プロローグ

プロローグ:アラフォー女ですが何か?


「大宮さん、これどうしたら良いっすかね?」


「またぁ、そんな事も出来なんじゃ何時まで経っても一人前に成れないわよ?」




 私、大宮珠寿おおみやじゅじゅは眉間にしわを寄せながら入社二年目の後輩である、小鳥遊一颯たかなしいっさ君を叱責する。

 

 流石にもう基礎的な事くらい一人でやってもらいたい。



「ほら、こうやってこうでしょ?」


「流石、大宮さん! 愛してますよ!!」


「なっ///////!?」



 小鳥遊君はそう言ってすぐに何処かへ行ってしまう。

 不意打ちだった。

 あんな若造に思わず隙を見せてしまった。


 現在私は三十九歳。

 独身。

 彼氏無し。


 この三十九年間をずっと独り身で過ごす寂しいアラフォー。


 流石に三十五歳の頃には焦って結婚相談所に行ったもんだ。

 しかし、要望するお相手はまず見つからない。

 周りの友人や知人はどんどん結婚して行って、行き遅れ感が半端ない。


 なので同じ境遇の友人とよく飲みに行くのだけど、最近あいつは若い男を作ったらしい。

 正直うらやましい……



「くっ、私だって男が欲しいわよ……」



 そう言ってむなしくなる。

 なんど同じこと言ったモノか。


 私はため息を吐いて、時計を見るとそろそろお客さんの所へ行く時間だ。

 上司にその旨を伝えて、外出表示をするホワイトボードに外出している事を書き込むと、小鳥遊君がやって来た。



「あれ? 大宮さん今から外回りっすか?」


「そうだけど、何か有ったの?」


「いや、その、さっきのお礼に仕事終わったら一緒に飯でもと思いましてね」


「ふーん、おごりなら行くわよ?」


「マジっすか!? じゃあ、夕方六時に駅前で待ってますね!」


 そう言って小鳥遊君は向こうへいてしまった。

 まったく、なんか出来の悪い弟を持った感じだ。


 でもまぁ、久しぶりに誰かと食事をするのは悪くない。

 私にもそう思う時がありましたよ、ええ。






「いやぁーっ! 何で止まらないのよ!?」





 それはこの世で私が最後に叫んだ言葉だったのだ……

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る