2-13:手合わせ
ジマの国で、騎士団の稽古を見学のつもりで見ていたのが、手合わせになってしまった。
稽古場の広間でカルミナさんと女性の騎士が対峙している。
そして開始の合図で双方ともに動き出す。
女性の騎士は確かエルバさんとか呼ばれていた人。
彼女は踏み込み二歩目でマリーと同じくありえない跳躍をする。
「はぁっ!」
「踏み込みは、まぁまぁニャ、でも動きが単調すぎるニャ!」
エルバさんとやらは木刀を真横に一閃するも、すでに飛びあがったカルミナさんに完全にそれを避けられる。
しかし、振りぬいたその木刀をありえない速さで返して空中のカルミナさんを捕らえようとする。
「それもお見通しニャ!」
しかしカルミナさんは器用に空中で体をひねってその返す一撃を紙一重でかわす。
そして着地と同時に低い姿勢のまま廻し蹴りでエルバさんの足をすくう。
たんっ!
くるっ!!
ばしっ!
「あっ!?」
そう来るとは思ていなかったエルバさんはあっさりと足元をすくわれ、宙に浮く。
「足場のにゃい『操魔剣』の弱点ニャ!」
そう言ってカルミナさんはエルバさんの足をすくったその足をそのまま大きく振り回し、空中で身動きの出来ないエルバさんのお腹に踵落しをする。
ぶんっ!
どがっ!!
「ぐふっ!」
エルバさんはもろにカルミナさんの踵落しをお腹に喰らって地面にたたきつけられる。
カルミナさんはエルバさんを踵落しで地面にたたきつけた反動でバク転をして体制を整え、構える。
「マリーなら足元をすくわれた瞬間にまた『操魔剣』で防御かあたしの足を木刀で薙ぎ払うニャ。連続で三手先までは『操魔剣』を使う準備が出来てるニャ! お前は二手目すら準備してにゃいニャ!」
すちゃっと爪を立てて構えるも、エルバさんがお腹を押さえてゴホゴホと咳込んでいる。
この時点で勝負は決まってしまった。
「そ、そこまでだ!」
副団長はすぐにそう言ってこの手合わせを終わらせる。
カルミナさんはすっと構えを解いてこちらを見る。
「次、来るニャ。戦い方を教えてやるニャ」
そう言いながら人差し指をちょいちょいと動かし次の対戦者を呼ぶ。
副団長はそれを見てすぐに怒鳴るように言う。
「次、ラシュタ行けっ!!」
「はいっ!!」
ラシュタと呼ばれた男の子が慌てて木刀を握りしめ、カルミナさんの前に行く。
あら~、結構イケメンじゃないの?
真面目そうな表情で緊張してカルミナさんの前に立つラシュタ君。
茶色い短髪で、青い瞳、あと数年もすればもっとたくましくなりそう♡
こう言うのが良いのよね~。
お姉さん色に染めたい♡
思わずニヤニヤしながらラシュタ君を見ていると、開始の声が上がる。
「はじめ!」
開始の声と同時に、ラシュタ君は先ほどのエルバさん同様、二歩目でありえない飛込をしながら木刀を振る。
先ほどのエルバさんより早い?
「なかなかの踏み込みニャ! でも剣筋がバレバレニャ!!」
カルミナさんはそう言ってその一撃をまたまた紙一重で避ける。
が、ラシュタ君はそのまま木刀を振り抜きながらカルミナさんに空いた側の手でひじ打ちを入れようとする。
木刀を振りぬく勢いをそのままに、半身をくるりと回しながらのひじ打ち。
まるで拳法家のような動きだ。
「悪くにゃいニャ! しかしニャ!」
カルミナさんはそのひじ打ちをのけぞるかのように上体を後ろに倒し、バク転しながらラシュタ君の顎を狙って蹴り上げる。
「くっ!」
がら空きの顎に真下からカルミナさんの蹴りが迫る!
それをラシュタ君は慌ててのけぞり躱すが、完全に上体が崩れる。
そこへバク転を済ませたカルミナさんが飛び込む!
「すぐにそこで防御するニャ!!」
言いながらカルミナさんはラシュタ君のお腹にストレートパンチを繰り出す。
がら空きのお腹は面積も広く、まず外す事は無いだろう。
しかし、ラシュタ君は膝を上げながらカルミナさんのその一撃を何とか弾く。
ガッ!
何とか防御してカルミナさんの一撃を防いだまでは良いが、その反動で完全にバランスを崩して後ろに倒れる。
とそこへストレートパンチを弾かれたカルミナさんがしゃがみながら廻し蹴りをする。
倒れるラシュタ君はエルバさん同様、何もできないでカルミナさんのその廻し蹴りを喰らう。
ばきっ!!
「ぐぁっ!」
しゃがみながら低い位置で廻し蹴りを喰らったラシュタ君は地面に背がつく前にカルミナさんの蹴りにより低い高さで向こうの方まで蹴り飛ばされる。
そしてゴロゴロと何度も地面を転がる。
とそこへカルミナさんの追撃が容赦なく襲ってくる。
「いつまでも寝転がっているんじゃにゃいニャっ!」
廻し蹴りを決めたと同時に、蹴り飛ばした方向へと飛び上がったカルミナさんは体重の乗った飛び蹴りをラシュタ君に繰り出す。
「まてっ! そこまでだ!!」
だけどここで副団長の声がかかる。
どがっ!
だが繰り出されたカルミナさんの蹴りがラシュタ君が転げて倒れたその頭を襲う!?
「ひっ!?」
「戦場なら今の一撃で頭を潰されてたニャ。転がりながらでも『操魔剣』でも何でも使ってすぐに反撃をしにゃいとそこで終わりニャよ?」
仰向けに倒れているラシュタ君の頭の横にカルミナさんの蹴りが地面にひびを入れてめり込んでいた。
カルミナさんはその足を引き抜き、くるりとラシュタ君に背を向け両の手を上に伸ばしながら「う~んニャ~」とか言いながらこちらに戻って来る。
「まぁまぁだったニャ。でもまだまだ未熟ニャ。せっかくの『操魔剣』も使いどころがまだまだニャ。せめてマリーのように二手、三手先まで『操魔剣』の準備をしにゃきゃ宝の持ち腐れニャ」
「私は常に五手先まで準備してます。三手など当たりまえです」
「ニャッ!?」
マリーをチラチラと見ながら自慢そうにそう言うカルミナさん。
しかしマリーがしれっとそう言うと、カルミナさんは驚きの声を上げる。
「くっ、次だ! カミュ―! お前の番だ!!」
それを見ていた副団長さんは次の人の名前を呼んで来させる。
すると、今度は女性の騎士が前に出るが、他の騎士たちに比べかなり小柄な人だった。
「くっくっくっくっくっ、それでは次は私がお相手してあげましょう」
マリーとにらみ合っているカルミナさんを置いて、今度はアビスが名乗りを上げる。
私は再度カミュ―さんとやらを見る。
身の丈百五十センチあるかどうかの小柄な彼女。
私と同じような青い長い髪の毛をお団子状に左右に頭の後ろにまとめている。
まだあどけなさが残るその顔には、それでもその身体に似つかわしくないような鋭い眼光があった。
そして彼女の持つ木刀はショートソードのようなものを両手に持っていた。
「カミュ―、全力で行け!」
「はいっ!」
そう言って今度はカミュ―さんとアビスが広間に向かうのだった。
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