3-22:新型増産開始


 私たちはブルーゲイルに戻っていた。



「アルム! やっと戻って来たわね!?」


「アルム君、お話が有ります!!」


「お兄様、何故エシュリナーゼ姉さんとミリアリア姉さんなんです!? 私は? 私と約束したじゃないですか!!」



 なんか戻って来たら姉妹たちが騒いでいる。

 あー、これミリアリア姉さんが言っていた父王との取引の件だな……



「あのねみんな、今の状況分かっているの?」



「それはそれ、これはこれですアルム君! 私はアルム君の為なら何だってしてあげれると言うのに!!」


「私だって! お兄様、約束したじゃないですか!!」


「ふん、アルムを独り占めに出来ないってのはあれだけど、まあいいわ。アルムはもともと私のモノ。姉の言う事は絶対よ!」



 駄目だこれ。

 完全に自分の事だけで話を聞く状態じゃない。



「アルム、戻ったか。イザーガから風のメッセンジャーで話は聞いた。いよいよドドスが動き出したそうだな?」


「あ、アマディアス兄さん。ただいま戻りました」


 アマディアス兄さんはキャイキャイ騒ぐ姉妹たちをどかして私に声をかけて来た。



「アマディアス兄様! アルム君がエシュリナーゼ姉さんとミリアリア姉さんのお婿さんになるってどういうことです!?」


「そうです、アマディアス兄さん!! アルム兄様と私はずっと昔から将来を誓い合った仲だと言うのに!!」



 特にアプリリア姉さんとエナリアが騒がしい。

 しかしアマディアス兄さんは厳格な顔をしてこっそりと二人に言う。



「アルムをこのブルーゲイルにつなぎとめるには、エシュリナーゼとも婚姻をしてこちらにいてもらわなければならない。しかしミリアリアの『鋼鉄の鎧騎士』の技術もレッドゲイルにいては十二分に発揮できない。これは国防の要となる話だ。父王もその事をよく理解してのご判断だ」



「でもっ!」


「お兄様がエシュリナーゼ姉さんとミリアリア姉さんにとられちゃう!!」



 まぁ、アマディアス兄さんらしいことだ。

 第一優先を国として、王族の役目を果たす。

 その為にはなんでも利用する。


 たとえそれが自身の婚姻でも。



「それにな、まだ正式な婚約ではない。お前たちは実の姉弟、兄妹だから国の法律では婚姻は認められないが、過去には婚姻をせずにつがいになった王族もいる。父王が黙認してくれるならば機会はあるが、それには相応の功績を立てなければならない」



 ちょっと待とうか、アマディアス兄さん!!

 目がうつろなまま何アプリリア姉さんとエナリアに言ってるの!?



「そう、ですか……功績をあげれば、お父様も何も言わないと言うのですね?」


「それでもお兄様と結ばれるなら!」



 いやいやいや、あなたたち何をアマディアス兄さんに乗せられてるの!?



「アマディアス兄さん!!」


「ん、なんだアルム?」


「そうじゃないでしょうに!! 何アプリリア姉さんとエナリア巻き込んでいるんですか!?」


 思わずそう突っ込む私にアマディアス兄さんは悪い笑顔で言う。


「みんなでこのイザンカを守ろうじゃないか? なに、アルムに手を出したドドスには痛い目に合ってもらうだけだよ。モアも手伝ってくれると言うしね」



 駄目だー!

 この人も逝っちゃってる!!


 完全に瞳がうつろなままこめかみに怒マーク張り付いている。

 何がこの人をここまで怒りに駆り立てているんだ!?



「アルム、戻ったですぅ。二号機は大丈夫ですぅ?」


「ああ、イータルモア。ちょとアマディアス兄さんを止めてよ! アマディアス兄さんったらアプリリア姉さんやエナリアまで僕と一緒になるようんにけしかけて来るんだよ!」


 ここで登場のイータルモア。

 しかし私の抗議にイータルモアはきょとんとして言う。


「強いオスにたくさんのメスがつがいになるのは普通ですぅ。私のお父さんもたくさんのお嫁さんいたですぅ。自分の姉もお嫁さんにしたから問題無いですぅ!」



 駄目だぁーっ!

 この夫婦、完全にダメだぁーっ!!



「やっと帰って来たニャ~。アマディアス様ぁ、ちゃんとお勤めしたニャ、今晩ご褒美欲しいニャ~」


「うーん、私はこれですぅ。アマディアス様、今晩はカルミナが相手でいいですぅ?」


 こっちもこっちでナニ大人のお話してんの!?


 ゴロゴロとアマディアス兄さんに擦り付くカルミナさんを見ながらエナリアの目を手で隠す。



「お兄様♡ とうとう私に手をださいてくれるのですね?」


「違います! エナリアにはまだ早いの! ああ、もう、うちの連中はぁ!!」



 私の叫び声がこだまするのだった。



 * * * * *



「それでアルム、魔晶石の付与の方はどうですの?」


 「鋼鉄の鎧騎士」の工房でミリアリア姉さんと残りの「鋼鉄の鎧騎士」の生産を急ぐ。

 私は必要な魔晶石に能力の付与をしている。

 

「うん、順調。とりあえず初期型三体と同じものを作ってるけど、新型の駆動系魔晶石はもう少し研究しないとダメだね。能力付加しすぎると魔晶石がもたずに割れてしまうみたいだ」


 魔晶石に魔法を付加する技術は失われていた。

 しかし、その技術を解明したイザンカでは魔術付加が出来るようになった。

 もっとも、そこまで高度な魔術付加はそうそう簡単にはできない、私以外には。



「まったく、毎度驚かされますわね、アルムの膨大な魔力とここまで複雑な術式を構築して付加できるとはですわ」


 ミリアリア姉さんはそう言って追加三体の生産の予定を確認している。

 イザーガ兄さんの話ではあと約半年で準備が整い、ドドスが攻めてくるだろうという予想だ。

 イザンカ王国を防衛するためには、後三体の新型「鋼鉄の鎧騎士」が倍以上いるドドスの軍隊の対抗手段となる。

  

 なので早急にあと最低でも三体の「鋼鉄の鎧騎士」を作り上げなければならない。



「アルム! こんなこともあろうかと私が来てやったわ!!」



 バンッ!!



 いきなり工房の扉が開かれエシュリナーゼ姉さんがやってきた。


「エ、エシュリナーゼ姉さん??」


「アルム、私だって何もしてこなかったのではないわよ? 今の私は魔晶石に魔力付加ができるほどに成長したのよ!!」


 そう言ってあの後も育ったでかい胸を揺らしながら威張る。


 くぅ、でかいな!


 今やマリーにも引けを取らない大きさ。

 下手するとカルミナさんクラスあるかも。



「エシュリナーゼ姉さん、アルムなら大丈夫ですわ。着々と予定の魔晶石付与はできていますわよ?」


「ふっふっふっふっ、でもまだ全部じゃないでしょ? すでにアマディアス兄さんには話をつけてあるわ。さ、私にも手伝わせなさい!!」




 そう言ってまたまたここで二人の姉は言い合いを始めるのだった。


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