地球規模

蒼井 狐

第1話

 私たちは芝生の上に寝転がって、空の広さに溺れている。

「ねぇ、空見てたらさ、自分が空に落ちちゃうような気がしない?」

「んー、そうかな。わかんないや。わたしは芝生にくっついてるから」


 友達とショッピングをした帰り道。家の最寄りの駅まで電車に乗っていると、その窓に映る景色はグレーから鮮やかなグリーンへと色づく。

 二人で電車を降りて、紙袋を揺らし、舗装の古くなった道を行く。

 私は友だちの話に相槌を打ちながら、道の脇に生い茂る雑草を見ていた。

「ちょっとー私の話ちゃんと聴いてるのー?」

 あっ、と思った。聞いていたが、聴いてはいなかった。

「ごめん、他のことに気取られててあんまり聴いてなかったかも……」

「だよねー、ずっと雑草の方見てたよね。なんか面白いもの落ちてたりした?」

「いや、ただ雑草眺めてたら疑問に思うことがあったからそれについて考え事してた」

「えー、なにそれ。聴かせてよ」

「そこら辺に生えてる雑草ってさ、葉先は茶色になって枯れてるのに茎とかはまだ青々としてるのとかあるじゃん。あぁいうのって草からしたらどういう感覚なんだろうって。痛いのかな?」

「そんなこと考えてたの? 雑草見て私そんなこと考えられないやー。草に感情移入しないもん」


 夏の夕方。晩御飯の餃子を作り始めたは良いものの、餃子のタレがないことに気づいた母は、私にタレを買ってきてーと頼んだ。

 はーい、と返事をして近くのスーパーへ餃子のタレを買いに行く。

 これでいいや、と小さな瓶に入ったタレを手に取ると、

「奇遇だね! 私もちょうど餃子のタレ買いに来てたんだー」

 と友達が声をかけてきた。二人でお会計を済ませ、スーパーを出た。

 タレと一緒に買ったアイスを片手に、近くの公園でブランコに座り、駄弁る。

 私たちのお喋りが気になるのか、正面の時計の上で二匹のカラスがカアカアと鳴いている。

「カラスってさ、私たちからするとただカアカアって鳴いてるだけにしか思えないけど多分なんか喋ってるんだよね」

「まぁ、多分?」

「じゃあさ、カラスも人間がなんかぺちゃくちゃ喋ってるのを聞いたらさ、なんていってるのかはわからないけど、多分ちゃんと意思の伝達してんだろうなぁとか思ってんのかな」

「頭良いって聞くしそうなんじゃない」

「カラスたちも今、私たちと同じような会話してるかもね」

「かもねー」

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