10巻

捜10-01 蛟子

長沙ちょうさのとある家族、その姓は失われている。その家は長江のほとりにあった。娘が川岸にて洗濯をしていた時、突如身中に異変を覚えた。とは言えそれは病ではなく、懐妊であった。やがて三体の子が生まれた。その姿はナマズのようであった。彼女はその三体について不思議がるも、大いに可愛がった。大きなたらいに水を張り、その中で養ってやった。


三月ほど経つと、三体はかなり大きくなった。これらは伝説の水獣、ミヅチの子だったのである。彼女はそれぞれの子に名をつけた。いわく、大きい子を「當洪とうこう」、真ん中の子を「破阻はそ」、小さい子を「撲岸ぼくがん」と。


或る日大雨が降ると、蛟の兄弟はみないずこともなく消えた。しかしまた雨が降り始めた時に戻ってきた。彼女はこの三体がいったん家を出てもまた戻ってくるとわかったので、雨のごとに外に出て、この三体の帰還を待った。蛟の子らもまた長江の水面から頭をもたげて母を望み見、しばしして去った。


それから何年かが経ち、彼女は死んだ。蛟の子らはしばしその墓所にて慟哭し、数日後に去った。その慟哭の声は、さながら犬の遠吠えのようであったという。




長沙有人,忘其姓名,家住江邊。有女子渚次澣衣,覺身中有異,後不以為患,遂妊身。生三物,皆如鮧魚。女以己所生,甚憐異之。乃著澡盤水中養之。經三月,此物遂大,乃是蛟子。各有字,大者為「當洪」,次者為「破阻」,小者為「撲岸」。天暴雨水,三蛟一時俱去,遂失所在。後天欲雨,此物輒來。女亦知其當來,便出望之。蛟子亦舉頭望母,良久方去。經年後,女亡,三蛟子一時俱至墓所哭之,經日乃去。聞其哭聲,狀如狗嗥。


(捜神後記10-1)




やだ何このお話、くっそエモい……お父さんの苦悩さえ見えない振りすれば……

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