うなら、 そうしよう……だがまだ慣れんな、」

よしよし、精神的にも安定したみたいだ。

あとは見た目を偽装して逃げてきたフリをする。

ディアボロスは帰る時にでもバッタリ出会ってもらうことにする。


「じゃあ転移しますか……【転移】」

そう唱えると玄之は地上へと転移する。



その時、脳内にアナウンスのような何かが語りかける。





『状況、セーフ。安全性を確保できているため、カバーストーリーの埋め込みとerror cord systemのロック……成功。記憶もロックをかけます……エラー、一部記憶のアンロックを神から申請……成功。記憶を一部引き継ぎます……。これからのご武運を期待しています、柏木 玄之かしわぎ くろこ様』


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読んでいただきありがとうございます。


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