飼い主を亡くした犬「チャチャ」
2018年7月。
1匹の人懐っこい犬を保健所から引き出した。
犬の名前は「チャチャ」。
保護主が付けた仮名ではなく、飼い主が付けた名前。
チャチャは飼い主を亡くして、引き取る親族が無かったため保健所に収容された犬だった。
ニコニコと笑うような表情を見せるチャチャは、飼い主に大切にしてもらっていたらしい。
八重山保健所に入る犬は、マトモな医療をかけてもらえていない犬が多い。
チャチャの飼い主は、亡くなる年まで毎年必ず狂犬病の予防接種、混合ワクチン接種、フィラリア予防薬の投与をしていたそうで、去勢手術もされていた。
狂犬病ワクチンの接種率が全国ワースト1位の沖縄県。
石垣市の接種率は県平均以下、2023年度が初の50%超で52%だった。
島内で飼われている犬の半数以上が未接種という中で、毎年狂犬病の予防接種をしていた飼い主は「マトモ」だったと思う。
チャチャの飼い主は、きっとずっと一緒に暮らすつもりだったろう。
けれど残念なことに、病に倒れて帰らぬ人となってしまった。
愛情を注がれて育った犬が、ある日突然家族を失い、保健所の檻の中に入れられた。
どんなに待っても、大好きな人が迎えに来ない。
それは、どんなに寂しくて悲しかったろうか?
最愛の人を亡くしたチャチャは、笑顔を見せるけれどストレスは感じていたようだ。
保健所から引き出して我が家に来たばかりの頃は、あまりゴハンを食べず、食べても全部吐いてしまっていた。
人に対して友好的で、従順だったチャチャ。
頭に花を乗せても、気にする様子は無かった。
新しい家族を見つけてあげようと、里親募集用にたくさん撮影した。
12月の譲渡会では、トナカイのコスプレをして、この笑顔。
いつもニコニコしているチャチャが可愛くて、早く幸せになれるようにとケーブルテレビ(現在は終了)に動画を投稿したこともある。
チャチャは当時10歳。
健康だからあと数年は生きる筈。
飼い主に先立たれた子だから、今度は最後まで一緒にいてもらえる家族を見つけてあげたいと思った。
譲渡会の前にはシャンプーしてあげた。
元の飼い主にもしてもらっていたんだろう、チャチャは大人しくニコニコしながら洗われる。
お散歩も引っ張ったりせずに上手に歩く。
保健所から引き出して半年が過ぎた頃、チャチャに里親希望の家族が現れた。
環境チェックを兼ねつつチャチャを連れて行き、里親希望の方たちに保健所に入った経緯の説明もした。
そうして1時間ほど話し込んで、預けて帰ろうとしたら、後追いするチャチャの遠吠え。
あ、呼ばれてる。
でも、そこは君の新しいお家だから。
早く馴染んで幸せになってね。
そう思いながら車に乗り込んで帰った。
トライアルを経て、正式譲渡になった後。
1ヶ月が経つ頃に会いに行くと、チャチャは凄く喜んで出迎えてくれた。
里親さんそっちのけでベタ甘で、なんだかちょっと申し訳なくて、その後は会いに行くのを避けてしまっている。
慕ってくれるのは嬉しいけれど、里親さんに一番懐いてほしい。
今頃はもう保護主のことは忘れているだろう。
里親さん家族の中では、パパさんが一番懐かれているらしい。
※チャチャ画像
https://kakuyomu.jp/users/BIRD2023/news/16818093079142361501
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