捜10-05 蛇銜卵・女嫁蛇

○蛇銜卵


元嘉げんか年間、廣州こうしゅうに住む三人組が山に分け入り、山中で木を切っていた。すると石と石の間に2つの卵を見つける。その大きさは一升ほどの量にもなった。彼らはそれを食べようと鍋で煮出そうとした。

お湯が熱くなり始めた時、林の中から嵐のような音が響いた。間もなくして一体の大蛇が現れた。ひと10人分の太さ、その長さも10メートル近くに及ぼうという蛇だ。蛇は鍋の中から卵をくわえて取り出し、去った。

間もなくして3人とも死んだ。



○女嫁蛇


しん太元たいげん年間、ある士人が娘を近隣の村に嫁に出すことになった。期日となり、夫の家から人がよこされ、娘を迎えに来た。士人は喜んで彼女を送り出した。合わせて彼女の乳母を見送りとしてつけさせた。

夫の家に到着した。そこは多重の門に囲まれ、多くの館が構えられており、さながら王侯のごとき邸宅であった。廊下には柱ごとに燈火が灯され、小間使いの婢女までもが美しく飾り立てられ、その寝室も実にきらびやかなものであった。

夜となり、娘は乳母と抱き合って別れに涙したが、うまく言葉が浮かばずにいた。

乳母が密かに寝床に手を入れて探ると、一匹の蛇を捕まえた。とは言えその太さは柱ほどもあった。蛇は娘に足元からまとわりつき、頭にまで至った。乳母は驚き、外に逃げ出した。柱の下の燈火を守る婢子はみな小さな蛇であり、燈火と思ったものはみな蛇眼であった。




蛇銜卵

元嘉中,廣州有三人,共入山中伐木。忽見石窠中有二卵,大如升,取煮之。湯始熱,便聞林中如風雨聲。須臾,有一蛇,大十圍,長四五丈,逕來,於湯中銜卵去。三人無幾皆死。


女嫁蛇

晉太元中,有士人嫁女於近村者。至時,夫家遣人來迎,女家好遣發,又令乳母送之。既至,重門累閣,擬於王侯。廊柱下有燈火,一婢子嚴妝直守,後房帷帳甚美。至夜,女抱乳母涕泣,而口不得言。乳母密於帳中以手潛摸之,得一蛇,如數圍柱,纏其女,從足至頭。乳母驚走出外。柱下守燈婢子,悉是小蛇,燈火乃是蛇眼。


(捜神後記10-5)




ストレートな怪談の前段に較べて、後段のこのじわじわくる感じときたら……とりあえず、この当時も蛇=ち○ち○の隠喩は十分成立してたでしょうから、その辺のなにかなのでしょうね。それにしても取り残された士人の娘どの……南無三。

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