捜02-06 鏡甖・郭璞預屬

○鏡甖


王導おうどうは、かつて郭璞かくはくにこの先一年間の吉凶を占わせたことがあった。郭璞は言う。

「ややよろしくない兆しが見られます。廣州より二つほど大甖を取り寄せられ、それらに水を張り、寝床の角二箇所に配されよ。この手立てを『鏡好』と申しまして、邪運を退けましょう。然るべきときにこの甖を除かれませ。さすれば災いも消えましょう」

王導は郭璞の言いつけを守ったが、撤去の期日についてはすっかり忘れ去り、やがて示された日を過ぎてしまった。すると突如として銅鏡を見失う。のちに甖を取り除こうとした際、甖の中になくしたはずの銅鏡が入っていた。甖の口は10センチ前後、鏡は30センチ弱である。王導は再び郭璞にこの現象について占わせた。郭璞は言う。

「甖を下げる期日を違われましたな。故に邪魅がいたずらを仕掛けたのです、それ以外の意味はございませぬ」

車轄を焼かせたところ、鏡が立ち出でた。



○郭璞預屬


東晋とうしん初め、郭璞は自身について占い、その悲惨な末路を悟っていた。かつて建康けんこう柵塘さくとうを歩いていたとき、ひとりの慌ただしく走る少年に出会った。とても寒い日であったため、郭璞は少年を引き止め、絲布袍を脱ぎ、少年に与えようとした。少年ははじめ断ったのだが、郭璞が言う。

「いいから受け取られよ。やがて意味が分かろう」

そして少年は受け取り、去った。やがて郭璞が王敦おうとんより憎まれ殺されることとなったとき、執行人が例の少年であった。そばの人たちは皆手伝いを願い出てきたのだが、郭璞は言う。

「ずっと昔に、彼に託していたのだ」

元少年は泣きながらも、ついには刑を成し遂げた。そしてもと少年は、周りの人たちに昔あったことを話すのだった。




鏡甖

王文獻曾令郭璞筮己一年吉凶。璞曰:「當有小不吉利。可取廣州二大甖,盛水,置牀張二角,名曰『鏡好』,以厭之。至某時,撤甖去水。如此,其災可消。」至日,忘之,尋失銅鏡,不知所在。後撤去水,乃見所失鏡在於甖中。甖口數寸,鏡大尺餘。王公復令璞筮鏡甖之意。璞云:「撤甖違期,故致此妖。邪魅所為,無他故也。」使燒車轄,而鏡立出。


郭璞預屬

中興初,郭璞每自為卦,知其凶終。嘗行經建康柵塘,逢一趨步少年,甚寒;便牽住,脫絲布袍與之。其人辭不受。璞曰:「但取,後自當知。」其人受而去。及當死,果此人行刑。旁人皆為求屬,璞曰:「我托之久矣。」此人為之歔欷哽咽。行刑既畢,此人乃說。


(捜神後記2-6)




郭璞無双(しぬけど)。しかし「使燒車轄,而鏡立出。」とか「旁人皆為求屬」とかが微妙にわかりません。なんじゃろね。あと「此人乃說」も微妙。なんとなくの雰囲気で訳してるけどどうなんだろうなー。

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